「醜さ」に耐えた日々
『これは副作用だから仕方ない』
念仏のように唱えてたときがある
「双極性障害」と診断され
クスリ漬けの日々となったとき
ほぼ寝たきりの状態が続いた
食べるものはお菓子
ご飯を作るだけの集中力も
レトルト物を温めたりレンジに入れたりすることもできなかったから
できるだけ動かなくてすむように
身の回りに必要な物を置いていた
トイレの回数も
お風呂の回数も
動くことすべての回数が減った
鏡を見る回数も減っていた
あるときトイレから出て、手を洗ったとき
ふと鏡を見た
きっとこれまでも当たり前に目にはしていただろう光景だけれどもその映像は私の脳にまで運ばれてはいなかったのだろう
この時初めて気づいたのだ
太っている「私」に
愕然とした
そこに写る「私」は、「私」ではなかった
別人という言葉の意味を瞬時に理解できるくらいに別人だった
顔はひと回りもふた回りも大きくなって
首から肩にかけてのライン
肩から腕にかけてのライン
どこもかしこも丸い
肩がどこかもわからない
よく見ると腕も太い
もちろん脚も太くなって
ウエストは臨月のときと変わらないほどに
体重23kg増
いや、本当は気づいていたのかもしれない
パジャマ代わりにしていた部屋着は
レディースものからメンズものへ変わっていたし
靴もタイトなものからゆったりしたタイプの物へと変わっていた
それを当然のように受け入れてしまっていたのだ
『今は動けないから仕方ない』
『飲んでる薬の副作用だから仕方ない』
何もかもを『仕方ない』と自分に言い聞かせ
太っていくことを許してしまっていたのだろう
気づいたところで痩せていけるものではなく
私はこの太った躰と生きていくしかなかった
食べることを減らしても
少しずつ動くことをしていっても
私にできることを頑張っても
痩せることはできなかった
外に出られるようになっても着られる服ではオシャレできるわけもなく
気持ちが沈んでしまうので、余計に外に出たくなかった
股の部分が擦れて服が破けることも
無理やりベルトループを引っ張りあげて千切れることも
シャツを着て腕が回りにくいことも
服を着て立った姿が妊婦のときよりも醜く見えることも
すべてが初めての経験だった
受け止めるしかなかった「屈辱感」
直視することができなかった「醜さ」
もう嫌だ
嫌なことだらけだ
太っている「自分」ということも
生きていることの辛さに組み込まれた
薬を飲むのが怖い
これを飲んだらまた太る
薬を飲まなくすることは怖い
飲まなかったらまた寝たきりになる
頭の中の葛藤はいつも私を苦しめる
自分を「醜い」と認識し続けた日々は
本当に辛くて
『痩せたい』
と
『仕方ない』
との思いの繰り返しの中
徐々に『痩せたい』思いが上回ってきた
少しずつ
少しずつ
痩せては太り
太っては痩せを繰り返し
私はいま、マイナス20kgの減量に成功した
その重さすべてが健康的な痩せ方であったわけではなかったが
それでも痩せられたことがすごく嬉しい
振り返ってみて
「醜い」と認識していた「私」は本当に醜かったのだろうかと疑問に思う
私はただひたすらに「病気」に耐えていただけなのだ
治りたいという思いがあって耐えていたのだ
だからこそ薬を飲んだし
飲むことによってのたくさんの副作用にも耐えた
やらなくてはいけないことができない惨めさにも耐えた
動けない辛さも受け入れた
辛くて苦しくて、涙が流れなかった日があったのか思い出せないくらいな日々を耐えた
その結果が「太った自分」というだけで
決して甘やかした結果ではなかったのだ
「太った私」
それは、病気に耐えていた
「頑張っていた自分」
だったのではないだろうか
そう思うことで
そう思えることで
私の心は少しだけ軽くなれる
追記:
リバウンドしました
ここからまた3kg増……
これは確実に甘やかしです
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イラストお借りしました♡︎
ありがとうございます(ㅅ´ ˘ `)☆*。
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