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神さまを待っている

#読書感想文 表紙コメントに惹かれた。

文房具メーカー勤務。派遣社員。まじめ。彼氏無し。
26歳 水越愛の身に起きたこと。

26歳、同い年だ。と思った。
各章のタイトルが値段ともの。気になる。

そう思っていたら、社会問題の話だった。

五百円の鯵フライ定食。百円のコッペパン。一万五千円の彼女たち。0円の野菜スープ。三千円のメロンパフェ。二万円のわたし。

ここから貴方なら何を読み取りますか?

まず、ランチにいくらかけますか?
わたしはお弁当を持っていきます。
水越愛もお弁当。たまに食べる鯵フライ定食 500円。
五百円の鯵フライ定食が安いと思うか、高いと思うか。主人公にとってはこのランチが贅沢なのです。そして、そこから百円のコッペパンを経て、水越愛はホームレスになります。

ホームレスという言葉の軽さに今更ながら驚く。家がない。なのにホームレスなんて、軽い呼び方すぎやしないだろうかと。水越愛が住むのは漫画喫茶だけど、そこは家ではなくて、雨を凌ぐための場所でしかない。ホーム、レス。
物価の高騰で、ものが高いなと思うようになったし、社会人になってからの数年で社員食堂も値上げしたし、こないだお昼に行ったキッチンカー1000円もしてびっくりしたし、何もかも高い。それなのに、ライブには1万円出せる自分が怖い。

身体を売ることになり2万円貰っても、妊娠が怖くてアフターピルを貰ったら半分はなくなるでしょう。残酷な世の中だ。
お茶を飲むと言って身体を売る子の中には、小説でも出てくるようにアイドルや推しのためにお金を稼ぐためにやっている人もいて。
実際、存在するのか分からないけれどSNSの中にも、身近な噂の中にも夜職のことは出てくる。貧困じゃなくても、お金が足りなければ足を踏み入れる人はいるのだろう。

とはいえ、水越愛は、貧困の中にある。
お金を稼がないといけない、でも、最低限のモラルは守りたい気持ちがひしひしと伝わる。身体は売りたくないし、お喋りだけしていきたい。でも、ただの日雇いには戻れない。金銭感覚のずれ。矛盾の中にありながら、どうやって生きていくのか。そして、うまく生活を営むことが出来ない人達の脆さや惨さがどこまでもリアルに迫ってくるようです。裏側なんかじゃなくてすぐ近くにあるんだろうなと思わされる。

下記に気になったところを置いておきます。

「今は親切にしてくれても、いつかいなくなるんだよね?」
「・・・・・・えっと」
「毎日、うちに来て、ルキアとキララの面倒を見て、ごはん作って、掃除してくれるわけじゃないでしょ?」「それは、そうですね」
しばらくの間、ここに泊まらせてもらえるならば、そうしたい。でも、しばらくの間り、ずっとではない。一人で暮らせるお金が貯まって、就職が決まれば、出ていく。
こうやって、ルキアに料理や掃除を教えたりしないでもらいたかったなあ。親切にしてくれる人がいるって思わせて、絶望させたくないの

164ページ

一生懸命、就職活動しても、派遣で働いても駄目だったのだから、自分を汚いと感じながら、身体を売るしかないのだろうか。必死になって、ワリキリをすれば、いつか汚いと感じなくなるのだろうか。一日に一人を相手にして、いちごでももらえれば、アパートを借りるのに必要な額ぐらいは、すぐに貯められる。それだけ貯まったら、やめればいい。そう思うけれど、そんなに簡単なことではない。ほんの数時間で、いちごをもらうことに慣れてしまったら、他の仕事で稼ぐことがバカバカしくなる。
金銭感覚というのは、一度狂ったら、元に戻すのは難しい。
子供の頃は、母からお小遣いに百円もらうだけでも、すごく嬉しかった。千円貯めると、お札と交換してもらえた。その千円で、何を買うか考えると、ワクワクした。
今だって、お金を大切だと思っているけれど、あの頃と同じようには考えられない。

253ページ

けれど、人は生まれ変わることなんてできない。
過去を引きずりながら、生きていく。
ホームレスだった頃に会った人たちの顔を思い出す。
そして、わたしもまだ、ホームレスだ。

282ページ

善意が悪意になる。ゴースト&レディのフローは、偽善だって善意だということを言ったし、偽りの善意でも相手に幸せをもたらせばいいのかもしれない。だけど、中途半端な善意は夢を見させるだけの悪意にもなりうる。
受け取り側の問題なのはわかっていても、押し付けるのは良くないし、残酷であることを理解しなければならない。最初から期待しなければ、悲しむことなんてないのだから。

貧困も自分の身に迫っている気がしてならない。そんなことを思った読書体験でした。

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