白鳥の傷には品格がない(第3回
ここでこのスワンの生涯に触れておこう。
スワンは茨城県北部の農村に生まれた。生まれつき指が四本しかなかった。だからずっと家の中で母と生活していた。スワンには善意的な母しかいなかったのである。だから全てを善だと思った。蕎麦を出せば至極美味しそうに食べ、風呂に入れてやれば母を丹念に洗い返した。そして最後に必ず、
「ありがとう」
と云って微笑む。スワンの本名は吉高正宇治である。
「武雄ちゃん、うちの子を少しずつ外の世界に慣れさせてあげてくれる?」
武雄は云った。
「かしこまりまし