Helrunar - Blutmond 解釈、和訳
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Körkemeier, S. and Dreckmann, M. Lyrics to „Blutmond. “ Performed by Helrunar, Lupus Lounge, 2018. Metal Kingdom, https://www.metalkingdom.net/lyrics-song/helrunar-blutmond-190233.
ドイツ産ペイガン・メロディックブラックメタルHELRUNARの5th "Vanitas Vanitatvm"より。
曲タイトル„Blutmond“とは、皆既月食の際に見られる赤黒い満月"Blood Moon"のことです。
歌詞の基盤となっているのは17世紀ドイツ最大の詩人グリューフィウス(Andreas Gryphius, 1616-1664)とのこと(参照: metal.de)。バロック期の時代精神「ヴァニタス(Vanitas: 空虚、虚無)」を反映した作風で知られ、主に三十年戦争の惨禍を背景とした厭世的な人生観を詩のテーマとしていた詩人・劇作家。
そうしたバロック詩の影響下にあるこの曲の歌詞も、ほぼ全編に渡って非常に詩的かつ抽象的なドイツ語で、現代では一般的ではない詩語・古語も多く使われています。
が、最終行のみ突如英語になるクロスオーバー感が矢鱈キマってて秀逸です。
楽曲的にも、スラッシーな刻み~オーソドックスなトレモロリフ~アコースティックソロと、バラエティーに富んだ曲展開で高品質なメロブラを聴かせてくれます。
兆しは日每に增しゆき
今宵、紅き玉桂の夢を見たり
三本の指、地に沈みて
降下 - 血の月蝕まで九日
※die Mondin: 詩語。„der Mond“(月)のこと。
※landunter: 詩語。„überschwemmt“(浸水して、水没して)がたぶん近しい。
※Deszension: 詩語。„Abstieg“(下りること)の意。
額に觸れるは隱れし物
何ぞや以前より冷やかなる
其の視線、荒き壁を探り
解離 - 紅血月喰まで六日
馴染み深き物は默して崩れ去り
食物は口中に塵となった
※zerschwiegen: 詩語。„schweigen“(黙る)に、非分離前綴り„zer-“をくっ付けた造語。„zer-“は「破壊する」という意味合いを基礎動詞に付け加えます。直訳するならば、「崩壊するほど沈黙した」。
既に六日の拷問
全宇宙は傷に埋め盡くされる
上、下に亦同じく、外、內に亦同じ
犧牲の豫感
※Firmament: 詩語。天空・蒼穹という意味。日常語では„Himmel“が相当する。
救濟の希望
抱きつつ其の希望既に悔ゆる
古き光、盡きし罪
沈思 - 月球溢血まであと三日
長き影が落ち
太陽は黑焔を吐き
闇夜に手を差し伸べる
消散 - 今宵 血塗れの月輪が差し昇る
※Disparision: 詩語。日常語ではたぶん„Zerfall“(崩壊)が近い。
墓の臭氣が地下牢を包み
闔の前には炬火
階段に影が差し、手が伸びる
唯死者のみが生贄の贖いを知る__
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