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オランダで日本語レッスンするはずが、何故かキックボクシング道場でサンドバッグ叩いていた話
ピーター・アーツ
セーム・シュルト
アーネスト・ホースト
レミー・ボンヤスキー
アリスター・オーフレイム
齢40から50歳くらいの男性で彼らの名前を聞いたことがない人間はいないだろう。
そう、1990年代中盤から2010年位にかけてK1が隆盛を極めた時代の歴代チャンピオンだ。
そしてお気づきだろうか。
ある共通点があることを。
その共通点とは。
言わずもがな、
全員がオランダ人ということだ。←いや知らないか普通は。
当時大学生だったやめ太郎は、夜な夜な友人宅に集まってはNBAやセリエAを観戦していた。
時はマイケルジョーダンやピッペン、アレン・アイバーソン更には欧州ではベッカムやジダン、そして中田英寿、小野伸二らが連日スポーツニュースを賑わせていた。
インターネットのストリーミングやYOUTUBEなどが登場する何年も前の話だ。
K1も最高のエンターテインメントの一つだった。
食い入るようにTV画面に見入っていた。
当時の私のヒーローは侍のような謙虚さと強さを兼ね合わせたアーネスト・ホーストだった。
彼の卓越したパンチのスキルと鞭のようなキックに釘付けになったものだ。
よって、私はそれなりにK1や格闘技には熱を入れてきたタイプの人間だ。
なかなかな審美眼を持ち合わせていると言っても過言ではない。
だがしかし!!
だがしかし!!
それとこれとは話が別で。
まさか45歳になった今、自分がキックボクシングをすることになるとは思っていなかった。
「Why なぜに??」
今こそ矢沢永吉先生バリに叫びたい。
どうしてこうなった。
自分でも不思議でならない。
一旦話を整理しよう。
前回までの話はこうだった。
そう。
日本語を習いたいと言った生徒がキックボクシングジムのオーナーで、彼から永年無料でジム使いたい放題の権利を得たのだった。
そして今日は彼の日本語レッスンの日だったのだが、それに合わせて彼の完全プライベートキックボクシングレッスンをプレゼントされたのだった。
whatsupアプリで「日本語レッスンの前にキックボクシング教えるよ」と昨夜も連絡が入っていた。
ここまできたら逃げられない。
しかもよく見てみたら日本語レッスンの前にキックボクシングレッスンをすると書いてあるではないか。汗でベタベタになるではないか。
ふむふむ、私は中学校まではサッカーを。大学ではテニスサークルと商法の研究を。社会人になってからたまにフットサルや登山を。
でもサッカーボール蹴ったのも山に登ったのもかれこれ7年前くらいが最後。
それからは娘が生まれた後の育休中にランニングをしたり、最近では保育園の送迎に毎日自転車に乗っているくらいで運動はしていない。
むしろキッチンドランカーとしてのレベルは益々上がっていて、中年故の腹回りの浮き輪や内臓脂肪が気になっているくらいだ。
そんな中、まさか予期せぬ形でのキックボクシング。。。
午後2時に道場に着くやいなや。
右手の拳には簡易バンテージのようなものが巻かれて、更にはグローブに包まれていた。
左手も同様だ。
なされるがままだ。
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そしてそこから地獄の1時間が始まった。
最初の15分は割と余裕だった。
所謂フットワークの練習だ。
うまくはできないけど、重心をコントロールしながら前後左右に移動する。ただしこの間も両手は顔面の高さに上げてガードポジションを保たないといけない。
この15分ですらほぼ中腰のため、着ていたTシャツは汗で滲んでいた。
心地良い汗だ。
「今日は初回だし、入門体験だからこんなところで終了かな」
なんて思っていた。
でも、
体重移動の後はパンチの練習が始まった。
「え??まだやるん??」
生まれて初めてサンドバッグと対峙することとなった。
やめ太郎は右利きだから左のジャブと右のクロスを徹底的に反復練習。
左右左右、トータル100回。を3セット。
本日のオランダ北部フローニンゲンの最低気温は2度、最高気温は7度。とあるけどiphoneの体感気温は3度とある。
北海道やジュネーブに住んでいたやめ太郎ですら思わず手をポケットに入れたくなるほどの寒さだ。
それでも汗が吹き出てくる。
足元には額から落ちた汗がいくつもの雫となり水玉模様を描いている。
次にジャブとクロスを左右10回やってから腹筋を10回やってを10回リピート。つまりパンチ100回と腹筋100回。←もう腕上がらない。
そこからさらに腹筋100回。
そして下を向きながらのプランク、右脇のプランク、左脇のプランク各30秒。
そして更にもう一度左右ジャブ・クロス10回からのプランク姿勢から起き上がってのジャブ、クロスのリピートを10セット。
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なかなかエグかった。
終了があと10分、いや2分遅かったら吐いてた。もしくは気絶していた。
仰ぐように時計を見た。
午後3時だった。
久しぶりに肩で息をしている。
そして数年ぶりに額から吹き出した汗が両目に入ってしぱしぱしている。
いい汗をかいた。
いや。
なんか違う。
そんな爽やかなものではない。
生命を削ったような疲労感。
日頃の不摂生の賜物で汗もきれいじゃない。
それにそもそも日本語を教えるはずがいつの間にかキックボクシング習ってるじゃないか。
以前の記事で書いた通り、やめ太郎は特別待遇で全て無料。
とはいえ。何故にやめ太郎がキックボクシングを??
そして、これを自ら志願して入門した生徒はいくら支払うかというと。。。
なんと。。。。
1時間あたり。。。
65ユーロ(1万円強)。
日本で言えば弁護士の相談料とほぼ同等レベルかそれ以上の金額。
それでも彼(日本語教室の生徒)のところには多くの生徒がプライベートレッスンやグループレッスンを求めて押し寄せてくる。
虫の息の私はその後の日本語レッスン(1時間)をなんとかやり過ごして帰宅した。
おっさんになると筋肉痛は2日後に来るとヒトは言う。
そんな説がまことしやかに語り継がれているが、それは嘘だ。
科学的にもエビデンスはないらしい。
唯一ある根拠としては「大人になると手加減することを覚えるから、どんなハードなトレーニングをしたとしてもなかなか全力を出し切らずに終わってしまい、結果として筋肉痛は数日後にくる」ということのようだ。
そして現在夜の8時。
すでに身体中がバッキバキだ。
そう、無理をすれば筋肉痛はしっかりと当日中にくるのだ!!
腕・・・上がらない
腰・・・左右に曲がらない
太もも・・・油断すると痙攣しそう
ふくらはぎ・・・油断すると痙攣してとれちゃいそう
これほどの疲労は本当にいつぶりだろうか。
こんなに追い込んだことはもしかしたら社会人になってからは入社7年目にあった皇居マラソン大会以来かもしれない。
あとは燧ケ岳登山とか妙高登山とか1日12時間くらい歩いたか。それでも登山はマイペースで自ら差配可能だ。
今後も日本語のレッスンは継続的に予約を入れてもらっている。
毎週金曜日の午後1時。
そしてその前後のいずれかに1時間のキックボクシングトレーニング。
「Why なぜに??」
「Why なぜに??」
「Why なぜに??」
そんなアリよさらばのリリックがリピートする秋の夜長の備忘録。
どうすりゃいいんですか矢沢先生!!
どうすりゃいいんですかアーネスト・ホースト!!
あー、お仕事したい。
あー、ビール飲みたい。