介護療養型医療施設 2日目
初日は口腔ケアの大切さを再認識しました。
口腔ケアだけではなく時間で経管栄養接続や終了後の回収を行いました。
経管栄養は受け持った利用者さん達を担当するのではなく、看護師全員で居室を端から巡回して接続していきます。
受け持ち制とすると受け持ち担当者の負担が大きくなるため全員でやるようです。
朝の経管栄養は夜勤明け者が行いますが、昼と夕は日勤者が行います。
担当制にすると忙しい日勤帯に1人で20人の栄養を流さなければならない人がでてくるため致死レベルになるのがわかります。
協力って大切ですね。
2日目
さて、2日目も先輩と共に行動します。
初日は書類の確認やオリエンテーションで途中から日勤者と合流しましたが、本日は朝からいるので夜勤者から担当利用者の申し送りを聴取し、検温からスタート。
担当制は介護施設では珍しいのですが、担当制にしないと誰が誰を対応するのか責任の所在がハッキリしなくなるからと考えます。
大部屋は4人の利用者さんがいるため先輩と一緒に回りながら半々で検温をすることに。
体温、脈、血圧、酸素飽和度を測り、胸と腹の音を聴きます。
酸素投与中の利用者さんにはマスクやチューブの先端がずれていないか、流量はあっているのか等も確認します。
また、お腹が張っていないか、手足は浮腫んでいないか、痰は溜まっていないかを観察していきます。
他にも、目やにが付いていたら濡らしたガーゼで拭き取り、点眼や口腔ケア、軟膏処置、胃瘻挿入部のチェックも行います。
必要に応じて吸引をし、点滴の処方が出ている人には点滴を行います。
やること多くてめまいが・・・。
口腔ケアは口を開けてくれる人なら良いのですが、なかなか開けてくれなかったり、歯ブラシを噛んでしまうなど難しい事例もあります。
検温、状態観察、口腔ケアなどを利用者さん1人に5分かかったとすると、10人対応するのに50分。6分以上なら1時間以上かかります。
これを部屋を回りながらやっているとすぐに10時過ぎになってしまいます。
ここでは10時半から昼分の経管栄養を流すため、すぐに流せるように10時には利用者さんを右向きにしておきます。
経管栄養には参加できるようにするため後回しにできる口腔ケアは午後に行うこともあるのだとか。
経管栄養は滴下タイプと注入タイプの2種類を使用しています。
滴下タイプは点滴のようにぶら下げて管の中をポタポタと栄養剤を滴下させて流していきます。
注入タイプは太い注射器のようなもので栄養剤を吸い上げ、管に接続して一気に押し流しながら注入します。
ここでは鼻から胃に管を通す経鼻経管栄養と胃に直接管を入れる胃瘻( いろう )がいます。
経鼻経管栄養者には滴下タイプを使用していますが、胃瘻者にはその人の状態により使い分けています。
滴下は1時間くらいかかるため、管をいじる危険がある人には注入タイプを選択します。
全員で端の部屋から経管栄養剤を滴下したり注入していきますが、入所者60名のうち30名が経管栄養のため職員4〜5人でやってもすぐには終わりません。
ただ管に接続して滴下するだけなら早いのですが、多くの利用者さんが痰や唾液を上手に吐き出すことができないため、口の中に溜まっている分泌物を吸引しなければなりません。
栄養剤を滴下中や滴下後では吸引チューブの刺激により嘔吐する危険があるため事前に行います。
痰が多い人では吸引にも時間がかかるため、余計に早く終わらせることは困難となるのです。
この人も吸引が必要なのか・・・
痰が口の中に溜まっているから吸引しなければ・・・
『 痰が溜まっていないように見えたり聞こえたりしてもけっこう溜まっている人もいるから気をつけてね 』とアドバイスを頂き、「 それは誰ですか!? 」と名前を教わります。
早く終わらせたいと思いながらも吸引が必要な人が10人くらいいるため更にスピードダウンします。
みんなでやっても40分くらいかかります。
これで終わりかなと思いきや、鼻管( 経鼻経管栄養チューブ )を引き抜いてしまうやんちゃな利用者さんがいるため、昼食分を注入するためにチューブを挿入しなければなりません。
鼻から胃に管が入っているとずっと喉に何かが引っかかっている感じがするため不快であることは理解できます。
しかし、毎回毎回管を入れることは職員も苦痛となり負担が大きくなります。
すんなりと挿入できれば良いのですがそうはいかないことが多く、時間を取られることがあります。
口から食べられないから鼻管と考える延命行為はどうなのでしょうか。
職員の負担を考えない理事長はどうなのでしょうか。
そんな疑問を抱えつつ、鼻管挿入のため利用者さんと格闘します。
「 ご飯を入れるため管を入れますよ 」
理解力があるのかは不明ですが、とりあえず声掛けはします。
鼻の中に管を入れていき、20cmくらいのところで行き止まりになるため
「 ごくんと飲み込んで下さい 」
管を入れて「 飲み込んで下さい 」を繰り返していきます。
管に5cm間隔で長さがわかるように表示されているため、60cmくらい挿入していきます。
スムーズに入れられると良いのですが、チューブが口の中で丸まってしまったり、上手に飲み込めなかったりすると気管の方に行ってしまうためやり直しとなります。
チューブがきちんと挿入できたかどうかは聴診器を胃のあたりにセットし、太い注射器で空気を入れて音を聴きます。
ゴボッと空気が出てくる音がすれば成功となります。
経鼻経管栄養は肺炎のリスクが高いため老健ではお断りすることが多いので、鼻管挿入は久しぶりだなと思いながらも手技は覚えていました。
自分で音を確認し、大丈夫と思いながらも先輩に再度確認を依頼します。
レントゲンを撮ってきちんと胃に入っているか確認できれば間違いはありませんが、病院のようにレントゲン室がない場合は職員2人で確認をします。
先輩から『 大丈夫 』とお墨付きを頂き、テープでチューブを固定したら栄養剤を一気に注入していきます。
これは、滴下中に管を抜かれて肺炎のリスクが増大することを回避するためと終了時間が遅くならないようにするためです。
昼食が遅くなると夕食も遅くなり、忙しい夜勤者に迷惑がかかるために日勤帯で終わらせることを目的としています。
しかし、滴下中に管を抜かれなくても経鼻経管栄養は誤嚥性肺炎のリスクが高く、更にその管を抜いたり挿したりしている方が利用者さんへの負担は大きいと考えられます。
それでも、利用者さんを抑制することはしないのですから職員泣かせでもあります。
利用者さんのためと思ってやっていることでも視点を変えたら利用者さんに不利益になっていることがあるようです。
抑制は全て悪ではないのですが、古い人は分からないようですね。