『』

『夕東京』


貴方がいるから 東京の街が好き
貴方が息を吸う 東京という街が
狭くて広い波 揺蕩って傷ついて
どこかで出逢えること ずっと望んでいる

貴方がいるから 東京の街が嫌い
本当は喧騒のない日々でいたい
苦しくなっても閉じ込められていたい
馬鹿みたいでしょう 馬鹿なんだよ

この世界でたった二人じゃないのならちゃんと
人混みの中から私を見つけて

言葉にできるくらいなら人生なんて要らない
夕暮れ前の光の一筋にも泣けてしまう瞬間があった
貴方がいなくても私救われたりするのよ
それでもずっと貴方だけがよかったの


貴方がいないなら どこにいても同じ
呼吸ができたとて 何の意味もない
貴方がいないなら そんなことばかり
考えてしまうこと 私だって嫌よ

忘れてしまいたいくらい貴方が好き
そしていつか本当に忘れてしまうことが悲しい

享受するばかりの贅沢なんてつまらない
貴方にも寂しい夜があることがどれだけ愛おしいか
この先もずっと伝わることはないのでしょう
それでもきっと貴方を信じてゆく


貴方がいるから 東京の街が好き
貴方がいるから 東京の街が嫌い
浅い呼吸に傷ついて日は昇る
すれ違ってしまった瞬間だけ集めて
間違ってしまおう


言葉にできるくらいなら人生なんて要らない
夕暮れ前の光の一筋にも泣けてしまう瞬間があった
貴方がいなくても私救われたりするのよ
それでもずっと貴方だけがよかったの

貴方がいなくても私救われたりするのよ
それでもずっと貴方だけがよかったの






東京に来てもうすぐ一年が経つ。
この詩はちょうど一年前に書いたもので、上京してきて泣いてばかりだった頃のものだ。だからこそ、前を向くしかない半ばヤケになったような強さと美しさが、共存しているような気がする。

「間違ってしまおう」という部分は最初「恋をしよう」だった。つまり間違うとはそのことで、更に言えば「一緒に」間違ってしまおうと書くかも悩んだ。けれど、貴方を道連れにするのは違うから。東京に浮かぶ独りよがり。それでもこれは、恋だったから。

恋なんてずっと、独りよがりだったんだよ。



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