君と僕は静かにすれ違う。
おはよう。
学校に行けば1人か2人、運がいいと3人くらいはそう言える人がいる。
運がよければって時点で友達は怪しいから
たぶん友達はこの300人の中で1人か2人なんだろう。
毎朝この光景を繰り返して
つまらないなんて言うほどじゃないくらいの穏やかな日常を眺める。
自分と1人か2人くらいの友達。合わせて3人。
3人除けば、残りの297人、つまり残り99%は大して仲良くない人って事。
その中を生きているって考えると
周りが敵に見えて仕方がないだろうし、
実際仕方がなかった。
でも毎日眺めてると分かることがある。
実は、クラスで人気なあの子も不思議な空気を纏う秀才君も
みんな近しい友達は2人か3人程度
まあ、僕より多いけど
でも比べてそんなに多くもない。
僕は困ったときに助け合える人を友達って呼んでるから
友達が少なく映るのであって
断じて友達が少ないわけではないと思う。
これは願望ってことはわかってる。
でも、そうやって考えると
この日常は実はかなり空白があって
友達が増えるチャンスはいくらでもあるように思う。
少なくとも敵にはならないんだと思う。
もし君も同じことを考えてこの教室を見ているなら
たぶんわかってくれるはず。
なんて妄想とは言えない程度の想像を膨らませながら
君を見ている。教室の一番後ろのドアの隣の席。
そう僕は恋をしている。
僕と同じように教室も眺めがちなあの子に。
教室を眺めているから
きっとお互いが目に映ってる。
そしてきっと同じことを考えて教室を見ている。
だって教室を見ているときの顔があまりにも穏やかだから。
同じこと考えてないかなって想像を膨らませて
同じように想ってないかなって妄想を膨らませて
なんならここまで同じことだったら運命だなとかまで思って
でも今日もおはようは言っていない。
今日も僕と君は
赤になれば、青になる隣り合う交差点の歩行者用信号機のように
教室の隅で一瞬すれ違う。
然有琉 湊(さあり みなと)