自傷がバレた日①
9/24
9/24
初めて周りの人に自傷がバレた日
相手は養護の先生(以下H先生)
その日は1時間目だけ保健室で過ごしてから行くことにした
いつも通り、1時間目が終わる頃に声が掛けられた
「そろそろ1時間目終わるけどどうする?」
そして
「そんなんしてたらかぶれちゃうよ」
そう言った
心臓が痛いほど跳ね上がった
鼓動がうるさい
私は傷に軟膏、その上にラップを巻いていた(ネットで見たから)
まだ暑くて袖をまくっていた。だからラップが見えたんだと思う(今考えると迂闊すぎる)
私はもしかしたら心のどこかでH先生にならバレてもいいと思っていたんだろうか
本当にバレたくなかったらきっと袖をまくったりなんかしなかったはずだ(今までずっとそうしてた)
自分の口から言えないから言って傷つきたくないからもしかしたらと可能性にかけたのだ
ただまさか触れられると気付かれると思ってなかった私はひどく驚いた顔をしていたんだろう
H先生は「水曜日そこに絆創膏貼ってたよね?調査の時に気付いちゃった」と言った
水曜日
2日前の水曜日、私のクラスは何か健康調査のようなもののモデルクラスになっていた
その調査のお手伝いをしていたのがH先生だった
まるまる1時間行われた調査
私たちは授業を受けるだけで特に変わったことはしていない
私は1番後ろの角の席でぼんやりと授業を聞いていた
袖を捲っても見えないぐらい位置に傷はあった
ただその時は血が制服につきそうだったから意図的に下げていた
1番後ろの角だから周りに見られることはないし隣の子は寝るしこの時の教科担当の先生は教卓から動かないので完全に油断していた
H先生もずっといたわけではなかった
調査の作業は私の席とは離れたところで行われていた
この調査の前後でH先生とは話もしていない
9/24(2)
驚いて何も言えない私にH先生は「消毒して包帯巻いたげるし見してみ?」と続けた
私は更に驚いた
怒られなかったから 非難されなかったから
それでも私は首を横に振った
怖かった。やっぱり怖かった
傷を見てから怒るつもりなだけかもしれない
問い詰められるのかもしれない
親や担任に連絡されるのかもしれない
H先生は「そんな染みたりせんから!」「膿んじゃうよ?」という
私は首を横に振る
更に続けて「自分で消毒したん?」
これにも首を横に振るしかない
H先生「おうちじゃ消毒とかしにくいやろ?」「そもそも家に消毒液とかないんちゃう?」
私はようやく頷いた
H先生は「ほな取ってくるから!」と言って私のいる部屋を出て行った
そして「入るね」「腕出して」
(H先生の扉が開けっ放しでも絶対にノックしてから入ってくるところ細かいけど私は好き)
私はそれを拒んだ。腕を引っ込めた
怒られる?嗤われる?こんな色んな意味で馬鹿らしい傷に手当てなんて…
いろんな思いが一瞬で駆け巡る
ここまで来て怖気付くなんてとんだ臆病者である
ほら、ほら、と手を伸ばすH先生
私は恐る恐る腕を伸ばした
手当て
私はラップを外した
開放された傷が恥ずかしい
H先生は「つかんようにラップ巻いてたんやな」と言って傷を消毒しながら「ほら、全然染みひんやろ?」と笑った
「塗ってるんはワセリン?」「水曜日よりは塞がってるね」
そんな言葉は自分で作った傷であるということを一瞬忘れてしまいそうになった
普通の怪我の手当てと同じだった
これが自分でやったものだと思われてないような気さえした
でも「家じゃ消毒しにくいやろ」
そして「なんかしんどいことあったん?」「切ったらちょっとは楽になった??」
H先生はそう続けた
あぁ、ちゃん自傷とバレている笑
自分で傷つけていることが恥ずかしくて心の中で笑ったのを覚えている
なんでか、それが全くわからないわけではなかったけどどうにも言語化できなくて、1度蓋をしたのに話すことなどしたくもなくて何も答えられなかった
H先生は答える気配のない私に「話すの苦手って言ってたもんね」と言った
謎の抵抗で包帯は嫌がったら大きな絆創膏を貼ってくれた
そして日焼けすると跡残っちゃうからねと袖を下ろしてくれた
処置が終わってH先生は「またやっちゃったらこうやって消毒だけでもしに来てくれたらいいからね」
そう言って送り出してくれた
夜
なんで怒らなかったの?
なんで報告しなかったの?
医学や心理学では正しいはずの対応に戸惑ってしまう自分が憎い
それでも今日の対応に安堵している自分はどこまでもめんどくさい人間だと思いながらもいつもより温かい世界で私は眠りについた