話題のドラマからポルトガルとスペイン、日本のこと
書きかけの記事が仕上がらない。脳内の整理が追いついていないようである。というより能力的な問題が大きいのかもしれない、とちょっとばかり落ち込みつつ、つい最近視聴をはじめたドラマに絡めてちょっとだけ書いてしまう。
Disney+で配信されている『SHOGUN 将軍』がすごい話題になっていて、おもしろいよとKさんに教えてもらったのでさっそく観た。17世紀初頭の日本を描いた小説を原作にもつ時代劇ドラマ(制作はアメリカ合衆国)で、物語のはじまりは1600年である。
フィクションだけれど史実がとりいれてあって、この時代にポルトガルとスペインがアジアでおこなう、貿易と布教と軍事的な意図とが絡んだ活動を日本の権力争いのところどころに散りばめている。
映像がきれいで、緊張感があって、その時代のことを文字で読むのだけでは及ばない部分を視覚的に感じられるのが良い。
その、当時のイエズス会とポルトガル王国、そして他の修道会とスペイン王国の関係についてちょうどいい資料が手元にあったから、そのところを書いておこうとおもう。
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イエズス会は設立以前にポルトガル王からアフリカでの布教活動を依頼されて、ポルトガルがイエズス会の支援国となる(イエズス会の設立は1540年)。イエズス会はポルトガル商人の東アジア交易の拠点であったマカオに布教の拠点を据えた。支援国の交易拠点であるマカオを中心に、中国や日本などとの国交を成立させ、同時に布教事業をおこなうという図式になっている。
一方、スペイン系托鉢修道会のドミニコ会とフランシスコ会はスペイン王国に支援を受けており、フィリピンのマニラに拠点をおいた。マニラはもともと中国貿易の拠点としてスペイン人によって整備された町だった。
中国にスペイン領ラテン・アメリカからもたらされる銀を持ち込み、中国からは絹を購入してヨーロッパで販売するという貿易が1571年には成立していたという。
フィリピンにはスペイン人の進出とともにアウグスチノ会、フランシスコ会、ドミニコ会、イエズス会などが来島しており、そこから中国への入国を試みていた。
ポルトガル・マカオを拠点とするイエズス会と、フィリピン・マニラを経て中国で布教事業を進めるドミニコ会、フランシスコ会などの間に対立があったらしいものの、どちらもカトリックである。
ポルトガルとスペインで支配領域に関する取り決めがされていたことなどは、当時の日本人は知らなかった(私も知らなかった)。
『SHOGUN 将軍』では難破したオランダ船のイギリス人船乗りジョン・ブラックソーンがその支配領域のことを領主・吉井虎永に説明するシーンがある。プロテスタントの商人ブラックソーンは、イエズス会(カトリック)がマカオやマニラでどんなことをやっているのかを暴いて、自国の優位を得ようとする。
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ちなみに、歴史では一時的に中国における独占布教体制を築いたイエズス会であったが、アジアにおける貿易競争においては次第にイギリス、オランダにおされ、ポルトガル国内においてイエズス会に対する敵対勢力が拡大するなどして両者の関係は徐々に悪化、18世紀にはポルトガル領内におけるイエズス会の解散命令がポルトガル王権より出され、イエズス会とポルトガル王国は決裂した。
ドラマ『SHOGUN 将軍』の配信は現在4話まで観た。いちおう歴史のことをアタマに入れたうえで、ドラマがどう展開していくのかをたのしみにしている。