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【私と本】明治に生きた蝶々さん
この物語に初めて触れたのは、地元新聞の連載だった。
新聞連載に気がついたのは物語の後半だったようにおもう。連載時の挿絵は小崎侃氏による版画で、文章と挿絵のどちらともたのしみにしていた。
『蝶々さん』は、プッチーニのオペラで有名な『蝶々夫人』を題材にした小説となる。これを最初に読んだときは長崎の歴史や文化に(今よりももっと)疎かったこともあって、暮らしている町についての興味を持つきっかけともなったとおもう。
物語のはじまりは明治7(1874)年で、その年に蝶々さんが生まれたとしている。古くは花街だった場所や、この頃のくんちや人々の暮らしの様子、かくれキリシタンや大浦天主堂の創建のあたりのことにも触れながら蝶々さんの短い一生が描かれている。
オペラ『蝶々夫人』のもととなったのはジョン・ルーサー・ロングという人物が書いた短編小説で、それは姉であるサラ・ジェーン・コレル夫人の日本滞在時の回想録ということになっている。コレル夫人の夫は鎮西学院の校長を務めていた宣教師だということである。
蝶々さんは、実在したのだろうか。
この小説を読んでいると、そういうことが気になってくる。でもおそらく、蝶々さんはこの時代の長崎に暮らす女性たちの運命の象徴ということになるんだろう。国際都市長崎の暗い一面。
上下巻に分かれる長編小説で、とてもよくできているし読み進めやすい。内容はかなしいものだけれど、明治の長崎の町を感じられる作品で、ときどき読みたくなるので紹介した。
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![片山 緑紗(かたやま つかさ)](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/88062411/profile_40986e63de0efc53c1d7972e9b044d47.png?width=600&crop=1:1,smart)