Margarideの郷土菓子
ちょっと前に、いま視聴しているドラマの記事を書きました。投稿直後のトップ画像にはお菓子の写真を使っていたんだけれど、すぐに考え直して帆船の絵を準備して変更しています。
お菓子の写真を使ったのは、それがポルトガル由来のものだったから、ポルトガルのことを書いたしまあいいか、という気もちからでした。
丸ぼうろといって、佐賀をはじめ九州各地でみられる郷土菓子です。原材料はカステラとそう変わらないものの、丸ぼうろは気楽な民菓で、かつ絵に描いても写真に撮っても実に地味という、そういうお菓子であります。
たまたま手元にあった今回の店の丸ぼうろは、包みにガレオン船らしき絵が描いてあったから、外装のまま写真に撮ってそれでよしと考えました。
ずいぶん前に書いたことがあるのだけれど、私は丸ぼうろがわりと好きです。
好き、といいつつもしょっちゅう買って食べたりしないんですけどね。
この記事に載せている丸ぼうろを買った店は、オランダ坂の下にある小さな菓子屋です。この店に入るのははじめてでした。数日ほうっておいて、記事のために手にとって、食べました。
食べるときに外装を取りはらって、この店の丸ぼうろにはざらめ糖がちりばめられていることにはじめて気づきました。さらに通常の丸ぼうろよりもしっとりとしています。いま調べたら、この商品には「かすてらぼうろ」の名がつけられています。ざらめ糖といい、やわらかな生地といい、カステラに寄せた丸ぼうろ、という意味なのかもしれない。
中世の宗教的内乱を含む各国情勢の歴史について興味をもち、調べたり書いたりしているのだけれど、今日はのんびりと、お菓子の歴史でも書いてみようとおもって、写真を撮りなおして書いています。
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南蛮菓子の代表ともいえるカステラの起源はPão de lóというポルトガル菓子と伝わります。16世紀に初めて日本にやってきたポルトガル人がpão de Castela(カステーリャのパンの意)のレシピを持ちこみ、いまのようなカステラが作られるようになったといいます。
パン・デ・ローは基本的な材料(卵、砂糖、小麦粉)と、シンプルなレシピでできているお菓子です。膨張剤は使われておらず、砂糖と卵を溶き、小麦粉を加えてオーブンで焼く。ポルトガルでも多くのバリエーションがあって、それぞれの家庭にオリジナル・レシピがある。そういう類のものだとおもいます。
ヨーロッパ各国でみられるスポンジケーキの基礎ともいえるものですね。フランスのGénoise生地などもパン・デ・ローが原形のようで、これはスポンジケーキの起源のひとつ、イタリアの都市・Genovaの料理人ジョヴァン・バティスタ・カボナ考案のレシピからとった名称のようです。Pâte à génoiseのことです。
さらに、ポルトガルのアベイロ地方にあるオバール市では伝統的なスポンジケーキ・Pão de Ló de Ovarに発展し、これはパン・デ・ローと材料はほとんど同じです。パン・デ・ローとの違いは中央がほぼ液体に近い状態で供される、という点です。
このお菓子の故郷、オバールとアベイロ地方ではクリスマスやイースターの祝い菓子なんだそう。
レシピの起源は定かでなく、通説としては修道女が考案したレシピであるとされているようです。18世紀以前に作られていいたことが、マヌエル・デ・オリベイラ・リリオという司祭の著作(”Os Passos”)に書かれているそうです。
オバール市の4つほどの家族(店?)でそれぞれのオリジナル・オバールケーキが作られていたといわれますが、そのうちのひと家系のみが現在、何世紀にもわたるレシピと伝統を失わないよう職人による家族生産を継続し、それを伝統的特産品パン・デ・ロー・デ・オバールとして製造し続けているそうです。
オバールケーキのレシピが修道女によるものかが明らかではなくとも、こういった焼き菓子はポルトガル全土でつくられる修道院のお菓子の一つだったといいます。
1834年にポルトガルの修道院解散の法令が出され、男性修道会に対する国家認可は打ち切られました。男性修道会の財産が国有化されたことで、500以上の修道院の土地と所有物が国有化されたあと、レシピの一部が信徒に伝えられたのだそう。
カステラより気安いお菓子、丸ぼうろはふつうカステラに比べて水分が少ないかさっとした焼き菓子です。
ポルトガル北西部に位置するFelgueirasという自治区にある、Margarideという町(かな)の伝統菓子に由来するといいます。
丸ぼうろの「ぼうろ」とは、ポルトガル語でケーキを意味するboloという言葉からきているみたいです。丸いかたちをしているから「丸」ぼうろなのか、それともマルガリデのマルなのか。
マルガリデのbolo(名菓)カバッカスはクッキータイプらしく、表面が渦巻きアイシングでコーティングされたもののようです。
丸ぼうろには、アイシングなどされません。
ざらめ糖が歯にあたるかな? とおもったけれど、ふわふわの生地とよくなじんでおいしい丸ぼうろでした。
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