母の味、我が家の雑煮は島原から
無知をさらすようでとても恥ずかしいのだけど、雑煮が地域で違うということをほとんど知らずに生きていた時期がある。
雑煮はお正月に食べるもの、まあ季節料理のひとつくらいにしか思っていなかった。我が家で食べていたものは、鶏のぶつ切りやしろ菜(白菜ではない)、大根・里芋・人参・ゴボウなどの野菜、シイタケや高野豆腐などの乾物に、切り昆布やこんにゃく、それからかまぼこなどが入ったすまし仕立て。そこに餅が入る。餅は焼かない。
このいろいろの具材が、汁を吸った餅にくっつくのが嫌いで、餅を入れずに食べていた。我が家の雑煮はずっとこんなふう。
中学生の時に、母親が店で従業員(友人に近い)のEちゃんとこういったものがあった。
母:「昨日姉ちゃんたちと墓参りに島原に行って、姫松屋で具雑煮ば
食べてきた~」
Eちゃん:「よかね~。今度一緒に食べに行こうで」
母:「行こう行こう♩」
母の父(つまり祖父)の生まれが島原なので、母は姉(私の伯母)たちと墓参りに行くことがあった。長崎市内から、今は新しい道ができ1時間半もあれば車で行けるが、当時はもう少し時間を要したし、中学生の私には遠い場所だった。店などをやっていると、そうそう家族で出かけることもできない。
いいなあ。お母さん なんかおいしいものを私の知らないところで食べてる。と、おもっていた。
ある日の会話で、母とEちゃんが連れ立って具雑煮を食べてきた話をしていた。横から割り込む。
私:「よかな~(いいなあ)。私も具雑煮食べてみたか」
母:「は?あんたいつも食べよるたい」
私:「え?」
母:「毎年正月に食べよるやかね。あれと一緒たい」
私:「えー!!」
母:「失礼かね~」(母の口ぐせ)
知らなかったのだ。雑煮に種類(?)があるなんて。島原と長崎でも違うというのをこの時初めて聞いた(父の方はぶりが入る)。地域ごとに数えきれないあることはその後に知った。
島原の老舗、姫松屋さんで出前をとった時の1枚。岡持で配達してくれた。
それからしばらくして、母の話にあった「姫松屋」に行って具雑煮を食べることができた。いつも食べている母の雑煮の方が好きだった。お母さんって尊い。
いまだによその地域の雑煮を食べたことはないけれど、友人が作っていた京都の白味噌の雑煮が気になっている。いつか食べてみたい。
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