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瓶詰めの世界

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記事一覧

瓶詰め世界のこと

 瓶詰めのものはすべて買うことができる。この世界ではなんでも瓶詰めになっている。  手紙…

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後輩を買った日

 僕の住処である無人駅から瓶詰め屋さんまでは、自転車でひとっ走りするくらいの距離がある。…

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無人駅に明りを灯す

 後輩に明りの瓶詰めを握らせる。 「なんですか、これ?」 「明りだよ。もう日が暮れてくるか…

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おやすみ

「しまった、寝台の瓶詰めを買うのを忘れていた」 「ふむ、ではわたしの寝台を貸してあげまし…

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制服

「どうしたの、その服」 「これは制服ですよ、先輩」 「うん」 「わたしは後輩ですから学校に…

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学校の瓶詰め

 学校の瓶詰めを買ったひとがだれなのか、僕は知らない。そのひとはいまでも学校にかよってい…

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瓶詰めについて先生が知っていること

「おまえら、瓶詰めについてちゃんとわかっているか? 瓶詰めはただの想像だ。妄想だ。なにも生まない。ひとの役に立たない。ひとの役に立たないことをするのは、生まれてきて申しわけないと思わないか? 先生は思う。だからおまえたちにはこんなひとの役に立たないようなことをしてほしくない。おまえたちは先生の話をよく聞いて、自分のやりたいことを見つけるんだ。そうしたらすくなくとも、こんな、瓶詰めなんかに頼らなくて済むようになる。先生は立派な大人なんかじゃないが、瓶詰めなんか触ったこともない」

いちばんいいところでお昼にしよう

「せんぱーいっ! あ、ちゃんといますね」  お昼休みになった瞬間、教室のドアが終末的な音…

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怖いくらいうつくしい

 放課後になると、世界は夕暮れになる。  だれもいなくなった教室の窓辺に寄り、裏山の輪郭…

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硝子

 瓶詰めの世界には平日も休日もないから、僕と後輩は学校に行きたくなった日を平日、行きたく…

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レールを叩くと

 気動車の走るレールをなにか硬いもので叩く。今回は手近にあった瓶の底の角で叩いてみる。し…

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空き瓶

 空き瓶を回収ボックスじゃなくて、ずっと集めて、それでなにかをつくろうとしたひとがいた。…

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イタチ

 イタチは裏山にすんでいる。人間たちがこの瓶詰めの世界にすむようになるずっと前からイタチ…

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