おやすみ
「しまった、寝台の瓶詰めを買うのを忘れていた」
「ふむ、ではわたしの寝台を貸してあげましょう」
眠たげな目つきで後輩は適当なことをいった。後輩はビールをしこたま飲んで酔っぱらい、僕の寝台の毛布を蹴飛ばしながら横になっている。
毛布を拾って後輩の上にそっとかけてあげると、砂浜のように動いて横にスペースをつくってくれた。
僕はしずかにそこに寝転がった。後輩からビールの匂いがした。
「おやすみ」
「おやすみ」
世界はとてもしずかだったから、すぐそばにいる後輩の身じろぎの音が聞こえた。それだけが世界のようだった。
その日、僕は悪い夢をみなかった。
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