愛
暖かい愛を与えられる人になりたい。
わたしの良さって何なんだろうな。
悪いところばっかりだなって思うけれど、何が悪いのか説明しろって言われるとそれもよく分からないし。
わたしに良さなんてある?
どこが悪い?
わたしは滅多に人を嫌いになりません。
過去の恋人にも言いました。
安心させるためとかじゃなくて、本当に、今まで生きてきてずっとそうだったから。
誰にでも良いところと悪いところがあって当たり前で、悪いところがたまたま表に出てきたからといってその人の本質は変わらないのだから。
知ってたか知らないかの違いだけだから。
わたしは滅多に人を好きになりません。
他人を信用するってとてつもなく怖いことだから。
みんな悪いところがあると知っている。
だからそんな人間の汚さが垣間見えただけで、その矛先が自分に向いていようがいまいが関係なく、人間がものすごく恐ろしい存在に見えてしまって。
きっと個人を嫌いにはならないけれど、人間のことは反吐が出るほど嫌いなんだ。
人間が嫌いだから、自分を傷つけた。
人間が嫌いだから、現実から逃げた。
人間が嫌いだから、心が壊れた。
いや、心が壊れたから、人間が嫌いになった。
その心を壊したのは、人間だった。
わたしの心は、どこにもないよ。
そんなわたしに、誰かに暖かい愛を与えることなんてできると思う?
世界でいちばん残酷なものって知ってる?
それはね、時間だよ。
時間が流れる。
人は生きる。
気持ちが変わる、
わたしの知らないうちに。
わたしはしばらくはずっと続くとどこかで信じきっていた愛に、突然裏切られた。
わかってるよ。
信じたわたしが完全に悪いことぐらい。
どんなに想像できなくたって、終わりは必ずある。
そしてその終わりは、なんの前触れもなく突然襲いかかってくる。
なんだ、もう誰にも期待なんかしちゃいけない。
信用なんかしちゃいけない。
人の気持ちは時間の流れの中で変わっていく。
本人の中ではじわじわと変わってきていたものでも、表に出るのは突然だから、"裏切り"の瞬間は本当に突然やってくる。
わたしだってきっと、移り変わる人間にずっと変わらず愛を与え続けることはできない。
できない性格なのも十数年生きてきてわかっている。
人はいつか裏切る、いつでもそれを念頭に置いて生きている。
そんなわたしが、誰かに暖かい愛を与えることなんてできようか。
真の博愛主義ってどっちだろう。
誰のことも好きな、いわゆる博愛主義な友達がいる。
その子が他人のことを話す時は、わたしも知っている人の話をするとしても、わたしが知らないもしくはむしろ悪いところだと思っていたところを良いところとして話してくれる。
その子の他人の長所を見つける力は心から尊敬しているし、わたしもその子に救われた部分があるので本当に頭が上がらない。
けれどその子はよく、みんな良い人だからみんな好き、と言う。
じゃあ、もしその子の基準を持ってしても"良い人"に分類できない人に出会ったら?
誰のことも好きなその子には、1人だけ、明らかに嫌っている人がいた。
その人については口を開けば悪口だ。
みんな良い(ところしか自分には見えていない)人だから好き?
それなら、悪いところが見えてしまったら?
わたしは誰のことも嫌いにならない。
でも、誰のことも好きにならない。
誰にでも良いところがあって当たり前だ。
でも人間である以上、汚くて当たり前だ。
わたしは他人を信用できないからか、相手のことを批判的に見てしまう癖がある。
"博愛主義"な友達ならきっと見落としてしまうような、良いところとして片付けてしまうようなちょっとしたところでも、悪いところにはよく気づいてしまう。
もちろん良いところも見つけられるけれど。
だから人を手放しに好きにはならない。
ただ、"悪いところ"="嫌い"と結びつけていたら、わたしにとってこの全世界が敵だ。
だから人を嫌いにはならない。
というか、嫌いになってはいけない、の方が正しいかもしれない。
裏切られた気になって嫌いになるのは、相手ではなく信じたわたしが悪いのだから。その人の本質は何も変わっていないのだから。
悪く言うとたまたま他人の良いところを見つける才能に長けていたから誰のことも好きになれるだけだとも解釈できて、悪いところが見えたらちゃんと嫌いになる"博愛主義"の友達と、
誰のことも好きとは死んでも言えないけれど悪いところがあってもそう簡単に手のひらを返すことはないという寛容さはあるわたし。
この"博愛主義"の友達は本当に博愛主義なのだろうか。
真の博愛主義はどっちなんだろうか。
わたし、人を好きになることは出来ません。
でも、愛することはできます。
その人の欠点はありありと見えていて、そこを好きになることはできないけれど、そこも含めて愛することはできます。
なんだ。
これが、暖かい愛じゃんか。
わたしだって、暖かい愛を与えられる人間になれるんだ。
わたしだって。
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