vol.04イタリア買い付け旅行記「アラゴスタ(伊勢海老)のパスタ」にノックアウト!
2001年10月21日(日) 4日目
この日のハイライト
・有名なカプリ島に初上陸し、セレブの生活を垣間見る
・ブレザオロという牛肉の生ハムを初めて食べてみた
・ポズィターノ最後の夜「時価」の伊勢海老のスパゲッティにノックアウトされる
カプリ島へ。
世界中のセレブの別荘があるカプリ島へ日帰りで行く。ポズィターノの砂浜から船で1時間弱の距離だ。ソレントやナポリからも同じような距離に位置し、船が頻繁に出ているのだが、ポズィターノからだとこの時期、朝9時半発の1日1便しか就航されていない。珍しく曇り勝ちの中、船は出航。それほど大きくない観光船はアマルフィからポズィターノ経由でカプリ島まで行く。波の高く船がよく揺れた。もう少しで船酔いするところだ。
ローマ帝国時代から皇帝の別荘があったという歴史。近年では故カラヤンも住んでいたことがある由緒ある島なのだ。そんな別荘も喧騒を嫌気したのか住む人が減り、観光客向けのホテルへと変わっていったのだとか。登山電車で港から台地の上にあがると、そこにはミニ市庁舎に加えてプラダ・グッチ・フェラガモ・カルティエ・ルイヴィトンといったブティックが軒を連ねている。しかし中心部を離れると、手入れの行き届いたガーデニングの家や瀟洒なホテルが続き、かつての静かな別荘地を偲ばせる。
"LA CAPANNINA(ラ・カパニーナ)"
中山氏によれば、カプリ島で最も美味しい料理を出す店のひとつ。カプリ島を訪れた歴代の有名人の写真が所狭しと貼られていて、人気の程を伺わせる。オーナーは日本にも何度か来日し、ホテルなどで紹介されたりしている。トイレに続く階段わきに日本のポスターが貼られていた。
ここもまたオーナーと中山氏とはじっこんの間柄。まだ開店前にもかかわらず、窓際の良い席に案内してくれる。しかし我々二人は船酔いに加えて昨夜の夕食がまだ腹に残っているような状態。夕食のためにここは早々に切り上げて帰ろうと言うことで合意。前菜とパスタ類だけの注文に徹する。
前菜では、「ブレザオロ」という生ハムの牛肉版ハムにトライ。歯ごたえがあり、たとえは悪いが「半生状態」の良質なビーフジャーキーのような感じだ。ルッコラとパルミジャーノが乗っていて、カルパッチョ風に供された。
それに、魚介類のマリネ。この中には姿も味も、ちょうど日本の鮨ネタ「コハダ」に近い小魚のマリネが。コハダ大好きな私としては興味をそそられる。やはり美味しいものは万国共通なのだ。
スパゲッティはヴォンゴレを注文。アサリが新鮮で美味しい。仕上げにはイタリアンパセリが散らされて程よい感じ。そして旅行では不足がちな野菜サラダ。バルサミコとオリーブオイルでいただく。生のニンジンが甘くて美味しい。最後にカフェでしめくくる。有名観光地だけあって、値段は割高であったが、フレンドリーで温かいおもてなしを考えると、「なんとなく」納得の値段ではある。
ソレント経由でポズィターノに帰る
ポズィターノ行きの船はこれまた夕方に1本しかないため、少し趣向を変えてソレントまで船で行き、そこからバスでポジターノまで帰るルートをとる。ソレント行きは、ナポリ行き同様に頻繁に出航しているのだ。約40分かけて、大型のフェリーに乗りソレントをめざし、船とバスを乗り継いで、我々は夕方5時前にポジターノに帰り着いたのであった。
高級リゾートのバーでアペリティフ
部屋で休憩のあとポズィターノの町中へ出かける。小さな町は、この地でたくさん作られているマジョルカ焼きの陶器で彩られている。1000℃以下で焼かれるため、あまり頑丈ではないがカラフルな色を出す焼き方だそうだ。食器類などから、表札それに床材などまで。ホテルの内装でもかなり多く使われているのだ。
そんな焼き物も含め、食事の時に必需品のレモンが名産品。今回は食に関するものをお土産に買って帰ることにした。まず食材店ではレモンの皮が漬け込んであるエキストラ・バージン・オリーブオイルを。そしてレモンハチミツ。白く結晶になっているホンモノのハチミツだ。レモンの花から花に飛んで収集されたハチミツはきっと美味に違いない。
さらにレモンの柄が描かれたマジョルカ焼きのサラダ用サーバー。(木製の大きめのナイフ・フォークで柄だけがマジョルカ焼きになっている。)買い物の後は、我々の宿泊するホテルのちょうど真上にある、ポジターノの街で一番高級といわれるホテルのテラス・バーに入り込み、アペリティフを楽しむ。つまみは美味しいオリーブの実と塩を振ったアーモンド。眼下にポジターノの街を見下ろしつつ、夕暮れの心地よい風に吹かれながらのひと時は、それはもう贅沢なもの。是非体験してもらいたい別世界である。
CHEZ BLACK(シェ・ブラック)の名物 スパゲッティ・アッラ・アラゴスタ
「アラゴスタ」とは伊勢海老のことである。豪快な伊勢海老が一匹丸ごと乗ったスパゲティ。スパゲッティ好きなら、一度は食べてみたい料理の一つである。さっき楽しんだアペリティフだけで食欲を喚起させ、アンティパストなしの空腹状態で、この贅沢な一皿を楽しむ。メニューには値段が載っていない。「時価」だ。食事の前には儀式として、我々にエプロンが配られた。
エビの殻を割るときにスープが飛び散る可能性がある。そして出てきたスパゲッティは、皿だけでテーブルの半分を占めてしまうほどのみごとな大きさ。周りのお客さんも皆、注目している。いざ挑戦である。
スパゲッティ自体は普通の太さ(1.7ミリ)なのだが、南部らしく固めのアルデンテに茹で上がっている。メインの具は、伊勢海老とプチトマト「だけ」である。なのに、どうしてこんなに美味しいのだろうかと思うほど、素晴らしい味なのだ。プチトマトが甘い。新鮮でジューシーな巨大伊勢海老の柔らかい肉。それらがシンプルでいながら、非常によく調和していた。良質のエキストラバージン・オリーブオイルと、素材から出てくるダシがよく効いているのだろう。
あれこれ手を加えていない「素材の勝利」といえる。この一皿が、南イタリアの美味しさを象徴しているかのようだ。パスタ以外にも本当はもっと美味しい料理があるのだろうが、今の自分にはもうこれで十分 「あっぱれ!」という感じであった。食後に定番の自家製リモンチェッロをいただきながら、高級リゾートの夜は更けていったのだった。
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