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パトリック・ジュースキント著『香水 ある人殺しの物語』
1985年にドイツで発行された小説。日本では2003年に発刊され、2007年に映画も公開されている名作。
18世紀のフランスを舞台に、超人的な嗅覚を持って生まれた孤児ジャン・バチスト・グルヌイユの生涯を描いている。
この物語の主人公は劣悪な環境での生まれ育ちと、持って生まれた偏執的な性格傾向、異常なまでの嗅覚が全て揃った事で殺人犯にまでなってしまったのだろう。
この物語のほとんどは優れた嗅覚
ジャン=ポールディディエローラン著『6時27分発の電車に乗って、僕は本を読む』
2017年に発行されたフランスの小説。
パリ郊外の断裁工場で働く青年ギレン。身近な誰かの人生を覗き見ているように日常の中の非日常を描いている。
そして、ささやかなドラマに喜びを感じ、悲しみを分かち合い、共に感情の軌跡を辿ってゆく。
個人的な日常を描いた静かでシュールな映画をみているような小説だと思った。読み進めて行くに従って、薄緑のフィルターがかかった映像すら目に浮かぶようになってしまった。
マイキー・ウォルシュ著 自伝『ジプシーと呼ばれた少年』
イギリスに暮らすロマ族に生まれた男性の少年期を描いた自伝。
この本を手に取るまで私はロマ族をよく知らなかった。欧州ドラマや映画に時々出てくる移民と同じように思っていた。しかし、蓋を開けてみると予想以上だった。
ロマ族の考え方や仕来たりなどの具体的な描写を読み、大変申し訳ないのだが、正直、ロマ族に生まれなくて良かったとすら思ってしまった。恐らく、筆者がそれだけロマ族の文化に対しての嫌悪感や