ホウ・シャオシェンのアイドル恋愛映画監督第2作『風が踊る』
画像(C)1982 Kam Sai (H.K.) Company / (C) 2018 Taiwan Film Institute. All rights reserved.
ホウ・シャオシェン監督第2作。主演は台湾のアイドル歌手フォン・フェイフェイと香港のスター歌手ケニー・ビー。80年代初頭の台湾を舞台に、女性カメラマンと事故で視力を失った青年とのラブストーリー。わりと軽いタッチの恋物語だ。
澎湖島を洗剤のCM撮影で訪れた女性カメラマンのシンホエ(フォン・フェイフェイ)とCM監督の恋人ローザイ(アンソニー・チェン)は、視力を失った青年チンタイ(ケニー・ビー)と出会う。シンホエは自分を見つめている田舎の青年が視力を失っていることを知る。自分のことなど見ていなかったという視線の誤解。いつも固定カメラで一方向からの撮影をしているホウ・シャオシェン監督だが、この作品では撮影の逆ショット(本来は写されないCMスタッフたちが写し出される)が使われており、それが虚を突かれる。まだ独自の撮影スタイルが定まっていないのが新鮮。カメラで見つめるシンホエと見つめられても見えていないチンタイ。その顔の切り返しショットが使われるが、視線は一方的なものでしかない。都会のCM撮影クルーと海辺の田舎の人たちという対比が使われている。子どもたちが牛の糞に火薬を仕掛け、糞をまき散らすイタズラが微笑ましい。
後日台北で偶然再会した二人。チンタイは角膜手術を受けるという。シンホエはローザイと結婚するつもりでいたが、チンタイの世話を焼いたり、角膜手術後に再会することによって、二人の仲が急接近。故郷の小学校で臨時教員をしていたシンホエを訪ねてきたチンタイは、子どもたちとかくれんぼをしながら、シンホエを見つけ出し二人の距離は接近する。小学校で子どもたちとの記念撮影のシーンがあるが、ここで二人は入れ替わることで、カメラを通じて視線が初めて交錯する。
台北に戻ってきて、チンタイから熱い視線を受けるシンホエ。香港へとローザイと旅行することになっていたシンホエだったが、チンタイのことが気になってしょうがない。都会と田舎という関係の図式は無くなり、ラストは空港にチンタイが現れ、二人の恋はハッピーエンド。まさにラブコメ的な三角関係の物語であり、都会と田舎という関係が崩れていく話でもある。
1981年製作/92分/台湾
原題または英題:Cheerful Wind
配給:オリオフィルムズ
監督・脚本:ホウ・シャオシェン
製作:ヤン・バイシュエ、チェン・クンホウ
撮影;チェン・クンホウ
美術;チー・カイチン
編集:リャオ・チンソン
音楽:ズン・ホンユエン
キャスト:フォン・フェイフェイ、ケニー・ビー、アンソニー・チェン、メイ・ファン、シー・イン、チョウ・ワンシェン、ウー・リン、イエン・チェングオ