ヒデヨシ(Yasuo Kunisada)

札幌で暮らすオヤジです。テレビの仕事をしていました。世界を彷徨うような映画や小説が好きです。映画レビューhttps://hideyosi719.blog.fc2.com/

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『風ふたゝび』豊田四郎~快活に動き回る原節子~

原節子、池辺良、山村聰が主演という豊田四郎の1952年の東宝映画である。豊田四郎監督の作品はあまり見ていない。原節子は小津安二郎の控えめな嫁、未亡人のイメージが強いが、本作の原節子はなかなか活発で明るい。 香菜江(原節子)は、夫と別れて叔父夫婦の家に居候していて、最初はやや暗い。夫となぜ別れたのかは不明。うまくいかない人生。寒い冬、映画館の売店で働いていて帰ってくる。男を紹介しようかと炬燵で顔を寄せてくる叔父(龍岡晋)。父の精二郎(三津田健)は仙台の大学の教授。同じ列車に乗

    • 『くじらのまち』鶴岡慧子~水の中から陸の世界へ~

      第34回PFF(ぴあフィルムフェスティバル)グランプリ受賞作。飛行機の機内上映で見た。鶴岡慧子監督は、『バカ塗りの娘』がそこそこ面白かったので、この立教大学の卒業作品を見た。鶴岡慧子は、立教時代は万田邦敏に師事し、卒業後に東京芸術大学大学院映像研究科映画専攻監督領域に進み、黒沢清監督に師事するという経歴の持ち主。 まさに自主映画という感じの70分の短い作品。仲良し高校生3人組の物語。6年前に失踪した兄のことが気になるまち(飛田桃子)は、水の中にいることが好きな女子高生。プー

      • 溝口健二『山椒大夫』~名カメラマンの映像美と死の海(水辺)と山~

        画像(c) KADOKAWA 1954 日本を代表する名監督溝口健二の『山椒大夫』をやっと観た。東京に行った折に、「神保町シアター」の田中絹代特集で上映していた。1954年・第15回ヴェネツィア国際映画祭で銀獅子賞を受賞した作品だ。溝口は1952年に『西鶴一代女』でヴェネツィア国際映画祭 国際賞、1953年に『雨月物語』で第14回ヴェネツィア国際映画祭の銀獅子賞、そして本作の受賞と3年連続の国際的映画祭の受賞となった。有名な「安寿と厨子王丸」の童話でも知られる説経節の演目を

        • 成瀬巳喜男『あにいもうと』~限られた空間で描かれる兄妹の愛憎と女性の強さ

          東京に行った空き時間で、ミニシアター「ラピュタ阿佐ヶ谷」に行って、久我美子特集の成瀬巳喜男『あにいもうと』を観る。東京は古い日本映画をこうして観られるのがいい。 多摩川で川師の親方として地元を仕切っていた老人・山本礼三郎は、コンクリートで固める護岸工事の時代になって隠居暮らし。酒ばかり飲みながら、「かつての仕事は良かった」と言ってばかり。川と共に生きてきた男としての矜恃があるが、時代の変化について行けなくなった。川で遊ぶ子どもたちが映し出され、この川沿いの家族の物語が始まる

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          『リチャード・ジュエル』クリント・イーストウッド~作られる虚像と実像のギャップ

          画像(C)2019 VILLAGE ROADSHOW FILMS (BVI) LIMITED, WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC. AND RATPAC-DUNE ENTERTAINMENT LLC クリント・イーストウッドが出演せずに監督した作品。イーストウッドは実話のベースにした映画をこのところ数多く撮っているが、本作も1996年のアトランタ爆破テロ事件で、マスメディアの先行報道とFBIと警察の先入観に基づく強引な捜査で犯人にされそうになった

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          『トゥルー・クライム』クリント・イーストウッド~死刑執行までのカウントダウン~

          冤罪事件を解き明かす新聞記者の物語。アクションは、死刑執行まで車を猛スピードで飛ばす場面がある程度。クリント・イーストウッドはカリフォルニアの地元紙に勤めるベテラン記者エベレット。交通事故死した同僚の仕事を引き継ぎ、死刑執行を目前に控えた囚人ビーチャムの取材をするうちに冤罪ではないかと疑問を持ち、死刑執行直前まで走り回って、証拠を見つけ出すというやや出来すぎた話。 6年もの間、裁判所で審議され死刑執行されようとするその日に、新聞記者が突然取材することになって事件のことをちょ

          『トゥルー・クライム』クリント・イーストウッド~死刑執行までのカウントダウン~

          『パーフェクト ワールド』クリント・イーストウッド~疑似親子のロードムービーのような逃走劇~

          写真:Album/アフロ 脱獄犯と人質少年との脱走&追走劇なのだが、のどかなロードムービーの趣きさえあるヒューマンな作り。脱獄犯ブッチにケビン・コスナー。それを追う州警察署長レッドにクリント・イーストウッド。子役のフィリップ(T・J・ローサー)がいい。 アラバマ刑務所から同じ囚人のテリー・ピュー(キース・サセバージャ)と脱獄したブッチ(ケビン・コスナー)の二人はある家を襲って少年を人質にして車で逃走。途中、少年に危害を加えようとしたことでブッチはテリーをトウモロコシ畑の中

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          『インターステラー』クリストファー・ノーラン~壮大な宇宙の物語を親子愛で描く~

          画像(C)2014 Warner Bros. Entertainment, Inc. and Paramount Pictures. All Rights Reserved. 記憶や時間というものにこだわってきたクリストファー・ノーランのオリジナルSF大作。宇宙の彼方に広がる広大な時空間を舞台にしながら、父親と娘のシンプルな親子愛の物語に着地させた手腕が見事だ。 近未来、地球規模の異常気象と食糧危機によって人類破滅の危機が迫っていた。最近の異常気象を考えると現実味を帯びて

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          『ダーティハリー』シリーズ2~5 ~法の限界を超えた私刑・復讐的暴力の闇

          ※画像『ダーティハリー4』より 『ダーティハリー2』 第1作で刑事でありながら、現場で拳銃を使い犯人を容赦なく撃ち殺すダーティな仕事ばかりやるハリー・キャラハン刑事を造型し、1作目では最後にバッジを川に投げ捨て、刑事を辞めたはずのキャラハンだったが、シリーズ化となり再び刑事として登場。マイケル・チミノが脚本に参加している。裁判で証拠不十分で無罪になった悪人たちが突然撃ち殺される。そんな巷にのさばる悪人たちが次々と殺されていく。犯人は白バイの警官。法で守られる容疑者の人権に、

          『ダーティハリー』シリーズ2~5 ~法の限界を超えた私刑・復讐的暴力の闇

          『スペル』サム・ライミ~飛び出すお化けと真っ向対決~

          『スパイダーマン』シリーズの大ヒットでメジャー監督となったサム・ライミだが、私はあまり見ていない。『シンプル・プラン』を見たぐらいか。ホラー映画も苦手なせいであまり見ていないのだ。だから有名な『死霊のはらわた』も見てない。サム・ライミがその『死霊のはらわた』の原点に立ち返ったような作品と言われているのが本作『スペル』だ。『スパイダーマン』シリーズ後の2009年に撮った作品。 監督自らインタビューで「『弾ける幽霊物語』『飛び出すお化け』のような作品が大好きだ」と言っているよう

          『スペル』サム・ライミ~飛び出すお化けと真っ向対決~

          アクション活劇の名作『ダーティハリー』ドン・シーゲル~爽快感よりもやり場のない怒り~

          久しぶりに見た。あらためて見ると、こんなに暗い映画だったかと驚く。爽快感が全くない。クリント・イーストウッドの当たり役であり、彼の代表作である。ある意味この映画のイーストウッドのイメージが、後々のイーストウッド映画を作っていったといってもいいだろう。法律や宗教では裁ききれない理不尽な暴力への強烈な怒りの感情。その感情に基づき私的制裁とも言える暴力で相手をとことん追い詰め、倒す。しかし、その卑劣な敵を倒した後には、爽快さはなく、ただただどうにもならないこの社会がある。この映画で

          アクション活劇の名作『ダーティハリー』ドン・シーゲル~爽快感よりもやり場のない怒り~

          『夜、鳥たちが啼く』城定秀夫~夜の孤独を抱えて~

          画像(C)2022 クロックワークス 2022年の日本映画である。函館出身で芥川賞に計5回ノミネートされたが、受賞は逸したまま41歳で自殺した作家・佐藤泰志の同名短編を映画化。これまで佐藤泰志原作の映画化は、『海炭市叙景』)(2010年/熊切和嘉)、『そこのみにて光り輝く』(2014年/呉美保)、『オーバー・フェンス』(2016年/山下敦弘)、『きみの鳥はうたえる』(2018年/三宅唱)、『草の響き』(2021年/斎藤久志)、そして2022年の城定秀夫監督による本作である。

          『夜、鳥たちが啼く』城定秀夫~夜の孤独を抱えて~

          『他なる映画と 1』濱口竜介(インスクリプト)~映画講座集成!映画を生々しく体験するには!?~

          映画監督の濱口竜介氏による映画講座をまとめた本である。濱口氏が映画についていろんな場所で語った講座を集めた本なのだが、これが素晴らしい。映画をこれから撮る人、学ぶ人は是非読んで欲しい本だ。いや、読むべき一冊である。いろんな場所で語った「話し言葉」がベースになっているので、それほど難しくはない。濱口竜介氏は、この本と同時に『他なる映画と 2』を出していて、こちらはいろんなところで書いた映画論をまとめた本である。こちらは「書き言葉」がベースになっており、より緻密で専門的だ。特にロ

          『他なる映画と 1』濱口竜介(インスクリプト)~映画講座集成!映画を生々しく体験するには!?~

          『国境ナイトクルージング』アンソニー・チェン~どん詰まりの氷の世界で~

          (C) 2023 CANOPY PICTURES & HUACE PICTURES <ネタバレあり。ご注意ください。> 北朝鮮の国境近い中国の延吉という町が舞台である。朝鮮民族の文化も入り込んでいる町のようだ。雪と氷の世界で出会った二人の男と一人の女性、どん詰まりの国境の町で3人の若者たちの数日間の物語である。凍った川から氷が切り出される場面から始まる。氷がイメージとして何度も出てくる。友人の結婚式に出席するためにこの町にやって来たハオ・フォン(リウ・ハオラン)は、披露宴

          『国境ナイトクルージング』アンソニー・チェン~どん詰まりの氷の世界で~

          『SUPER HAPPY FOUEVER』 五十嵐耕平~海の向こうに~

          画像(C)2024 NOBO/MLD Films/Incline/High Endz この映画に三宅唱監督が賞賛コメントを寄せていたので観てみた。監督の五十嵐耕平は、東京造形大学にて、諏訪敦彦監督に師事。未見だが『息を殺して』がロカルノ国際映画祭で上映されたり、ダミアン・マニヴェルとの共同監督作品『泳ぎすぎた夜』が第74回ヴェネツィア国際映画祭で上映され、海外でも評価されつつある若手監督だ。彼のことは知らなかった。出演者もほとんど名前を知らない役者ばかりで予備知識もないまま

          『SUPER HAPPY FOUEVER』 五十嵐耕平~海の向こうに~

          『憲兵と幽霊』『怒号する巨弾』『恋愛ズバリ講座』~新東宝の天知茂特集

          画像『憲兵と幽霊』(C)国際放映 1947年東宝の大争議から分裂して生まれた新東宝は、1947年~1961年の14年間に800本以上の映画を製作。当初は溝口健二の『西鶴一代女』など文芸色が強かったが、1955年大蔵貢が新東宝の社長になると、「安く、早く、面白く」の大衆娯楽路線を徹底。エログロ、怪奇、怪談などカルト的人気作品もあると言われている。HDDの録画番組を整理していて、新東宝の天知茂特集があり3作品ほど見た。どれも珍品の数々で面白かった。 ◆『憲兵と幽霊』 圧倒的

          『憲兵と幽霊』『怒号する巨弾』『恋愛ズバリ講座』~新東宝の天知茂特集