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『落葉』オタール・イオセリアーニの長編デビュー作~圧力とジョージアの誇り
旧ソ連ジョージア出身のオタール・イオセリアーニ監督が1966年に手がけた長編第1作。ワイン発祥の地ともされるジョージア、ワイン醸造所で働く真面目な青年の物語。オープニングはドキュメンタリーのような映像でワイン造りの職人たちやワインを飲んで楽しく語らうジョージアの人々の様子が映し出される。オタール・イオセリアーニ監督のワイン愛が伝わってくる。
ワイン工場に配属された新人技師ニコは真面目な青年で、職人たちとも仲良くなって働き始める。同時に採用された同僚は、学生時代に成績も優秀だったらしく、出世主義で職人たちを見下しており、「職人たちから甘く見られないように」距離を置いている。研究室で働く女性マリナは美人で、みんなからちやほやされて、いろんな男たちから声をかけられている。ニコもまたマリナの存在が気になっている。
中央からノルマを課せられたワイン工場は、生産量を維持するのに必死。品質の悪いワインでも出荷してしまう。職人たちは、その質の悪いワインの出荷日を覚えており、そのワインは飲まないようにしている。なかには、ワイン樽からワインをくすめてしまう者もおり、小さいところに目をつぶりながら人々は日々働いている。そんなワイン工場での人間模様がニコを中心に描かれる。ニコがマリナとカフェでコーヒーを飲むことになっても、別の男が現れてマリナがいなくなってしまったり、いろんな男たちから誘いを受けているマリナは、ニコをからかうように部屋に入れたりもする。それでニコはほかの男に殴られる羽目になってしまう。真面目なニコは、会社がノルマ達成を気にして品質の悪いワインでも出荷してしまうことが許せない。何度も出荷するべきではないと意見するが会社に聞き入れてもらえない。逆に「なに子供みたいなことを言っているんだ」と諭されてしまう。マリナの部屋に行って殴られた翌日、ニコは技師たちに黙って勝手にゼラチンを樽に入れて、出荷できなくしてしまう。実力行使に出たのだ。
本音と建て前、会社や仲間たちからの同調圧力、中央のソ連政府とジョージアの関係、ワイン文化への誇りなどが寓意的に描かれている。ワインを飲み、友と語らい、歌を唄う。これこそがジョージアの大事な文化なんだろうなと思う。
1966年製作/96分/ソ連
原題または英題:Giorgobistve
配給:ビターズ・エンド
監督:オタール・イオセリアーニ
脚本:アミラン・チチナーゼ
撮影:アベサロム・マイスラーゼ
美術:ディミトリ・エリスタービ
キャスト:ラマーズ・ギオルゴビアーニ、マリナ・カルツィワーゼ、ゲオルギー・ハラバーゼ
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