『ぐれん隊純情派』増村保造~チンピラたちの旅芸人一座もの~
画像(C)KADOKAWA 1963
増村保造監督ということで見た。女性たちの情念の映画というイメージが強い増村保造監督だが、勝新太郎の『兵隊やくざ』など男性活劇映画も数多く撮っている。この作品は、落ちぶれたやくざのチンピラたちが、旅芸人一座を旗揚げする話だ。藤原審爾の同名の原作。
銀之助(本郷功次郎)、松(藤巻潤)、豊(千波丈太郎)のやくざのチンピラたちは、金がまわらない中で組が解散。銀之助の父は中村座という関東一円を巡業する旅芸人一座を持っていたが死んだ。芝居道具などを売り払って金にしようと乗り込むが、一座を乗っ取ろうとする奴らを追い払い、銀之助を二代目座長にして新たに中村座を再興しようという話になり、動き始めた。チンピラ稼業や踊り子などの半端もんたちを集めに走り回る。銭湯の風呂焚きをしている元歌舞伎役者の雁右衛門(中村鴈治郎)に演技指導・演出担当の白羽の矢が立つ。このへんの人を集めるくだりは、黒澤明の『七人の侍』(1954年)を思い出す。1人1人はパッとしなくても、みんなで集まってそれぞれの能力を生かせればなんとかなる。中村鴈治郎の旅芸人モノということで、小津安二郎の『浮草』(1959年)を思い出す。
関東一円を仕切る興行師・大森(高村栄一)と対立して、興行的に成功していたにも関わらず嫌がらせをされ、金が払えなくなり一座解散の危機が訪れる。豊(千波丈太郎)は、捕まる覚悟で敵対していたヤクザを親分を一人で刺しに行き、元組長の妻から金をもらい、金を工面をして劇団のピンチを救う。まさに自らを犠牲にした人情芝居そのもの。また、地方都市の名士である病院の院長の娘の雅子(三条魔子)に銀之助は惚れてしまい、二人は恋仲になるが、院長と弁護士(伊東光一)の策略に騙されて、二人は別れる羽目になる。身分差の障壁の恋。そんな二人の悲恋と金と権力による卑劣な妨害を芝居仕立てにして一座は公演する。庶民たちの声を味方につけて、町の権力者たちをやっつけるのだ。その町の芝居興業を請け負っているミヤコ喋々もいい感じ。フィクションの力で現実を変えるという痛快な旅芸人一座の物語だ。
竹藪の中で愛し合う二人の描写や、ろくでもないチンピラたちが人に希望を与える芸人になっていく痛快人情旅一座の物語をテンポよく増村保造が仕上げている。
1963年製作/93分/日本
配給:大映
監督:増村保造
脚色:増村保造、小滝光郎
原作:藤原審爾
企画:藤井浩明
撮影:小林節雄
美術:下河原友雄
音楽:池野成
編集:福田民雄
キャスト:本郷功次郎、藤巻潤、千波丈太郎、大辻伺郎、当銀長次郎、大川修、中村是好、中村鴈治郎(2代目)、三条魔子、弓恵子、浜田ゆう子、宮川和子、三木裕子、須藤恒子、ミヤコ蝶々、高村栄一、伊東光一、星ひかる、中条静夫