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第21回: 米国で増える「厳しくない菜食者」
2021年3月31日掲載
米国の旅行市場が回復し始めています。今年3月12日の国内空港利用者は135万7,000人となり、1日の利用者数としては最低水準だった昨年4月の8万7,500人を大きく上回りました(※)。これは新型コロナウイルス禍前の70%程度の水準ですが、それでも急速に回復していると言って良いでしょう。ワクチン接種を猛スピードで進めている米国は、日本のインバウンド業界にとってはぜひ早期に戻ってきていただきたい国の一つです。厳しいロックダウン(都市封鎖)で暗かったニューヨークが一転して明るくなっているというニュースにも期待が膨らみます。そこで今回は、コロナ禍で変化してきている米国消費者の食のスタイルを考察してみましょう。
「厳しくない」菜食を取り入れる人が増えている
日本でも「ヴィーガン」や「プラントベースド」といった言葉を見かけることが増えました。それはハンバーガーのパティに使われる代替肉を指しているケースが多く、日本に進出している米国系ハンバーガーチェーンの中には自国と同じメニューを提供し始めているところもあります。
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そこで改めて米国の状況を見てみましょう。表は、米国の消費者の食のスタイルがコロナ禍でどう変化したのかを示しています。左の円グラフによると「菜食が増えた」と回答した人は約23%で「肉食が増えた」と回答した人約12%を上回っています。しかもその人数は約2倍です。「変化なし」と回答した人は約66%と最大シェアですが、米国消費者の約4人に1人が「菜食が増えた」のには注目するべきです。
続いて右のグラフを見てみましょう。コロナ禍前の2020年初頭とコロナ禍中の同年中頃における変化です。「肉を食べる人」は消費者全体の81%から76%へと5ポイント減少しています。「フレキシタリアン(肉食を減らしている人)」は全体の12%から16%へ4ポイント増加、「ベジタリアン(菜食主義者)」も全体の2%から4%へ倍増しています。注目したいのはヴィーガン(動物性を食べない)で、全体の2%から1%へと半減しています。日本ではヴィーガンは厳しいというイメージがありますが、実は米国も同様で、多くの消費者は手軽に菜食を増やしたいと考えているのかもしれません。
菜食が増えた理由は健康、コスト、ステイホーム
上記の調査では「健康面を考えて菜食を増やしている」消費者が増えていることがわかります。左のグラフの全体の約23%の人が「菜食が増えた」と回答しました。世代別に見ると18歳から24歳の人では29%が、また55歳から64歳の人の24%が「菜食が増えた」と回答し、その理由を「健康を考えて」としています。
また回答者全体の3分の1の人が「自炊が増えた」と回答しています。その理由を「収入が減ったため食費を切り詰めた」、「外食が減って自宅での食事が増えたので菜食を増やした」と回答しています。中には「植物性食品は動物性食品よりも日持ちするから」といった声もありました。
これまで菜食が増えた背景として、環境意識の変化や主義主張といったことが取り沙汰されていましたが、調査結果からは収入減少やロックダウンといった、より現実的な問題を理由に菜食を増やしていることが分かります。
選別するメニューではなく選択できるオプションが喜ばれる
上記の調査によると、回答者全体の31%の人はロックダウン期間中に「ヘルシーオプションを選んだ」と回答しています。ヘルシーオプションとは、メニューに使われている油を減らしたり、糖分を減らしたり、植物性由来食材に変更するなどして、より健康的なメニューに変えるものです。
海外ではレストランやファストフードのメニューに「Veg Option Available(ベジオプション承ります)」などと掲載されていることが多く、いわば基本メニューの別バージョンといったところです。例えば、ハンバーガーではパティやドレッシングは通常動物性由来の食材が使われますが、これをヘルシーオプションとしてプラントベースド(植物性由来)のパティとドレッシングに変更できるわけです。例えば私は、海外でハンバーガーを食べる際にはパティは植物性肉へ変更、ベーコンをアボカドへ変更したりしてオーダーします。
日本ではこうしたケースでは「植物由来のハンバーガー」と別メニュー化してしまいますが、海外ではオプションとするケースが少なくありません。基本メニューでは動物性を含むものの、オプションとして植物由来へ変更することができるのです。別メニュー化してしまうと、消費者は選ぶのに少々慎重になりますが、オプション化すれば気軽に選択できるようになります。カスタムオーダーのように自分が好きなように作ってもらえれば、基本メニューをいろいろなバージョンで楽しむきっかけにもなります。こうしたオプション化を進めると、米国含む海外からのインバウンド客に以前にも増して喜ばれる新しい日本の食を提供できるでしょう。
※:REUTERS 2021/3/22
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