顔学?(またの名を下鴨納涼古本まつりレポ)
8月11日。
わたしは京都は下鴨、糺の森にて催される古本まつりに来ていた。
もっと本だけが並んでいるのかと思いきや屋台がいくつか軒を連ねている。目に「氷」の文字が飛び込んでくる。
夏の京都は暑いと言えど、木陰は意外と快い。
まずは木陰でかき氷をちろちろと食す。夏だ!
舌を染めあげたところで、いよいよ本の海に飛び込むことに。
30分後にまたここで。
そう告げてわたしたちは各々が気の赴くままに糺の森を泳いだ。
わたしは主に、
①言語学、あるいは言語哲学関係の本
②ロシア文学の解説書
③静物画、あるいは植物画の美術書
があれば嬉しいなと思っていた。
①~③について詳しいわけではない。
詳しくないからこそ、読みたいのだ。
ところがそう簡単にはお目当ての本には出会えない。それもまた古本まつり、といった感。
*
ふと、気になる本を見つけた。
タイトルは『顔学への招待』。
顔学ってなんだ?
気になって目次を覗く。
なんだこの本は???
完全にびびっときた。vividな出会い。なんてことだ。
迷わず手に取り、即購入。
お目当ての本は何ひとつ買えなかったけど、面白そうな本に出会うことができた。
旅の都合上、30分ほどしか滞在できなかった下鴨納涼古本まつり。
また行こうと心に決めた。
*
ここからは、実際に『顔学への招待』を読んだ感想を書き表したいと思う。
著者の原島博さんは工学分野の研究者であり、「日本顔学会」の一員である。
日本顔学会?
この学会はどうやら1995年に設立されたものらしい。
調べてみたら、マジのガチな学会だった。
(学会のリンクを下に添付しました)
で、その工学博士が顔学の必要性とかを説いてくれているわけなんだけど、それがまあ面白い。
顔学って分野の面白さはもちろんだけど(「未来人の顔予想図」であったり「東大生の平均顔」であったりが掲載されており視覚的にも楽しませてくれるのだ!)、この本は学問自体への面白さを再認識させてくれる。
たとえば顔学を考えるにあたり、哲学分野からアプローチをすれば「ヒトはなぜ顔にこだわるのか?顔のもつ意味とはなにか?自己存在としての顔とはなにか?」といった問いが立てられる。
ところがこれが社会学分野になれば「顔と職業・社会的地位/顔による社会的差別/化粧の時代変遷と文化」といったあたりに関心がもたれる。
さらには情報学・工学の立場からは「顔のパターン認識・個人識別の方法について/顔をもつコンピュータ・通信システムの開発」といった方向に展開する。
「顔学」という出来立てほやほや(この本が出版された年は1998年なため学会が生まれて3年足らずの時期)な学問を通じて、わたしたちは学問が本来いろいろな分野の融合体であるという事実を思い出すことができる。
知的な興奮を覚える一冊だった。
ぜひたくさんの人に読んでいただきたい。