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2021年7月の記事一覧
【第2部25章】陳情院議長暗殺計画 (3/8)【議長】
【目次】
【侵入】←
「諸君、放送の中止を……」
「だめだ! だれひとり、いま立っている場所から動くな……機材にさわることも、許さない!!」
複数のカメラを向けられる壇上の壮年の男に右手のサブマシンガンで狙いを定めたまま、狼耳の獣人娘は逆手で拳銃を引き抜き、スタジオのスタッフを牽制する。
つい先刻まで朗々とスピーチしていたであろう男は、ふう、とため息をつく。シルヴィアは、ターゲットか
【第2部25章】陳情院議長暗殺計画 (2/8)【侵入】
【目次】
【撹乱】←
『こちら、ヴィント隊! 目標を見失った……』
『ズィルバ隊だ! ターゲットと会敵……至急、増援を……』
『……エアスト隊、なにがあった。応答せよ……!』
迷彩柄のジャケットに身を包んだシルヴィアは、ぴんと立てた狼耳を導子通信機に押し当て、傍受した帝国軍の通信に耳を澄ます。
ざりざりという雑音に混じって、兵士たちの慌てふためく声がひっきりなしに聞こえてくる。獣人
【第2部25章】陳情院議長暗殺計画 (1/8)【撹乱】
【目次】
【第24章】←
──ウウゥゥゥ、ウウゥゥゥ……
空軍基地に、スクランブルを知らせる重苦しいサイレンが鳴りひびく。ヘルメットを片手にぶらさげた4名のパイロットが、各々の相棒である戦闘機のもとへ小走りに急ぐ。
作戦行動、支援要請、そして緊急発進……今日は、出撃命令が多い。特に、帝国本土上空に突如として出現した浮遊戦艦への対応に、多くの航空戦力が割かれている。この基地に残された戦闘
【第2部24章】永久凍土の死闘 (8/8)【理解】
【目次】
【足元】←
「ええ──いッ!!」
メロは対となる片割れ、己の手のなかにあるリングを天高く掲げる。直径が拡大し、大きく回転すると、輪の内側に亜空間トンネルの出口が形成されて、ライゴウの躯体が頭から転がり出てくる。
魔法少女は、天使の輪のように宙に浮かぶリングを蹴ると、落下するスモウレスラーと高さをあわせるように地面へ向かって跳躍する。
天地逆転した状況への対応に手こずるライ
【第2部24章】永久凍土の死闘 (7/8)【足元】
【目次】
【回転】←
「なに……消えた、か?」
ライゴウは、まっすぐ伸ばした腕を引き戻し、腰を落とした姿勢で残心しながら、いぶかしむ。全身から噴き出た汗が、もうもうと蒸気になって立ちのぼる。
「いまさら、怖じ気づいて逃げ出したか……それならそれで、手間は省けるってことよ……」
ぶつぶつとつぶやきつつも、スモウレスラーの歴戦の闘士として磨き抜かれた第六感が、己の誤断を指摘している。相手
【第2部24章】永久凍土の死闘 (6/8)【回転】
【目次】
【拒絶】←
「──だったら、死ね!」
ライゴウの左張り手が、メロの顔面めがけて削岩器のごとく振りおろされる。魔法少女は、とっさにしびれる指でかろうじて握り続けていたリングを背中にすべりこませる。
「つながれ! 『希望転輪<ループ・ザ・フープ>』ッ!!」
メロの得物である輪の内側が揺らめき、亜空間へと接続される。少女の身体が転がりこむように、ここではない場所へと逃れていく。刹
【第2部24章】永久凍土の死闘 (5/8)【拒絶】
【目次】
【胆力】←
「ええーい!」
「どっせい!」
凍原に、少女と男の咆哮が同時に響く。メロは、右手のリングをオーバースローで投擲する。ライゴウは、全身の筋肉に力をこめる。
魔法少女の投げつけた回転輪は、征騎士の鋼のごとき肉体によって難なくはじかれる。今度は、防御姿勢すらとっていない。メロの目には、ライゴウの身体が、ひとまわり膨らんだようにも見える。
「そんな……半年間、ディアナ
【第2部24章】永久凍土の死闘 (4/8)【胆力】
【目次】
【膠着】←
「なに……いかに上位龍<エルダードラゴン>と言えど、おれの目のまえで空を飛ぼうなど愚の骨頂もいいところってことよッ!」
ぐんぐんと高度をあげていく龍態のクラウディアーナを見あげようともせず、ライゴウは吐き捨てるように言うと、大きく片足を振りあげる。
「墜とせ、『失落演武<フォーリンガン>』……んん?」
「……ええーい!」
とっさに、メロは両腕を振るう。片足立ち
【第2部24章】永久凍土の死闘 (3/8)【膠着】
【目次】
【助力】←
「もう! ディアナさまったらひどいのね……メロの口をふさいじゃうなんて!!」
『うふふふ。ごめんなさい、メロウ。でも、そなたはおしゃべりだから……わたくしたちの肩書きを仔細に説明しているひまは、なかったですわ』
ふたたび龍態となったクラウディアーナの背のうえで、『舌縫』の魔法<マギア>を解除されて口を利けるようになったメロが、頬を膨らませながら不満をこぼす。
龍
【第2部24章】永久凍土の死闘 (2/8)【助力】
【目次】
【難民】←
「シェシュ。わてらは、夢でも見ているのか……あれは、戦乙女たんも?」
「あたいに聞かないでよ、おまえさん。ヴァルキュリアには、6枚も翼はないよ。いや、待って……もしかしたら……!」
牧場主夫妻は、呆然と言葉を交わす。3対の輝く龍翼を広げた人間態のクラウディアーナは、ふたり組の襲撃者に相対する。無表情だったドヴェルグの顔が、初めて歪む。
「……龍皇女を確認した。蒸気
【第2部24章】永久凍土の死闘 (1/8)【難民】
【目次】
【第23章】←
──ズガガガッ!
凍原のくすんだ曇天、舞い散る雪のなか、アサルトライフルの重い銃声が響く。フルオート射撃をおこなったのは、地表のドヴェルグふたり組の片方。狙われたのは、上空を旋回するヒポグリフだ。
翼を大きく広げ、円を描くように旋回飛行しつつ銃弾を回避する鷲馬の背には、ひとりの戦乙女の姿がある。魔銀<ミスリル>の穂先を持つ槍を右手に握り、左手で乗騎の手綱をせわ
【第2部23章】世界騎士団 (4/4)【殿軍】
【目次】
【樹術】←
「グヌ……ッ」
アサイラは、うめく。弾道軌道を描きながら肉薄する対艦ミサイルを恐れたためではない。次元巡航艦を両脇から挟むようにまばゆい緑色の閃光がほとばしる。
5発の大型ミサイルは、『シルバーブレイン』の船体には着弾しなかった。右舷側から飛来した2発は、文字通り山のような体躯を持つ単眼巨人<サイクロプス>が、身を盾にして受け止めていた。
左舷側より迫った3発
【第2部23章】世界騎士団 (3/4)【樹術】
【目次】
【無茶】←
『なんとなればすなわち……間にあったかナ』
「ふむ、不要な心労をかけてしまったかね、ドク、そしてアサイラ……だが、我が友が、それもふたりも一世一代の戦場に臨んでいるのだ。我輩、是が非でも間にあわせるとも」
通信機から聞こえるドクター・ビッグバンの胸をなでおろすような声に、艦外の何者かが返事をする。アサイラは、次元巡航艦の進行方向左に人影を見つける。
淡い緑色の光
【第2部23章】世界騎士団 (2/4)【無茶】
【目次】
【発射】←
『次元世界<パラダイム>の境界近くの高々度は、重力の影響を受けにくくなる。そこに大がかりな戦闘機械を浮かべて、地上に対して一方的な攻撃をおこなう。旧セフィロト社では、高出力レーザーの使用が検討されていた……これが衛星兵器のコンセプトかナ』
『私が理解できる範囲だけだと、ぶっちゃけ手出しできないように聞こえるのだわ?』
ドクター・ビッグバンの講釈に対して、質疑を挟むリ