ゴディバ

最近は、『パラダイムシフター』って小説を書いています。

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  • 異世界転移流離譚パラダイムシフター

    数多の次元世界<パラダイム>に転移<シフト>して、青年は故郷を目指す──

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パラダイムシフター【About & Index】

◆本作について◆ 科学世界、魔法世界、原始世界……無数に存在する多種多様な次元世界を股にかけるマルチバース活劇小説。それが異世界転移流離譚パラダイムシフターだ。 エロス・ヴァイオレンス描写有。無双・チート展開無。 本作はTwitterをメインの活動場所として、日夜、最新エピソードを連載している。noteにおける本マガジンは、そのアーカイブに当たる。 最新エピソードを追いかけたい人はTwitterアカウントを、過去エピソードを読みたい人は本項のアーカイブ目次をチェックし

    • 東風よ、吹け

       時は文永11年(西暦1274年)、季節は晩秋。場所は、博多沖より壱岐へと向かう海上。時分は夜更け、丑三つ。  荒波に揉まれる小舟の上、寒風に吹かれながら、くつろいだ様子で酒を舐める優男と、力強く櫂を漕ぐ偉丈夫の姿があった。 「法眼様」 「その呼び名は止めくれ」  漕ぎ手の呼びかけに、優男は答えた。 「では、なんとお呼びすれば?」 「そうさなあ……」  優男は、杯を傾け、澄酒をあおる。激しく揺れる船上にありながら、杯の中に浮かぶ月影は一糸乱れず。 「太公望、諸

      • 山に虎、月に龍

        「そこにおわすは、我が兄弟子、リー・チャウではないか?」  マリファナの煙が満ちた非合法地下闘技場に、凛としたアジア人の声が響く。殺人リングの上で、いままさに対戦相手の命を刈り取ろうとしていた覆面の大男は、丸太のような腕の動きを止めた。  声の主──ボロ布のごとき道着に身を包んだ青年、ジンは、誰何した相手の返事を待たずして、歩を進めていく。  二人の黒人用心棒が、部外者を排除しようと、銃を、ナイフを、ジンに突きつける。刹那、バウンサーの身体が宙に浮き、コンクリートの床に

        • 『魅力的主人公』とは何か?

           前回は、「テーマ」について考えた。  今回は「主人公」……せっかくなので「魅力的な主人公」について考えてみたい。  そもそも主人公とは、何者か? どのような要件を満たせば、主人公と言えるのか?  物語のアイコン、感情移入の対象、視点の担い手、物語の駆動者、テーマの体現者、一貫性を持ち、他の登場人物と関わる……  いくらでも思いつくうえ、これらは努力目標に過ぎず、例外は山とある。そのうえ、要件を精密に満たしたからといって、「魅力的」になるとも限らない。  とりあえず

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        パラダイムシフター【About & Index】

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        • 異世界転移流離譚パラダイムシフター
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        記事

          『テーマ』とは何か?

           本記事のテーマは、「テーマとは何か?」である。  辞書をひもとけば、テーマとは以下のようにある。  ここで筆者が取り扱いたいのは、(1)のほうだ。小説や映画、マンガやアニメ……「物語」が持つテーマである。しかしながら、これが、なかなかの難物だ。 「主題。題目。また、中心課題」と言われて、「なるほど!そういうことか!!」と腑に落ちるだろうか? 筆者は、ならない。  人は「あの作品のテーマは高尚だ」などと賞賛する。「素晴らしいテーマの作品だった」などと感想を述べる。

          『テーマ』とは何か?

          異聞・石田【光】成

          これは、明智光秀が天海僧正へ至る物語である── 「──以上が、羽柴様よりの言伝に御座る」 「ふざけるな!!」 勝龍寺城、奥の間に怒号が響く。 天正10年(西暦1582年)、6月13日深夜。明智光秀が本能寺にて信長討ちを果たし、中国大返しで舞い戻った羽柴秀吉勢に大敗を喫した、俗に言う「三日天下」最後の夜である。 上座に明智光秀、左右に生き残りの側近たち、そして板の間に土下座するような格好で頭を伏せているのが羽柴方の使者。 可能ならば光秀は、己の命と引き替えに、一族と配

          異聞・石田【光】成

          軌道学園戦記ハイスクールガーディアン

          ──少年よ、宇宙を目指せ。 百年前、宇宙冒険家にして教育学者であったアーサー・クラーク博士の言葉が、学園コロニー建造の機運となった。少年少女は、母星を見下ろす衛星軌道上で勉学に励み、独立独歩の精神を育む。だが── 「ヒャッハー! 学校は解体だぁ!!」 地球圏辺境の不良学生が組織化、スペース・ヤクザやコスモ・テロリストとつながり、宇宙の治安は荒れていた。地球に近いベンウィック学園とて、例外ではない。 ある日、教師たちは全員、警備隊も引き連れ、迫り来る脅威から地球へと逃亡

          軌道学園戦記ハイスクールガーディアン

          【第□章】メビウスの輪を巡り (4/4)【終点】

          【目次】 【抵抗】← 「絶対に逃がすな! 仲間を呼ばれるぞッ!!」  かつて下水道だった地下通路のなかで、五人の人間と一体の異形がにらみあっている。そのうち、一人はルーク青年だ。  正面に立ちふさがるパンドラの怪物は、大人の身長の三倍ほどもあるイナゴ型の個体だ。通常は群れて行動するが、はぐれたのか周囲に仲間らしき姿は見あたらない。  ルークも含めた五人の男たちは、ライフル、サブマシンガン、ショットガン、リボルバー拳銃……それぞればらばらの銃器を、一斉にかまえる。

          【第□章】メビウスの輪を巡り (4/4)【終点】

          【第□章】メビウスの輪を巡り (3/4)【抵抗】

          【目次】 【螺旋】←  夜の空を一筋の輝きが駆けていく。虹色の尾を引く、パンドラの流星だ。この光景を見るたび、ルーク少年は自分が生死のループを巡っていることを思い出す。  これは、m回めだ。『前回』は、アトランティス中央研究所にたどりつくことしかできなかった。今回は、どうだろうか?  少年の夢想は、それ以上、続かなかった。パンドラの流星の様子が、『前回』と違う。虹色の尾が走り抜けた夜空に、白く細く長い軌跡が残っている。  ひっかき傷のように夜天に刻まれたラインから、

          【第□章】メビウスの輪を巡り (3/4)【抵抗】

          【第□章】メビウスの輪を巡り (2/4)【螺旋】

          【目次】 【起点】←  西暦20XX-1年、大西洋上に造られた巨大人工島、通称『アトランティス』。 「ルークくん! ひさしぶりではないかナ……なんとなればすなわち、健康そうでなによりだ!!」 「博士課程ぶりです。ウォーレス教授のほうこそ、お元気そうでなにより……」 「ミュフハハハ! 半数正解すれば採用を検討される試験で、全問正解しておきながら、ずいぶんと涼しい顔をしてくれるかナ。設問を用意したこのワタシのメンツも、少しは考えてくれ!!」 「これも、ウォーレス教授の

          【第□章】メビウスの輪を巡り (2/4)【螺旋】

          【第□章】メビウスの輪を巡り (1/4)【起点】

          【目次】 【第■章】←  西暦20XX年、大西洋上に造られた巨大人工島、通称『アトランティス』。  各国と国際企業群の出資で建造され、運営されている人口100万人ほどの海上都市は、もっとも新しい独立国家として国際的に認知されている。  温暖で安定した気候と物珍しさから観光地としての人気も高いが、その本質は、人類共通の利益を目的として設立された国際研究機関である。  海上航空に、一機の飛行機が着陸する。国際線ゲートから多くの観光客が歓談しつつ出てくるなか、キャリーケー

          【第□章】メビウスの輪を巡り (1/4)【起点】

          【第2部31章】落ちてくる、この空の下で (24/24)【望郷】

          【目次】 【縫合】← 「しっかりするのだわ、アサイラ! 気を強く持って……早く目を覚まして!!」 「うるさいですわ、『淫魔』ッ! 詠唱の邪魔ですから、治療魔術が使えないなら、黙っていなさい!!」 「──グヌッ」  黒髪の青年は、小さくうめく。かしましい声が耳元に響き、眠りが妨げられる。まぶたを薄く開くと、白と黒、それぞれのドレスにおおわれた、ふたりぶんの豊満な乳房が、ぼやけた視界に映し出される。 「ああ、意識が戻ったみたいだわ! だいじょうぶ、アサイラ!?」 「

          【第2部31章】落ちてくる、この空の下で (24/24)【望郷】

          【第2部31章】落ちてくる、この空の下で (23/24)【縫合】

          【目次】 【瘴気】← ──ザンッ!  アサイラの投擲した『龍剣』は、不可能物体を形作る石材製の骨組みの『遺跡』をくぐり抜け、その中央の地面に刀身深々と突き刺さる。 「あやとれ! 『星辰蒼尾<ソウル・ワイアード>』ッ!!」  漆黒の瘴気にかすみ、見通せぬ視界のなか、黒髪の青年は上空から右腕を伸ばす。目視による確認はできないが、己の意志が剣に通じた手応えはある。  その証拠に、闇の荒海のなかを、蒼銀の輝きが無数に走っていく。刀身の変じたワイヤーが、ぱっくりと開いた大地

          【第2部31章】落ちてくる、この空の下で (23/24)【縫合】

          【第2部31章】落ちてくる、この空の下で (22/24)【瘴気】

          【目次】 【裂傷】← (──アサイラ、聞こえている!? エマージェンシー! 緊急事態だわッ!!)  リーリスの声が、けたたましく脳裏に響き、アサイラは閉じかけたまぶたを開く。心身は完全にスリープモードに陥っていて、四肢の先から五臓六腑に至るまで気だるさに満ちている。 「どうした、リーリス……モーニングコールには、早すぎるんじゃないか? 少しは、ゆっくり休ませろ……」 (グリンッ! 寝ぼけている場合じゃないのだわ。早く対処しないと……ッ!!) 「こちとら連日の激務と

          【第2部31章】落ちてくる、この空の下で (22/24)【瘴気】

          【第2部31章】落ちてくる、この空の下で (21/24)【裂傷】

          【目次】 【崩怪】← 「グリン……アサイラは、間違いなくグラー帝を倒した。空から落ちてくる次元世界<パラダイム>も、押し返した。それなのに、なんで……今度は、グラトニアの地面が崩れているのだわ!?」 「問いただしたいのは、わたくしのほうですわ! 『淫魔』ッ!!」  リーリスとクラウディアーナは、悲鳴じみた叫び声をあげる。エルヴィーナは、片腕を失った肩を侮蔑するようにすくめてみせる。 「アは、アははハは……やはりドロボウ猫も白トカゲも、人並み程度の知性すら、持ちあわせ

          【第2部31章】落ちてくる、この空の下で (21/24)【裂傷】

          【第2部31章】落ちてくる、この空の下で (20/24)【崩怪】

          【目次】 【輝跡】← 「アはは! アははハはハッ!!」  眼孔から膿汁と肉片と毒蟲をまき散らしながら、『魔女』は狂ったように哄笑する。踊るような動きで空を舞いながら、指先で魔法文字<マギグラム>を描く。共鳴するがごとく、エルヴィーナのすぐそばに浮かぶ『天球儀』の輪が、淡い光を放つ。 「グリンッ! 龍皇女、左右両方から同時だわッ!!」  クラウディアーナの魔法<マギア>によって、三つ編みの女が持つ『天球儀』と左目の視界を直結させているリーリスが叫ぶ。ふたりの女を挟みこ

          【第2部31章】落ちてくる、この空の下で (20/24)【崩怪】