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異世界転移流離譚パラダイムシフター

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数多の次元世界<パラダイム>に転移<シフト>して、青年は故郷を目指す──
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2019年8月の記事一覧

【第1章】青年は、淫魔と出会う (27/31)【蒼星】

【第1章】青年は、淫魔と出会う (27/31)【蒼星】

【目次】

【問診】←

「とりあえず、まずは情報整理だわ」

 ナースコスの女は、右手の指のうえでペンをくるくると回転させる。

「年齢も、出身地も、いままでなにをしてきたのかもわからない。ただ、名前だけは覚えている。あと、シャワーを浴びたところを見ると、日常生活に支障はなさそう」

 女は双乳の狭間に、ペンをしまいこむ。青年は、女をにらみつける。

「俺は、帰るぞ」

「場所も、わからないのに

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【第1章】青年は、淫魔と出会う (26/31)【問診】

【第1章】青年は、淫魔と出会う (26/31)【問診】

【目次】

【入浴】←

「なにがなんだか、さっぱりわからないが……とりあえず、座ればいいのか」

 青年は、小型の丸テーブルを挟んで女と向かい合ういすに着席する。テーブルのうえには、ティーカップがふたつと、湯気をこぼすティーポットがひとつ置かれている。

 セクシーナースの格好をした女の手元には、手書きで『問診票』と書かれた紙が置かれている。

「はぁい。それじゃあ、これから問診のお時間だわ」

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【第1章】青年は、淫魔と出会う (25/31)【入浴】

【第1章】青年は、淫魔と出会う (25/31)【入浴】

【目次】

【起床】←

「……ここには、ほかに誰かいるのか?」

 青年は自問しつつ、フローリングの廊下の床に、ぺたぺた、と足音を響かせる。

 現在、自分の置かれている状況がさっぱりつかめない。なにより、第三者とばったりあって、裸体を見られるのは気恥ずかしい。

「というよりも、あきらかに不審者じゃないか……」

 つぶやきつつも、青年は短い廊下の突き当たりにたどりつく。そこが浴室だと、すぐに

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【第1章】青年は、淫魔と出会う (24/31)【起床】

【第1章】青年は、淫魔と出会う (24/31)【起床】

【目次】

【救出】←

「ここは……どこだ?」

 青年は、うめきながら目を覚ます。彼が横たわっていたのは、いささか奇妙な場所だった。

 まるで王侯貴族が使うような、豪奢な天蓋つきのベッドに青年は寝かされている。寝台が設置されているのは、円形の部屋の、その中央だ。

 弧を描く壁沿いにはひとつ、大きめのソファがあり、そのうえに中身の詰まった買い物袋が放置されている。

 部屋の形状と家具の配置

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【第1章】青年は、淫魔と出会う (23/31)【救出】

【第1章】青年は、淫魔と出会う (23/31)【救出】

【目次】

【学舎】←

「きみ、会ったことないよね。別の学年の子?」

「そういうあなたは、この学校の生徒、という認識でいいのかしら?」

「まるで、きみがこの学校の生徒じゃないみたいだね。もしかして、転校生?」

 素知らぬ顔で、『淫魔』は男子学生と会話を交わす。言葉が、通じる。

(ああ……他人とコミュニケーションが成立することが、こんなに素晴らしいだなんて思わなかったのだわ!)

 胸中で

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【第1章】青年は、淫魔と出会う (22/31)【学舎】

【第1章】青年は、淫魔と出会う (22/31)【学舎】

【目次】

【亀裂】←

「あいたぁ──」

『淫魔』は、顔面から地面に突っこむ。乾いた土の平らな地面だった。

「う……げほっ、げぼおっ!」

 激しくせきこみながら、異形の触手が残していった病的な体液を、のどの奥から吐き出す。呼吸を整えながら、顔をあげ、あらためて周囲の様子を見回す。

 先ほどまで自分がいた、魔性の蛸脚に蹂躙された空間でも、黄昏に照らされた路地裏の商店街でも、あるいはそれが破

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【第1章】青年は、淫魔と出会う (21/31)【亀裂】

【第1章】青年は、淫魔と出会う (21/31)【亀裂】

【目次】

【同化】←

「なんなのだわ、これ……」

 自分の頭上に、白い直線が伸びているのを『淫魔』は見る。はじめは、ワイヤーの類かと思った。

 違う。飛行機雲よりは近く、クモの巣よりは遠くにあるような、細いライン。

 視界を横切るように一本だけ走っていた極細の白線は、見る間に放射状へと広がっていく。『淫魔』は、破滅的な予兆を直感し、身構える。

──ぱりんッ。

 ガラスの割れるような音

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【第1章】青年は、淫魔と出会う (20/31)【同化】

【第1章】青年は、淫魔と出会う (20/31)【同化】

【目次】

【喝破】←

「さあ、次はどんな小細工を見せてくれるのかしら?」

 煽るような視線で一瞥しながら、『淫魔』は両手を広げて、群衆に語りかける。

 虚ろの住人たちは、互いに目配せを交わすと、とたんに統率を取り戻す。ふたたび、人垣が隙間のない円形を描く。

 身構える『淫魔』に対して、円陣の直径が狭まる。無数の人々が、異物を組み伏せようと、一斉に群がってくる。

「かえせええぇぇぇ──」

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【第1章】青年は、淫魔と出会う (19/31)【喝破】

【第1章】青年は、淫魔と出会う (19/31)【喝破】

【目次】

【市街】←

「あー……ごめんなさい、なのだわ。私、別に、敵対の意志はなくて……」

 ひきつった笑みを浮かべながら、『淫魔』は手のひらを住民のほうへと向ける。

 商店街の路地にいた住人が、ぞろぞろと『淫魔』のもとへと集まってくる。皆、一様に虚ろな視線を宙に漂わせ、ゾンビのごとき緩慢な足取りだった。

 気が付けば、円を描くように人垣が出来上がり、『淫魔』は完全に包囲される。

「と

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【第1章】青年は、淫魔と出会う (18/31)【市街】

【第1章】青年は、淫魔と出会う (18/31)【市街】

【目次】

【内界】←

『淫魔』が降り立ったのは、夕陽に低い角度から照らし出された商店街だった。

 主婦らしき多くの買い物客が談笑しながら行き来し、下校時間と重なったのかランドセルを背負った子供たちが駆け抜け、散歩の老人がそのなかに混じる。

 道路の向こう側にはバス通りがあり、企業の終業時間を前にして、多くの自動車が行き交っている。

「なんなのよ……これ……」

 黄昏時の和やかな人々の営

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【第1章】青年は、淫魔と出会う (17/31)【内界】

【第1章】青年は、淫魔と出会う (17/31)【内界】

【目次】

【本命】←

「さて、どうしたものだわ」

 中央に天蓋付きのベッドが置かれた、円形の部屋。家具は砕け、絨毯は裂け、床はえぐれ、壁にはいくつものひび割れが入っている。

 ぼろきれのようになったゴシックロリータドレスを身につける『淫魔』は、破壊の痕跡を苦々しく見つめ、寝台へと視線を移す。

「──……」

 シーツのうえには、熟睡するかのようにまぶたを閉じた青年が横たわっている。深く呼

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【第1章】青年は、淫魔と出会う (16/31)【本命】

【第1章】青年は、淫魔と出会う (16/31)【本命】

【目次】

【二波】←

「グラアアァァァ──ッ!!」

 ドラゴンは、葦の穂が揺れるほどの勢いで息を吸ったかと思うと、その口から灼熱の炎を放射する。

 紅蓮の火焔は、葦原を焼き払いながら、放射状に広がりつつ漆黒の獣へと迫る。

「前後左右に逃げ場はないのだわ! さあ──どうする!?」

 目を見開いた『淫魔』は、戦局を凝視する。極大の火炎放射をまえに、無貌の怪物が回避行動をとる気配はない。その

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【第1章】青年は、淫魔と出会う (15/31)【二波】

【第1章】青年は、淫魔と出会う (15/31)【二波】

【目次】

【決行】←

「行けッ!」

 ドラゴンの頭上で、『淫魔』は叫ぶ。

 精神を掌握されたワイバーンの群れは、『淫魔』の意志に応え、漆黒の獣を駆り立てるべく、地上に向かって急降下をかける。

「ギャアッ! ギャアッ! グギャアアァー!!」

 耳をつんざく叫び声を吠え立てながら、ワイバーンは葦原をにらみつける。だが、その勢いは、すぐにそがれる。

「……いない!?」

 龍の背の上から身

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【第1章】青年は、淫魔と出会う (14/31)【決行】

【第1章】青年は、淫魔と出会う (14/31)【決行】

【目次】

【追跡】←

「行きなさい……ッ!」

 精神のリンクを通じて、『淫魔』はオークの群れにゴーサインを送る。エルフの集落に到着する前、湿地帯の中央で決着をつける。

「ヴルヒアァァ!!」

 豚頭のリーダーが、雄叫びをあげ、略奪品と思しき錆びた鉄の大剣を振りあげる。頭目の咆哮を合図に、群れのオークたちが一斉に脚の速度を上げる。

 先行する無貌の怪物は、周囲の喧噪などお構いなしに疾走を続

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