天丼てんやの漬物を製造会社から箱買いしていた話
初回に続いて飛び道具的なnoteをアップすることに対し、武士道に反するのでは…などと考えたのだけれども。初回の記事を見てフォローしてくださった心優しい十数名の方のためにも「書かねばならぬ」と思い筆を執ることにした。
※この記事は敢えて、「だ・である調」で執筆することにする
まえがき
天丼てんやとは、皆さんご存じのとおり出来立ての天丼を安価にいただける最高のレストランチェーンだ。ワンコインで揚げたて、しかもセットによって海老も入っている。
エビデンス…と思ってGoogle先生にお伺いしたところ、関東地方を中心として展開をしていた。なので皆さんご存じでないかもしれない。根拠を示すことはいつでも大切だ。
御多分に洩れず私もてんやが大好きだ。最近はめっきりと足が遠のいてしまったけれど、それは立地の問題だと考える。近くにあったら週1くらいで暖簾をくぐるくらいには大好きなのだと、声を高らかに言いたい。
そんな私とてんやの、てんやわんや…するかどうかはわからない話を書いていきたいと思う。
てんやのしば漬けとの出会い
そもそもの前提として、私は漬物が大好きなのだ。ほどよい塩分とパリパリとした歯ごたえ。無限に食べられる!なんならば、お酢をかけてそれをおかずにもできるし間食ともする。「きゅうりのキューちゃん」のようなモノを自作するくらいには、きゅうりと漬物が大好きなのだ。
閑話休題。
当時の私はフリーターをしつつ、月連載の漫画のアシスタントをしていた。並行して、細々とゲームのUIデザインの手伝いなどをしていた。お財布の中身が心もとないながらも、何か…何かカロリーを…と駅をさまよっていた。
――そして、天丼てんやと出会った。
てんやの漬物の美味しさたるや
そこからは話が早い。ワンコインでいただける天丼の美味しさに驚くとともにテーブルに備え付けられている漬物、しば漬けと邂逅するのだった。
漬物が好きといっても、生きとし生ける漬物すべてを愛する度量は私にはない。きゅうりの漬物は特に、だ。パリパリでないと嫌なのだ!ワガママボディだった当時のふくよかな私は、舌までもワガママに育っていた。
てんやの漬物は最高だった。メインである天丼を邪魔しない食感、ほどよい酸味、塩味、何一つ非の打ち所がない最高の漬物だった。ワインで例えるとマリアージュである。ときには主人公にもなり得る名脇役の存在感を放っていた。そのような最高の漬物を天丼の上へ贅沢に潤沢に添え、週に2回ほどはてんやで天丼を食していた。米粒一つ残らない丼と空の漬物入れを背に店を出る姿はさながら『Get Wild退勤』のようだったのではないだろうか。
家で食べたい
当時の私はジョブチェンジをしていた。どこの馬の骨とも知れない、ゲーム開発未経験の知識も何もないやつを正社員で雇うという、正気の沙汰ではないゲーム開発会社があったのだ。その会社は有限会社エムツーといって、「どうかしてるぜ」的な移植をしている事を後に知った。私は今でも大変にエムツーに恩を感じているのだけれど――、という話はまた別の記事で書く予定なので楽しみにしておいてほしい。
ちなみに、2020年9月、有限会社エムツーが念願のハード参入を果たすことになった!
閑話休題。その2。
引越しとともに、一人暮らし生活が再び始まった。そう、つまり、冷蔵庫が大きい。料理好きの私は、常備菜でこの大きな箱を埋めることを夢に描いていた。
――そして、天丼てんやと出会った。
「よう、遅かったじゃないか。」といわんばかりに、天丼てんや某店は新天地で私を待っていた。涙を呑んで別れたのに、次の場面転換で出会ってしまうお決まりのやつだ。ハンター試験中トリックタワーの、「せーの!」で床を回転させ、降りた先で4人集まるというアレである。cv.は大塚明夫さんか大塚芳忠さん、藤原啓治さんのようなダンディなおじさまでお願いしたい。
社会人として十分なお賃金は頂戴していたが、私の財布の中は寂しがり屋さんだった。だって夜風が冷たいんだもの――ではなく、引っ越したばかりなので色々と心もとなかった。外食は控えるしかない。そうだ、あのてんやのピンクの漬物を家で食べればよいのだ。いつしか名脇役はすっかりと主人公になっていた。漬物を食べたいがために、てんやに行っていたのではないか?真実はいつもひとつなのだ。
製造会社特定
オタクは俊敏だ。まずあの最高のきゅうりの漬物がなんという通称なのかを調べた。一般的にいえば、しば漬けだ。私はAND検索・OR検索・NOT検索などの検索知識を駆使し、半日ほどで製造会社と製品名を特定した。
そして、一通のメールを送った。
お問い合わせフォームだったから原文は覚えていないが、少し嘘をついた。祖母がこの漬物を気に入っていて…という、ありきたり且つ顔も覚えていない祖母を主語にすり替えた。ごめんなさい、担当者さん。
担当してくださった販売企画課のKさんはとても親切だった。商品化しているのは業務用の1㎏の大きな物のみということ・他に送料と代引き手数料がかかるということ・店舗に直接来る場合は商品代だけで良いことを懇切丁寧に教えてくれた。一個人へ数袋の販売のために耳を傾けてくれることに感謝した。いつか上場したのならば、株主になりたいと思う会社のひとつだ。
送料と代引き手数料を入れると、商品代金の3倍になる。ううむ、と私は顎に手を置いたあと、送料と代引き手数料を支払うのですぐに送ってほしい!という返信を迷わず書いた。財布の中が寂しがり屋さんな事はもう頭の片隅から消えていた。しば漬が食べたい!真実はいつもひとつだけれど、正解はひとつ!じゃない!!のだ。
このあとの話は特筆すべき点もないので割愛する。1袋の注文が3袋に増えたり、消費期限と戦ったり冷蔵庫で文字通り『塩漬け』になっていたりしただけだ。そして、一人では消費しきれない(してはいけない)と学び、ここ3年程は購入をしていない。
おわりに
以上が、天丼てんやの漬物を製造会社から箱買いしていた話 である。この話から得られる教訓は――と書くのはかっこつけすぎなので控えるけれども、どこからどう大口顧客に繋がるかはわからない、ということだ。上場したら株を買うかもしれないし定期購入をするかもしれない。実際、今でも見かけたら手に取ってしまう。たった一通のメール・一袋の購入をきっかけに、会社自体が好きになってしまった。ファンマーケティング大成功だ。
あとがき
今考えると、一個人が購入できる根拠などどこにもないのに何か自信があった。私はこの『何の根拠もないけれど湧き出る直感と自信』で生きているんではないかと、ここ数年で感じている。持たざるものは工夫をすれば多彩なプレイも可能なのだ。
ちなみに普段の私は敬意を込めて「お漬物」と口に出すのだけれど、文章的に漬物表記にした。
(ここから早口で一息に。)
そういえば最近行った時は、緑のきゅうりの漬物に変わっていた。緑色はいんげん・ししとうで賄えるではないか。華を添えるピンクの方がよい。しかも味も食感もかなり違っていた。数ヶ月ごとに替えるであるとか、大人の事情的な彼や此れやがあるのかもしれない。だけれども、私はあのしば漬と天丼てんやの合わせ技が大好きなのだ。ワガママボディではなくなったが、口は相変わらず達者にワガママに育っている。惚れた弱みとはまさにこの事。責任者に問いただす必要がある。責任者はどこか。
※リスペクト : 森見登美彦 著『四畳半神話大系』角川書店 2008年.
追記
この記事をFacebookに投稿した時、「明日食べるわ。」と宣言して有言実行した高校の同級生がいたので追記したい。
彼は倉田直樹くんと言って、同級生ながら実はたぶん一言二言しか話したことがない。高校時代なんとなく目立っていたような気はしたのだけれど、ずいぶんと近い業界に居た時代もあったようで驚いた。
高校はろくな記憶が1年生の時しかないし、厨二病すぎたのにFacebookで繋がってくれて本当に嬉しいなぁという思いがある。そして有言実行ってかっこいいな!そりゃ事業を立ち上げる男だよ!と感じました。Thanks!!
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