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苦境 法科大学院【古新聞を読む】

「苦境 法科大学院」
 これは讀賣新聞の朝刊で16年5月の8日から10日の3日間で、上中下の短期集中連載だった。
 本記事で日本の法科大学院の状況が描かれている。
 上では04年に開学し、16年に閉院した「大宮法科大学院」が法人側と学生側から取り上げられた。

 JR大宮駅にほど近い地上19階建てビルにある大宮法科大学院は15年9月、修了生2人を送出し、16年文科省から廃止認可を賜った。研究室の名札が取り外され、図書館からは法律や判例の書物が古書店に売られ、模擬法廷は系列大に譲渡された。
 運営法人によると、05年に新築したビルの評価額は土地を含め約34億円。最後の学長柏木俊彦は「ビルの今後は未定」と話す。

 多様な人材を求める司法制度改革の下、法学未修者向けに、夜間科を設置した。しかし1期修了生のうち43人が受験した、07年度司法試験合格者は6人で14%、その後も合格率2%は上回らなかった。

 04年度に都内法科院に入学した40代の元国家公務員の女性はし、司法試験の受験回数の上限に当たる3回失敗。別の法科院に再入院し、14年度に司法試験に合格した。「総額1千万円以上かかった」、やっと合格したら「社会人経験より試験の成績と若さが優先され、履歴書を50枚くらい書いた」という。「入学すれば合格できるという触れ込みだった…、訴訟を起こしたいぐらい」だという。
 法科院が一斉開院した当時、教授の争奪戦が発生したが、今は就活をする教員もいる。関東の某私大の60代の女性教授は、04年度に開院した私立法科院に引き抜かれた。しかし16年度から募集を停止。教授は「廃院後、法学部に所属したいが、確約はない。ポストがなければどうにもならない」と語り、「学生も教員も振り回された12年間だった」と話した。

読売新聞2016年

中では法科院と予備試験の関係が描かれている。

 法科院は04年度に一斉開院したが、経済的な理由で入院できない人のために、予備試験が11年導入された。
 ところが予備試験には法曹への”近道”として優秀な学生が集中。15年の司法試験合格者のうち予備試験派の合格率は62%で、一橋大法科院の56%を上回った。東大法科院では在学中に予備試を受験、後に司法試験に合格し、中退した学生が14年までに60人を超える。
 法科院は従来の司法試験の反省を背景に開院したが、司法試験合格率は2割台。人気低迷で「優秀層」を確保しにくくなった院は、司法試験対策を重視せざるを得ない。
 
 問題はそれだけではない。司法試験の問題を作成する明治大法科院の青柳幸一元教授(68)が女子学生に問題を漏らし、国家公務員の法守秘義務違反で有罪が確定。

青柳幸一
(元 明治大法科院教授)

 「認めたら略式なんだけど、どうする?」
 東京地検では15年、法科院出の新任女性検事が、否認する容疑者にこう持ち掛けたことが発覚。取調実習のやり直しを命じられたが、当該検事は反発、あっさり辞職した。
 また雰囲気が悪くなるのが嫌だとの理由で、容疑者の言い分を聞くだけの検事もいるという。
 司法修習は法科院開院に伴い1年間に短縮されたが、加藤新太郎(中央大法科院教授)は「法科院乱立で教育の質もばらつき、力の足りない法曹を送り出したのは事実」とした上で、「院の淘汰が進む今、教育体制を作り直す必要がある」と指摘した。。

 下は司法試験合格を目標に舵を切った愛知大法科院と、それについて外人の東大院教授の意見が取り上げられている。

 私立愛大法科院は「少人数の丁寧な指導」を謳い、04年度に開院した。募集停止が相次ぐ中で15年度は受験者22人中8人が司法試験に合格し、合格率は全国6位の約36%に上った。
 伊藤博文院長は「答案を書く訓練など合格に必要な指導を徹底した」と強調する。
 ために同院は「予備校のようだ」と批判され、07年度下半期の同院評価は「不適合」を受けた。後に改善はしたものの、「合格最優先」の方針は固持した。
 ただ40人だった定員を15年度には20人に削減したが、入学者は12人で定員割れした。同院長は「志願者は入学先を知名度で選ぶ傾向にある」と状況を分析する。法科院協会は14年度から遅遅、PRを始めた。
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 ダニエル・H・フット東大院教授によると、米国司法試験は週ごとに行われ、受験者の7~8割が合格する。日本の様に法学部がなく、各分野の人材がロースクールで3か月ほど勉強すると、合格できる仕組みだ。
 しかし米国の様な訴訟社会になっていない日本では法科院開院後、弁護士の就職難に陥り、政府は司法試験合格者の目標を「年1500人以上」と半減させた。
 文科省は院の統廃合を促し、中教審も2015年、法科院の総定員数を約200人削り、2500人程度にとする改革をした。
 だがフット教授は「司法試験合格率アップのために定員を減らすなど本末転倒だ」と批判した。






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