マガジンのカバー画像

ここにしかない旅

6
2010年の夏の終わり。大学生だった私の、少し変わった東北一人旅。
運営しているクリエイター

#宮城県

【東北ひとり旅】猫のように生きたい

【東北ひとり旅】猫のように生きたい

0. エピローグ的なやつ

1. 福島に現れた桃乞食のはなし

2.[教訓]素人が"田舎へ泊まろう"をやったらめちゃ怒られる

3.蔵王で出逢った先生

4.一生忘れられない夜

* * *

予定より少し遅く起きた。カーテンの隙間が眩しい。
ふだんお酒を全然飲まない私は、昨日の大宴会の後を少し引きずっていた。
でも今日の行動は時間が決まっている。なぜなら、船に乗りたいからだ。何便もあるわけではな

もっとみる
【東北ひとり旅】優しさとユーモアを抱いて

【東北ひとり旅】優しさとユーモアを抱いて

0. エピローグ的なやつ

1. 福島に現れた桃乞食のはなし

2.[教訓]素人が"田舎へ泊まろう"をやったらめちゃ怒られる

3.蔵王で出逢った先生

* * *

明日は猫がたくさんいる田代島に行くと決めていた。今晩は石巻で宿を探す。
昨日おばあちゃんに怒られたダメージを引きずっていた私は、もう日暮れだし、漫画喫茶に泊まろうと決めていた。
夏の終わりの、生ぬるい風が優しい。
赤紫に染まった港町

もっとみる
【東北ひとり旅】蔵王で知らない人と旅したら、東横イン宿泊券を貰ったの巻

【東北ひとり旅】蔵王で知らない人と旅したら、東横イン宿泊券を貰ったの巻

0. エピローグ的なやつ

1. 福島に現れた桃乞食のはなし

2.[教訓]素人が"田舎へ泊まろう"をやったらめちゃ怒られる

* * *

白石蔵王駅のバス停で、私はぼーっとしていた。
その理由は三つあった。
一つは、やりたかった一番のこと、"田舎へ泊まろう"を初日でやり遂げた達成感から。
二つめは、予想外のお叱りに疲れてしまったから。
三つめは、おばあちゃんが恐くて、バスの出発時間より一時間も

もっとみる
【東北ひとり旅】素人がひとりで"田舎に泊まろう"をやったら

【東北ひとり旅】素人がひとりで"田舎に泊まろう"をやったら

0. エピローグ的なやつ

1. 福島に現れた桃乞食のはなし

* * *

美味しい桃と優しいおじちゃんに別れを告げ、福島を出た。
向かうは宮城、明日登りたい蔵王の足元の街。
宿を探すのだ。
まず私の作戦を教えよう。
何か市民で開催されている市場的なイベントなり、談笑している井戸端会議に、何気なく近づいて混ざり、旅をしているんです〜という流れで、今晩泊まる所を探してるんです〜と言って、その中から

もっとみる

【東北ひとり旅】 ま、松島が見える・・・

大学の夏休み真っ只中の、暑い暑い8月。
Tシャツ短パン姿のわたしは、リュックを背負い、汗だらだらで外にいた。

電話がかかってきた。母からだった。

嫌な予感がする。

「もしもし・・・」
『はい。お母さんですけど。』

そっちからかけてきておいて、しかも携帯電話に名前が出ているのに、わかりきったことを言う。
やはり少し怒っているようだ。
『今どこにいますか。』

「今・・・は、ねぇ・・・ま、松島

もっとみる