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【東北ひとり旅】猫のように生きたい

0. エピローグ的なやつ

1. 福島に現れた桃乞食のはなし

2.[教訓]素人が"田舎へ泊まろう"をやったらめちゃ怒られる

3.蔵王で出逢った先生

4.一生忘れられない夜

* * *

予定より少し遅く起きた。カーテンの隙間が眩しい。
ふだんお酒を全然飲まない私は、昨日の大宴会の後を少し引きずっていた。
でも今日の行動は時間が決まっている。なぜなら、船に乗りたいからだ。何便もあるわけではない。
宿のおじさんおばさんに挨拶をし、笑顔で見送られながら船乗り場を目指す。
目的地は「田代島」。
島民よりも猫の方が多い島、と紹介されているのをなにかで見たその時から、ずっと来てみたかった。

意外と大きな船に乗り込む。吐いてしまわないか少し心配だったものの、いざ出港するとすっかり二日酔いの心配は無用だった。
その景色の美しさと、これから会える可愛い姿にわくわくして泳いで渡れるんじゃないかというほどテンションがあがっていた。

一時間ほど揺られ、島の岸壁が見えてきた。
船から島へ、ぽんっと着地する。
「おお〜」
早速ちらほら猫の姿が見える。こっちを見ている子もいれば、おかまいなしに寝ている子も。
意外にも坂道が多く少し躊躇したが、のぼっていくごとに猫が現れ、気づくと次の猫見たさにルンルンで登ってしまえる魔力をかけられていた。

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近づいても逃げていくことはなく、人慣れしている。
猫ってなんでこんなに愛らしいんだろう。
おねむの時間なのか、たいていが擦り寄ってくることもなくぺたんこになっている。
島民が使っているであろう青い籠に、片足を入れて寝転がっている子もいた。

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遠慮がちに少し距離をあけて隣に座ってみる。
ちらっとこっちを見たものの、またぱたっと倒れた。
しっぽがゆらゆらと揺れる。
その姿を見て、私も大きく倒れ込んだ。
青い空と海が見える。

「いいよね。自由って。」
お昼ごはんを食べるのも忘れて、ひたすらぼーっとした。
平和そのものだった。

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大人を見ていると、こんな自由な日ってほぼないんだと思う。
私は就活に失敗していた。
日本各地で愛されている地元の美味しいものを発掘し、日本全国に届ける仕事がしたかった。
食品メーカーを目指したが、最終まで行っても落とされた。
就職氷河期の文系には狭い枠だった。それでも受かる人は受かるのだから、向いていなかったのかもしれない。
このままでいいのかなあ。
やりたいことでもないことに、追われて生き続けるのかなあ。
…猫のように生きられたらいいのに。

最終便の時間が近づく。このまま寝転がっていたい。
なのに、気づけば私は坂を下っていた。
猫のように生きたいと思うのに、猫のようには生きられない。
猫のように生きようと思えば生きられるのに、その選択をする勇気がない。
そんな自分が情けなくて、脇目も振らずに船乗り場まで駆け下りた。
人間だからしょうがないんだと言い訳をしながら、船に乗り込む。
ただ、次にこの島に来る時、猫を羨んでしまうような生き方はしていないことを願った。

* * *

ゼミもやめて旅に出て、自由だと思っていたのに、結局どこか縛られていることに気がついたあの時。
入社式のその時まで躊躇いながらも、結局社会人になってとにかく奨学金返済と結婚資金のために働いてきたその後。
叶わなかった夢とキャリアが少し近づいた矢先、末期癌ですべてがリセットされた。
今はまた、大学生の頃のように、自由なようで自由になれないもどかしさを抱えている。
あの頃の私と今の私が決定的に違うところは、"人生の終わり"を意識したこと。
だからもう、「生きたいように生きられなくても、人間だからしょうがないんだよ」とは言いたくないんだ。
猫になるまで、もう少し。


次回、こここここれが噂の冷麺か!
です。お楽しみに…

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野口 桃花
人生第二章を歩むための、なにか"きっかけ"を与えていただけたら嬉しいです!あなたの仕事や好きなことを教えてください。使い道は報告させていただきます。(超絶ぽんこつなので遅くなっても許してください)