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独身女が結婚指輪を買う話

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末期がん宣告されたアラサーOLが、破談を乗り越え、自分で自分の結婚指輪を買ってトラウマから脱する、哀れでふざけたストーリー。おそらく、もたもたはがゆいプロセスになるかと思いますが…
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桃花、結婚指輪を買う

桃花、結婚指輪を買う

メリークリスマス。
あちこちでプロポーズされてるのかなぁ。
指輪に目を輝かせてるかなぁ。
一緒に買いに行くパターンあるか。

死ぬまでにやりたかったこと、欲しかったものっていくつかしかないんだけど、そのひとつが結婚指輪(婚約指輪)なのです。
ありきたりな女子の夢です。

「ゼクシィ買いに行こうね」「退院したら、指輪選びに行こうね」との彼の言葉に楽しくなっちゃった分、二年も経つのに未だにその夢の消失

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プロポーズ

プロポーズ

①桃花、結婚指輪を買う

②プロポーズ

スマホを片手に欲しい指輪を検索していると、頭の中に過去の自分の映像が流れてくる。
病院の大部屋。カーテンで仕切られたわずかな一角。陽も差し込まないそのベッドの上で、寝転がりながら同じようにネットサーフィンをする私。

ステージ4の癌の告知をされてから、一週間くらいが経っていた。
7月に入ったばかりのその日は、よく晴れたいい天気だった。
「外は暑いよー。夏が

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すべて終わった日1

すべて終わった日1

②プロポーズ

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③すべて終わった日1

地下鉄から地上へと続く階段の先の光が、眩しくて憎たらしい。
エレベーターを見つけることがこんなにも大変だなんて、知らなかった。
こうも分かりづらいものかね、そう文句を垂れながら駅をさまよう。
やっとの思いで出てきた二ヶ月ぶりの池袋の街は、何も変わっていなかった。
ホットペッパービューティーを開き、お店の場所を確認する。
「えっと、こっち

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すべて終わった日2

すべて終わった日2

③すべて終わった日1

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④すべて終わった日2

そわそわが止まらない。
店員さんに名前を告げて、着席する。
少ししてついに彼のお母さんが現れた。
「はじめまして!」
はっと立ち上がり、深々と頭を下げて、はにかんだ。つもり。緊張でうまく笑えていたかは分からない。
入院の見舞金をいただいていたお礼もあり、菓子折りを渡す。
彼のお母さんは、「私もあるの」と和柄の菓子折りを贈ってくれた。

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それぞれの味方

それぞれの味方

④すべて終わった日2

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⑤それぞれの味方

マンションの階段の下で泣き崩れた私は、友人に電話をしていた。
「もっしもっし、うっうっ、ゆうっ、ちゃんっ。うっうっ」しゃくりながら話す私に驚いた彼女は「えっ?!どうした」と言ったあと、いつもよりずっと優しい声で「どうした〜」ともう一度言った。
「うん…うん……」ととても丁寧に相槌を打ってくれる。

「はぁぁぁああああ?!?!」
ブチギレ

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三年生の私が伝えられること

三年生の私が伝えられること

結婚指輪を買うまでのプロセスです。
こちらにまとめています。
https://note.com/4848momo/m/m1496e472cace
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がんになって初めて、病気にも「進級」という考え方があることを知りました。
「二年生になりました」
「一年検診クリア!無事進級できました」
そんなツイートやブログも、この界隈ではちらほら見かけます。
告知を受けた当時は、この進級がとても眩しく思

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