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「衆院選2024」------投票に出かけた小雨混じりの日曜日。

 選挙は、遠い。

 もちろん、システム的には、国民主権であるのだから、選挙があって、投票することで意志を示すのは大事なことだし、自分の生活に直接関わってくるのは、わかっているが、テレビなどで見ても、自分と関係あることのように思えないことも少なくない。


選挙活動

第50回衆議院選挙が2024年10月15日公示―27日投開票の日程で実施されます。

(『日本経済新聞』より)

 公示日から、候補者たちの選挙活動が始まって、投票日の前日まで、それが続く。

 国のこれからを決める大事な選挙のはずなのに、2週間足らずの日程で、誰に投票するか、どの政党に入れるかを決めなくてはいけない。

 家の固定電話に、テープでの電話があった。どうしても伝えたいことがありまして、という言葉から始まっていて、その候補者の名前も、もちろん言っていたと思うけれど、そんなに伝えたいことがあるなら、直接、電話で話せばいいのに、などと思ってしまった。

 家のポストには、妻の名前で、もしくは私の名前で、会ったこともない政治家の候補者からのハガキが届く。どこから住所を知ったのだろう、とスパイ探しのような気持ちになり、全く投票する気のない候補者からのハガキはすぐに捨ててしまう。

 家の外では、自分の名前を連呼する選挙カーが通り過ぎていく。出かけるときに、やや遠くを選挙カーが走っていて、ご声援ありがとうございます、といった声を響かせている。電話での活動はテープになっても、選挙カーでの呼びかけは、本人ではない時でも、今はあまり言われなくなったけれど、ウグイス嬢と言われる女性の声が聞こえてくる。
 そういえば、どうして、本人以外は、女性の声で名前を連呼するのだろうか。

 コンビニに行った時、そのそばの道路で、これから再び、選挙カーに乗って、名前を連呼しようとするスタッフが、いったんクルマから降りていたが、なんだか少し遠くから見ても、疲れが出ているようだった。候補者の名前をたっぷりと織り込んだ楽曲がテープから小さい音で流れ続けていた。

 その名前は、選挙のたびに聞いていたから、覚えている。どんど焼きなど、何かの行事があると、そうした政治家は何人もやってきて、名前が大きく、顔写真も入っているような名刺を渡そうとするから、受け取らないようにしている。もらっても、投票しないからだ。

 街頭演説のようなものも、もともと、外出が少なく、駅のような人が集まる場所に行かないから、ほとんど遭遇することもなかった。投票前日の土曜日に、駅で誰かが大きな声で、何かを話しているのは聞いた。そのスタッフがビラかチラシを渡そうとしてきたけれど、少し頭を下げて、受け取らなかった。

 どこかの場所へ行けば、もしかしたら、もっと熱い言葉や、目に見えるような熱気が感じられるのかもしれないが、なんとなく淡々と、選挙活動期間が過ぎていったようだった。

 ずっと選挙は遠かった。

 いつもよりも警戒が厳しいことも、なんとなく熱気から遠く感じた原因かもしれない。

政治家の都合

 今回は、自民党の「裏金問題」が明らかになったこともあり、政権の支持率は下がってきた。

 それは当然だとも思うのだけど、そうなると、首相を新しくする。なぜかわからないのだけど、そのときは「ご祝儀」などと称されて支持率が上がるらしい。それが続くうちに、国会を解散して、再び選挙を行なえば、選挙で勝てる。

 それが、「戦略」らしく、それは2021年も同じような方法がとられて、思惑通り、政権与党は選挙で勝った。

 だから、2024年の今回も同じことをするのは、定石なのだろうと思うけれど、それは政治家の都合だった。

 そして、選挙に勝ったら、裏金問題も、何もなかったかのように「みそぎはすんだ」という言葉をメディアで聞くことになるのだろうと思っていた。

 どうして、こんなに政治家の思惑通りに世界が進んでしまうのだろうと想像すると、なんだか嫌な気持ちになった。

 選挙期間中に、さらに、お金の問題が出てきた。
 ひどい話だと思った。

投票する人を決めるまで

 選挙は遠いとしても、自分が投票に行くならば、誰に入れるか、どこに投票するかを決めなくてはいけない。

 だから、政見放送などを見て、考える。

 さらに選挙公報を読んで、いろいろと検討する。それは、検討というような厳密さに欠けるのかもしれないけれど、まず小選挙区制で、今回は、誰に入れるかを決めるのは、それほど人数がいないのが楽だった。都知事選のように何十人ものデータを見なくていいから、よかった。

 ただ、この候補者は素晴らしいから、投票したい、というのではなく、正直いえば、誰にも投票したくない。

 だけど、それは不健康であっても、消去法で選ぶ。よりひどくない、と思える人にする。

 政党に関しては、現在の政権与党の責任と、「失われた30年」との関係は強いと思われることもあるし、この10年で、世の中は、どんどんひどくなっていると思うので、それは個人の責任だけではないとも感じているので、それ以外の党の中で選ぶ。
「この党がいい!」とは、やはり思えないので、小選挙区制と同様に、消去法で選ぶ。

 あとは、最高裁の国民審査がある。

 そこに挙げられている裁判官の判決に関わった裁判を、選挙公報を見た範囲で、その中の一つの判決だけが納得いかなかった。だから、その判決に関わった裁判官の一人だけにバツをつけるのを決めた。

 これくらいの準備だから、本当に大したことがないのだけど、いつも、こうして、投票する人や政党を決めている。

 あとは、テレビなどでも、党首討論というには、あまりにも短い時間での話し合いもあり、それも見たけれど、ほとんど参考にならなかった。

投票日当日

 選挙日の当日、10月27日は、当たり前だけど静かだった。

 いつも同じ日曜日で、昼食を食べてから、妻は昼寝をして、起きてから少し経って、午後3時頃に、妻と一緒に選挙に出かける。

 雨が降り始めていた。

 郵便局のバイクは今日も走っている。

 電動だから、静かで、日曜日も走っている、と妻は驚き、速達とかもあるから、という話から、郵便料金が大幅に上がったことを話し、それも政治と関係あるはずと思い出した。

 それから歩いて、投票所がある妻の母校である小学校へ向かう。

 人通りも少ない。

 静かに現地に近づく。

 警備の人が掲げている駐車禁止の立て看には「選挙管理委員会」の文字も入っている。

 小学校の入り口には、警備員と思われる男性が立っている。

 以前、こういう人がいたのかを覚えていない。

 投票所に入ると、流れ作業のように、自分が動いて、気がついたら、3枚の紙を投票して、あっという間に終わった。

 妻と、一緒に小学校を出て、お疲れさまという言葉をかけて、あとは、その近くのケーキ屋さんと、スーパーに寄って、家に帰ったら、午後4時を過ぎていた。

 自分の投票と、国政がつながっているような手応えは、いつものようになくて、あっさりと投票は終わった印象だった。

選挙報道

 夜は、テレビ局は、どこも選挙特番が始まっていた。

 その熱気は高い。

 やはり、投票の前に、こうした番組をやってほしかった。投票行動を決めるための参考になるのは間違いなかった。

 色々な法律的なことがあるのかもしれないけれど、そのことはずっと言われているのだから、少しでも変えていけばいいのにとは思う。

 選挙への注目をあげて、投票率を上げるのであれば、投票前に、選挙に関する番組が増えることも必要だと思う。
 さらには、どの候補者を支持するか、なぜ支持するのか、というような人同士が討論するような場面もあれば、おそらく、投票行動を考えるときに、より有意義な情報になるはずだ。

 本当に、そういうことができないのだろうか。法律的に無理であれば、その変更も検討すればいいのではないだろうか。

 泉氏は、かねてテレビ出演の際は言動に制限がかかることを明かしている。この実態について「濃淡はあれ、ほぼ全てのテレビ局から言われました。一般に思われている以上に、日本のテレビ局は腐っています・・・」とポツリ。

(『東スポweb』より)

 これは、この泉氏の個人的な見方かもしれないけれど、選挙に関する情報のあり方を、投票前に多く流すといった方向に変えるような動きが今後もなければ、この泉氏の見方は本当だったのかと、思ってしまう時が来るのかもしれない。

 
 権力を持つ人は、誰かが見ていなければ、気がつかないうちに、悪いことと思わず、自分に都合のいいことをしてしまう。

 だから、報道機関の大事な役割は権力監視、というのはやっぱり本当だと思うし、報道機関が、その役割をきちんと担うのも難しいことだとも感じる。

 でも、その権力監視、という役割を果たさないと、あっという間に、気がついたら、権力近辺は、報道機関も含めて腐敗してしまうのも、本当なのだろう。ただ、腐敗というものは、当事者は気がつけないと思う。

投票率

 夜中にかけて、選挙前にはなかった熱量の選挙特番があり、自民党が議席を減らしたことが、いろいろと分析されていた。

 自民党が191、立憲民主党が148、日本維新の会が38、国民民主党が28、公明党が24、れいわ新選組が9、共産党が8、参政党が3、社民党1、諸派が3、無所属は12だった。
 
 自民、公明両党は公示前の279議席から64減らし215議席だった。定数465の過半数(233)を割り込んだ。自民党派閥の政治資金問題を受けて、逆風下での選挙となった。

 自民は公示前の247議席から大きく減らし、立民と国民民主は議席を伸ばし躍進した。石破茂首相(自民党総裁)の政権運営は厳しさを増す。

(『日本経済新聞』より)

 振り返れば、3年前の選挙で、自民党が247議席も獲得していたのは、そんなに選挙で勝っていたとすれば、裏金問題が出てきても、おかしくないような状態だったと思う。失礼かもしれないが、気がゆるんでも不思議ではない。

 さらには、選挙期間中に、お金の問題が出てきたら、自民党に逆風が吹いてもおかしくない。

 衆院選小選挙区の投票率は、朝日新聞の推計で53・11%前後となる見通しとなった。衆院選で戦後3番目に低かった前回2021年の55・93%を下回る見込みだ。 

(『朝日新聞デジタル』より)

 これだけ政治に関しての報道があっても、投票率が上がるわけではなかった。政治に関して、「何をやっても変わらない」といった政治的ニヒリズムのようなものは、相変わらずだったようだ。

 だから、本質的に流れが変わったわけではない、と思う。

 そうなると、政治的には、いわゆる素人であっても、今回の選挙結果の原因は、なんとなく想像がつく。

 これまで自民党に投票し続けてきた人たちの一部が、裏金問題があったことで、今回は、次の選択肢として立憲民主党や、国民民主党など、「いま自民党に近そうに感じる党」に、投票をした。

 それは、これまでの歴史の中で、自民党の不祥事があった時に「お灸をすえられる」ように自民党が議席を減らしたことがあって、今回も、そんなふうに思える。

 もし、来年の参議院選挙で、今回の結果とバランスをとるように、自民党に支持が集まれば、本当に、これまでの歴史の繰り返しになってしまう。

 もし、本気で自民党以外の選択がされたのであれば、今回の衆院選でも自民党が191議席を獲得して、第一党である結果にはなっていないはずだ。今回の裏金問題は、自民党が第二党になってもおかしくないことだと思うのだけど、現時点で議席を減らしたとしても、最も多くの議席を持つ政党であることは変わっていない。

 今後、おそらく自民党は、公明党とだけでは過半数を獲得できないとすれば、他の党と連立を組んで、政権を維持すると思う。

 こうして記事になる前から、選挙公報を読んで、テレビなどをみていたら、政治的には素人であっても、維新や国民といった党は、自民党と組んでも不思議でないくらい、似ていると思ってきた。

 まだ大きく変わるまでには時間がかかるのか。それとも、本当に、変わらないまま、時代は続いていくのだろうか。どちらにしても、この明確な変化が訪れない中で、どう生きていけばいいのかを、自分の能力が足りないとしても、また考え続けていかなくてはいけないのだろう。





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おちまこと
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