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読書感想 『「権力」を握る人の法則』 「社会の現実を知るために」
歳を重ねるほど、時々、自分の無力さに嫌になることがある。
自分なりに努力もし、それなりに能力も上げてきたはずなのだけど、社会的な成果が全くあげられていないし、あまりにも世の中での権力がない。権力というのは大げさとしても、あまりにも孤立し過ぎていないだろうかと思ったが、それについては、自分の性格のせいではないか、とも感じている。
それは、仕方がないと思ったり、結局、能力もなかったし、さらにはコネや運という大事な要素もなかったのでは、と改めて考えたりもする。
同時に、権力を握った人たちを、メディアなどで遠くから見て、全員ではないけれど、ああいう人にはなれない、もしくは、ああならなくてよかった、といった、屈折も含めた、妙な安ど感もある。
ただ、それと並行して、年齢を重ねると、会社という組織で、かなり地位を上げていく知り合いも増えていく。その理由を尋ねても、本人は、たまたま、とか、周りの人のおかげ、といったことを繰り返すことが多い。
権力を握った人は、やたらと悪く言われたり、逆にすごく神格化されたりの両極端になりすぎていないだろうか。自分の社会的な無力と共に、権力というものについて、もう少し客観的に知りたくなった。
そんな頃に、図書館で、このタイトルを見かけて、最初はあまりにも露骨に思え、ためらい、だけど、次の機会にやっぱり借りてしまった。
『「権力」を握る人の法則』 ジェフリー・フェファー
著者のプロフィールを改めて確かめる。
スタンフォード大学ビジネススクール教授(トーマス・D・ディー2世記念講座)。専門は組織行動学。1979年よりスタンフォード大学で教鞭をとる。
スタンフォード大学といえば、世界の大学ランキングでもトップを争うような大学ということくらいは知っていた。そういう場所には、世界からエリートが集まり、卒業後も社会的に出世をして、それこそ世界的に権力を握る人もいるはずだ。
だから、調査して研究するには恵まれた環境だろう。さらには、1979年から2010年代という、社会が大きく動いた期間に、大学にいたからには、そうした変化も感じられた時だったと思う。
だから、ただの経験論や、印象論だけではないと思った。
心臓疾患による死亡率のちがいには、肥満や血圧といった生理的要因よりも、職務権限と地位の方が密接に関係しているのである。
冒頭から、権力を持つか持たないかが、命に関わってくる、という話題から始まる。それに関しては、ある程度以上の納得感はあるものの、実は、次の第1章のタイトルの方が、分かっていたつもりだったけれど、改めてちょっとショックだった。
第1章 いくら仕事ができても昇進できない
上司がご満悦であれば、仕事の出来不出来はさほど問題ではないということである。逆に上司を不快にさせたら、いくら実績があっても首は危うい。
これは、組織の中で仕事をしていくのであれば、必要なことであるのは、分かっているけれど、おそらくは上司にゴマをする、と言われる行為に思え、ここでつまずいてしまう人も少なくないのだろうと思う。
自分は組織にいた年月は3年と極端に短いものの、フリーランスで仕事をしていたときも、いわゆる「営業」に関しては、ほとんどしていなかったし、うまく出来ていなかった。だから、いくら長く仕事をしたとしても「権力」と無縁なのは、仕方がないのかも、とも思ってしまいがちになる。
卓越した実績は、昇進や昇給にとってだけでなく、地位の維持にとってもさほど重要とされていない。
いくらよい仕事をしていても、目に付かない人は認めてもらえない。
このあたりは、ただの経験論だけではなく、組織行動学を専門としているのならば、調査や分析も元にしているはずだから、確率的な問題でもあるのだろう。
覚えていない人を抜擢するなんて、できっこないのだから。
ところどころ、著者の主観では、と思えることもあるのだけど、それでも、特に最近になって「知名度の高さと収入は比例する」といった発言をしている人がいて、それに対して、とても納得できたこともあった。
だから、それは会社という組織でも同様だろうと思ったけれど、自分にとっては気づくのが遅すぎた。というよりも、薄々分かっていたけれど、できなかったことだと思った。
あなたがいまの地位を確保し、さらに上へ行く確実な方法は、端的に言って上司をご機嫌にしておくことなのだから。
上司を気分よくさせる最善の方法は、何と言っても褒めることである。
社会にはパワハラ上司も少なくないのに、このことを実行するのは、もしかしたら一番困難なことかもしれない。
だけど、こうしたことを「事実」として知った上で、自分が何を選択するのかを決められた方が、後悔も少なくなるはずだと思う。
また、「いい仕事をしていれば誰かが見ていてくれる」だけを信じているのは、自分自身もその傾向が強いのだけど、だからこそ、現在の社会的な無力に結びついている可能性の高さを、再確認できたような気がして、ちょっと悲しくはなった。
天才は、思ったより少ないのかもしれない
特に、優れたアスリートを見ていると、生まれながらの素質が大きくものをいうのは、素人目にも明らかにわかる。だから、簡単に「天才」というような、努力ではどうしようもない存在として、片付けようとしまいがちだ。
決意、エネルギー、集中。自己省察、自信、共感力、闘争心
著者が、こうしてあげた「権力を手にするための7つの資質」(↑)も、元々の生まれ持った性格によるものが大きいとは感じるものの、そのことを明確に意識したことはほとんどないことに、読みながらも気づく。
権力を握る人は、とにかく権力が好き。といった粗い見方しかしてこなかったが、それだけでは、おそらく何も分かっていないのだろうと感じたのは、例えば、天才と言われる人たちへの調査・分析をすると、その結論は比較的、シンプルなものだったからだ。
大事なのは「準備期間に労力を注ぎ込むこと」だという結論に達した。「個人の業績の差は結局のところ、知識とスキルの習得に直接費やした時間数でおおむね説明がつく。(中略)研究者の中には、生まれながらの才能や天分という概念は幻想だと主張する人さえいる」。天才が幻想かどうかはともかく、長時間がんばるエネルギーがあれば、目標に人より早く近づけることはまちがいない。
こうしたことを突きつけられると、なんだかぼんやりしていた自分自身の10代や20代を思い起こし、知識として明確に知っていれば、とも思うけれど、でも、基本的に怠け者な自分には、やはり無理かも、と心の中で言い訳をしながら、読み進めていた。
決意と、エネルギーと、集中。
この3つの要素も、確かに生まれつきで、その程度は変わってくるのは間違いないが、でも、その3つの要素がまったくない人も少ないはずだ。
業績やスキルを絞り込んで一点集中型でエネルギーを投じる方がより効果的であることは、さまざまな調査結果が示している。
だから、この3つの要素(決意と、エネルギーと、集中)も、その大切さを再認識し、自分は、その要素のレベルが低いとしても、その使い方を考える、という戦略は、よりよく生きるために必要かも、というようには思えてきた。
人間関係を豊かにしていくこと
人間関係----ネットワークも、コネとも言われて、それが生まれながらにある人間は、本人は意識していないかもしれないが、かなり有利なのは間違いなく、しかも、現在は階級の固定化が進んでしまっている。
だから、ネットワークをつくる、といったことを聞くと、反射的に避けてしまうというか、あきらめてしまっている部分がある。
さらには、人間関係の中でも重要になると思える、頼みごとは、どちらかといえば、「してはいけないもの」のように考えていた。それは迷惑になるのではないかと思ってきたからだ。
頼みごとは案外うまくいく
大方の人は、頼まれた相手がOKする確率を過小評価している。
これは文化の違いもあるかもしれないが、それでも、ただ迷惑なだけではないという気はしてくる。
頼みごとは相手への賞賛である
確かに、相手の能力や人格などが優れていると思わなければ、頼みごとはしないが、頼み事をするときには、当然ながら気をつけなくてはいけないことはある。
相手の地位や優秀さをよく理解し評価していること、だからこそお願いをするのだということをはっきりと示そう。
他人があなたをどう思うかなどあまり気にせず、欲しいもの、必要なものはとりあえず頼んでみよう。それが、階段を上る第一歩になる。
こういうことを知っておいて、そして、選ばないという方法もあるかもしれないが、それでも、知っておいた方がいいと思う。
ネットワーク作りの秘訣
人間関係でのリソースは、自分自身の持っている資源という意味になると思うが、そのリソースに関しては、やはり格差があるはずだ。
リソースに関してもう一つ言えるのは、権力の多くは地位に依存し、また地位に伴って動かせるリソースに依存するということである。
そうなると、例えば若くて、まだ働き始めたばかりでは、人に使えるリソースは何もないと考えがちだ。
リソースは無からでも生み出せる
具体的な提案もある。
のちのちのための関係作りは、単に相手に礼儀正しく接し、相手の言葉を傾聴するだけで事足りることも少なくない。
ちょっとした手助けが実を結ぶ
仕事を手助けするのも、喜ばれる。とりわけ、おもしろみのない仕事、延々と続く単調な仕事を引き受けるのは、手始めとしては理想的である。
おそらく、本当にその通りなのだろう。そして、そうした基本的なことも、やってこなかった自分に気がつくし、「ネットワーク作りの秘訣」も、具体的にあげられているが、それは、とても地道なことばかりだった。
1 社内に知り合いを作る(例:社内行事を利用する)
2 社内の人脈を維持する(例:他部署に異動した同僚にときどき声をかける、食
事をする)
3 社内の人脈を活用する(例:他部門の同僚に仕事上の悩みを打ち明けアドバイ
スをもらう)
4 社外に知り合いを作る(例:社外団体の仕事を引き受ける、興味のある講演会
やセミナーに参加する)
5 社外の人脈を維持する(例:同僚が社外の知人に会う場合、よろしく伝えてと
頼む)
6 社外の人脈を活用する(例:社外の知人とお互いに役に立つ情報を交換する)
これを読むとわかるように、ネットワーク作りにはこまめな努力の積み重ねが必要である。また、たとえいまの仕事に役立つ人脈を作りたいときでも、いま視野に入っていない幅広い範囲にアプローチするとよい。
組織で出世する人間は、おそらく、こうしたことを(ひとより多く)しているのだと思った。
彼女は家族の写真に一言メッセージを書き添えて、夏休みやクリスマスにカードを送る。それも、七〇〇枚も。(中略)肝心なのは覚えていてもらうことだ。そうすれば、何かのときに手を貸してくれるだろうし、あるいは逆に助けを求めてくるだろう。
権力への興味
これまで「権力」に興味はなかった。
仕事をきちんとすればいいと思っていた。
だけど、自分が介護をする中で、もしくは介護者を支援する時間の中で、具体的に社会に伝えるべきことがあると考え、10年以上機会があれば伝えてきたが、あまりにも、そのことが広がらず、無力感をおぼえることも多くなり、なんだか、全部を投げ出したくなるような気持ちになることもあった。
いまの職場で、あるいは新天地で、あなたには状況を変えることができるし、ぜひともそうすべきである。そのうち状況は好転するだろうとか、誰かもっとましな人が上司になって自分を引き上げてくれるだろうなどど待っていてはいけない。あなたをよりよい場所に押し上げるのは、あなたしかいない。上へ行く道を切り拓くのはあなた次第なのだ。
だけど、こうした言葉も改めて知ると、自分は組織にいないけれど、「権力」がなければ、いくら伝えるべきことを伝えようとしても、遠くまで届かないだろうと思い、少なくとも「ネットワーク作りの秘訣」は、すでに完全に手遅れだろうと思いながらも、見直せることは見直した方がいいかも、というような気持ちになった。
高い地位に就いた人があっという間に強者の論理に立ち、傍若無人なふるまいをしはじめることである。念願の地位についに到達したときに、まだ権力を持っていなかった頃の気持ちを思い出すことができたら、そして、権力の座に就いた途端に群がってきた見知らぬ輩に大盤振る舞いをする無思慮な行動を抑えることができたら、権力者の寿命はかなり伸びるにちがいない。
それは、まかり間違って「権力」を手にしたときに注意すべきこと↑まで、あらかじめ書いてあるから、という理由もあるし、意外なのか、当然なのか、それができる人は少ないことまで知ったせいもある。
ずっと同じ人が権力を握り続けなければ、もしかしたらチャンスが来る可能性もあるからだ。
だが残念ながら、高い地位に到達した人の多くはかつての自分を思い出したがらないし、どれほど自分が変わってしまったか、考えるのもいやがる。
これは、文化や国を問わず、共通しているようで、それこそ人間、とも思ってしまう。
おすすめしたい人
特に若い人は、知っておいた方がいいことばかりだと思います。
その上で、どうするのかを決めればいいことなので、知らないと損をするような情報でもあると思われます。
ある程度の年齢を重ねても、もしかしたら、努力の仕方が違っていたかも、と思っている方も、確認する意味でも、手に取られることをおすすめします。
(こちらは↓、電子書籍版です)。
(他にも、いろいろと書いています↓。よろしかったら、読んでもらえたら、うれしいです)。
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