テレビについて(57)「芸能人の特別の範囲」------TOKYO MX 『バラいろダンディ』
「MX TV」という局名だったはずだけれど、いつの間にか「TOKYO MX」という名前になっていた。
ただ、それは、自分が不注意で気がついていないだけだったのだろうけれど、地上波で「9」のボタンを押すと、かなり独自な番組を放送してくれている印象が今も強い。
マツコ・デラックスが、最初にレギュラー番組だったはずの「5時に夢中」は、以前は毎日のように見ていた。今もマツコ・デラックスが出演し続けていることに、個人的には義理堅さのようなものを感じながらも、その番組からは、だんだん気持ちが離れ、今は、その時間は、録画したテレビドラマを見るようになった。
深夜になって、アニメを連続して放送しているので、今はその時間によくTOKYO MXを見る。
個人的な印象だと、10年以上前の「テレビ東京」が、こんな感じだった気がする。
「バラいろダンディ」
月曜日から金曜日まで、午後9時からの放送だから、いわゆる「ゴールデンタイム」で、どうしても、他の放送局の番組を見ることが多いのだけど、他がつまらないと、MXにチャンネルを合わせることがある。(チャンネルを合わせる自体が、すでに使わない表現だけど、まだ使ってしまう)。
すると「バラいろダンディ」という独特のネーミングの番組をやっている。
そういえば、「バラいろダンディ」という単語を最も多く聞いたのは、TBSラジオの「アフターシックスジャンクション」が、午後6時から放送されているときだった。「バラいろダンディ」の金曜日に、ラジオのパーソナリティのライムスター・宇多丸が出演するときは、途中からいなくなる、ということを伝える時に、よく聞いた単語だった。
「アフターシックスジャンクション」は、今は、午後10時からの開始になり、だから、「あとろく」というには無理があるはずなのだけど、それを「アフターシックスジャンクション2」と、「2」をつけることによって乗り切っているという荒技に感心したこと。さらに月曜日から木曜日の放送になったので、もう「バラいろダンディ」のために途中でいなくなります、といったことはなくなるんだ、といった細かい感想を持ったことを、「バラいろダンディ」を見ながら、思い出した。
「特別なことは何もしていません」
「バラいろダンディ」を最近見たときは水曜日で、遠野なぎこと、橋本マナミがコメンテーターとしてスタジオにいた。この番組は、偏見かもしれないけれど、どこか整い方が薄く、だから、ややドキュメントな感触があって、それで、しばらく見続けていた。
台本はあるのだろうけれど、その通りに進まないぎこちなさや、計算ではない微妙な沈黙の時間があると、ただの視聴者にも関わらず、微妙に緊張したりもするから、そういう面白さもあったと思う。
「バラいろダンディ」では、映画か、舞台だかは、すでにはっきりと覚えていないが、美人女優と言われる人が、普段の美容について聞かれて「特別なことは何もしてません」というコメントをしていたことが話題になっていた。
それは、これまでにも何百回も聞いたような言葉だった。
「特別なことは何もしてません」というのは、様々な努力をすごくしているのに、それを言わない方がカッコよく感じるから、もしくは、芸能人の間では、それが共通する言葉のマナーのようなもので、だから、一般人から見たら、一種の「ウソ」を言っているのだろうと感じていた。それで、その言葉を聞くと、どこか白けてしまうような表現にもなっていた。
その「特別なこと」に関して、コメンテーターの一人である橋本マナミに話が振られた。
「私も、特別なことは何もしてません」。
その答えで、笑いが少し起きて、そこで話は終わるかと思ったら、橋本マナミは、さらに言葉を続けた。
芸能人の「特別」の範囲
橋本が普段おこなっている美容の内容は、美容液や化粧水や洗顔、といった基本的なことは当然として、食べるものや飲み物にも気を配り、エステだけではなく、さらには、レーザーも当てている(このレーザーは、美容整形のシミ取りのようなことだと思う)。といった話題になった。
そこで述べられた美容に関する方法は、一般的な基準から見たら、特にレーザーは、特別なことになるのだろうけれど、橋本によれば、それは、芸能界では普通のことになるらしい。
知らなかった。
だから、「特別なこと」というのは、それこそ美容整形をしている、といったレベルで、初めて「特別」になるらしい。
考えたら、自分の見た目が仕事と完全に直結するのだから、芸能人の「美容」のレベルは、考えたら「普通」よりも気を配って当然かもしれず、同時に仕事の種類によって「特別」の範囲は、これだけ変わることを、分からされた気がした。
やっぱりプロはすごい。だけど、同時に芸能人というような人前に出る仕事の身を削るような努力も、少し垣間見えたような気がして、ちょっと怖さも感じた。
視聴者の勝手な感想だけど、そんな気持ちにもなって、だから、それからあとは、女優と言われるような人が、美容に関して質問されて、「特別なことをしていません」と答えているのを聞いても、以前のように「ウソ」だとは思わなくなった。
その人は、おそらく、ただ、正直に答えているだけで、美容も含めて、プロならば「普通」で、一般から見たら「特別」なことをしているだけなのだろう。
そんなふうに思うようになった。
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