誰も住んでいない実家の庭で、松の枝と、さらには、梅の枝まで切った日。
父も亡くなり、母も介護が必要になり、その後、亡くなってから、もう随分と経つし、それで、少し遠くにある実家に誰も住まなくなってからも、年月が重ねられた。
それでも、いろいろな事情で、まだ実家をそのまま残すことになって、だから、時々、出かけて、家屋の中に空気を通したり、庭の木の伐採や、雑草を抜いたり、郵便ポストの整理をしている。
庭の松の木は気がつかないうちに育って、台風などの強い風によって、電線に触れてしまうのではないか、といった恐れが出てきたので、脚立をハシゴのスタイルにして、妻に押さえてもらいながら、ノコギリを使って、1時間かかって、小さな松の木くらいの枝を切り落としたら、とても重い音を立てて、道路に落ちた。
それから、また時間がたった。
準備
松の太い枝を切り落としたとき、時間もかかったけれど、ノコギリに負担もかかったようで、折れてしまった。そのあとに、久しぶりに新しい伐採用のノコギリを買った。
さらには、実家の壁にできた穴をふさぐことは、一時期、そこにスズメバチの巣ができたので、なにしろ大事なことにもなっていたのだけど、この前は妻と一緒に行って、一緒に穴をふさいでくれたことで、これまで一人で行なっていた時と比べると、その後の気になり方も軽くなっていて、ありがたかった。
それでも、また出かけるときは、また塞ぐために準備をして出かけたいと思っていて、その焦りで、妻を責めるような言葉にもなってしまって、申し訳なかった。
それに今回は、1年に1度は、実家に残る(まだ整理ができてない)着物や洋服が入っているタンスのなかの防虫剤を変えなくてはいけないけれど、コロナ感染者が多いときは、外出をなるべく控えたいという都合もあって、その1年の期限を過ぎていたので、それも焦りと不安の理由になっていた。
実家
電車に乗って、そして、実家に着くまでは、ちょっとドキドキしている。
しばらく行っていない間に、何か、家のどこかが壊れてしまい、周囲に迷惑をかけていないだろうか。
以前は、雨どいが壊れて、道路に落ちたこともあった。
今は使われていないテレビのアンテナの設置がゆるくなっていたようで、それがグラグラしていて、ご近所の方に不安を与えてしまったこともあった。
それに、塞いだ穴が何かで開いてしまって、そこにハチの巣を作るための過程が進んでしまっているかもしれない。
タンスの中の防虫剤が、期限を過ぎてしまっているので、服が虫に食われてしまっているのではないか。
そんなイメージが頭をめぐり、それでも、午前中に出かけたので、途中の駅の中の飲食店で妻と一緒に食事をして、それから、また電車に乗って、実家の最寄りの駅で、防虫剤を買って、そこから20分ほど歩いて、実家に着いた。
もう建ててから、40年ほど経ち、明らかに古くなっているのに、まだ建っていることに、いつもなんだか少し感心もする。そして、今は誰も住んでいないことに、またいろいろなことを思う。
現状
この前、松の枝の太くて、高い枝を、やっとの思いで切り落として、それで、随分と安心したはずだったのだけど、今日、改めて見たら、やっぱり、さらに伐採しないと、また伸びて、電線などに脅威を与えそうだと思い、早く切らないと、と思う。
そして、実家の側面の壁の穴は、それを塞いだ上に、テープで止めたり、雨風にさらされて、すっかり原型をとどめないほど、曲線的になった細めの棚も、その穴を抑えるために置いていた。だけど、テープも、どこかにいってしまったし、その前の棚も、さらに曲線が強くなって、抑える役割を果たしていなかった。
それでも、穴はこの前、妻が使ってくれたボンドのようなものが固まったままなので、塞がれていて、ホッとした。
松の枝
実家の窓を開けて、空気を通しつつも、着替えて、脚立などの準備や、持っていった道具も用意して、妻と相談もして、まずは、松の枝を切り落とすことから始めることにした。
脚立をはしごにしたものを立てかけたら、まだ思ったよりも高い位置で、さらに伸びようとしている松の枝…ハシゴを登って、そばで見ると、たぶん、直径では15センチはあって、1・5メートルくらいあって、思ったよりも大きい感じがした。
それでも、以前は、さらに太くて長い枝を切り落とした経験があるせいか、それほど不安もなく、それに妻が、切った後の枝が、電線などに引っかからないように、ということで、ロープまで用意してくれて、それを結び、その別の先を、庭の木に妻がくくりつけてくれた。
これで、思い切って、切ることができる。
ノコギリ
最初、この前、先端部分が5センチほど折れたけれど、まだ使えるし、松を切ると、松ヤニといったものが付いたりすると、買ったばかりのノコギリには、気の毒なのではないか、みたいな気持ちもあったので、その折れたノコギリで切り始めた。
枝に少しだけ傷がつき、少しだけ食い込む。
しかし、それが進まないで、なかなか切り落とすまでがかかりそうで、とても枝が固く感じ、なんだか、ちょっと、また嫌になりそうになった。これでは、1時間はかからないまでも、30分くらいはかかりそうだった。
そんな様子を見ていた妻が、新しいノコギリを使うのをすすめてくれた。
買ったばかりで、まだ、紙のパッケージがさっきまでついていたくらいで、さやから抜いたら、歯の部分に、さらにそこをカバーするような柔らかいプラスチックのようなものまでついていたので、それもとって、切り始めた。
ワンストロークしただけで、木クズが目に見えるほど、出てきた。
さっきまでがウソのように、ノコギリが進む。
このままだと、あと何分かで切り落とせそうだ。
どんどんノコギリが進むのは、ちょっと気持ちがいい。
落下
あと少し、という感じになってきた時に、太めの枝なのに、グラグラし出した。
もう少しで切り落とせそうだけど、このままロープをつないでいると、そのことによって、どこかに引っかかったり、こちら側に枝が傾いてきそうだった。
だから、ロープをほどき、そして、落ちて欲しい道路側に少し押しながら、さらに切り進めたら、完全に枝が下を向いたから、そのまま落ちると思った。
そうしたら、木の皮、何枚分かで、まだぶら下がっている。
さらに、ノコギリで切り進むと、やっと、その下の松の枝に、少し引っかかりながらも、下にある道路に落下していった。
そうなると、他の枝も気になる。
ノコギリが調子がいいので、あちこちを切って、道路は松の枝でうまっていった。
梅の木
実家の庭には、梅が3本くらい植えられている。
特に何の手入れもしないけれど、毎年、2月くらいになると、きれいに咲いている。
紅梅と白梅の両方があって、だけど、どうやら、梅の実が道路に転がると、迷惑になっているようなので、少しでも減らしたかった。
特に、庭の隅に植えられている梅は、その枝のほとんどが、角地で少し高くなっていて、道路までに距離があるせいもあって、敷地外へ出てしまっている。
だから、その紅梅の実だけでもなんとかしようと思い、その枝を、大幅に切り落とした。全部で3本。下の道路に落ちて、そこから、持ち上げて、庭の隅に積み上げるまでに、思ったよりも重かった。
そして、その切り落とした断面は赤く、それで紅梅なのか、と思った。
松の木も、梅の木も、植木屋から見たら、切りすぎと怒られそうな形になっていたが、これからのご近所への迷惑防止と考えたら、かなりスッキリしたと思った。
穴
それから、家の壁の穴をふさいで、スズメバチの巣になることを予防することを、妻が中心になってやってくれて、これまで、穴を抑える役割をしていた棚は大きく曲がったため、その役割を終えて、庭のすみに移動した。
穴を塞いでいるフタは、一応、まだボンドのようなものでくっついているので、あとは、ホウキの棒などを使って、「保険」というか、「安心感」のようなもののために、そのフタをおさえた。
防虫剤
それから、今日使ったノコギリを油を使って、少し手入れのようなことをしてから、家の中のタンスなどの防虫剤を取り替える作業に移った。
妻と一緒に、各部屋を回って、タンスなどに、新しい防虫剤を、投げ込むように入れていく。古いものは、ほとんどそのままにしているものの、中を見た感じでは、虫に食われている様子もなくて、ちょっとホッとしながらも作業を続けた。
いつも思った以上に、その防虫剤が必要な場所はまだあって、必要でない衣類はゴミとしてまとめたくて、ある程度は、捨てたものの、その後は、あまり余裕もなく、そのまま、ただここにあるのも、なんとかしないと、などと思ったりもしたが、今日は、とにかく防虫剤をかえることにする。
いつも、この20年ほど、この作業は一人で続けてきたから、今日は、妻が一緒におこなってくれたので、やっぱり気持ちが軽くて、ありがたかった。
カフェ
そうして、作業が終わったら、完全に夕方になっていて、暗くなってきていた。
あとは、今日着ていた作業着のジャージなどを洗濯し、部屋の中に干して、ブレーカーを落として、水道の元栓を閉めて、駅まで歩いた。
途中で、妻が疲れているようで、それもあって、駅のそばのカフェに入った。それで、少し疲れもとれたようで、よかった。
結局、1日仕事になった。
それでも、気になっていたことが何とかなったので、気持ちは軽くなった。
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