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読書感想 『パパ活女子』 中村淳彦 「いまの時代の“常識”」
おそらく自分自身は、経済活動が不活発だからだろうし、コロナ禍になる前からも家にいることが多いせいか、「パパ活」という言葉を知るのも遅かった。最初に聞いた時は、1990年代に盛んに聞いた「援助交際」の21世紀版だと思っていた。
どちらにも自分自身に関わりがないと、ただ遠い出来事のように思っていて、同時に、自分の知識を基準に考えると、「パパ活」も言われるほど多くないのではないかとも勝手に想像していた。
ただ本を読んだだけに過ぎないけれど、それだけでも、自分がどれだけ無知なことか、分かったのは間違いなかった。
『パパ活女子』 中村淳彦
この著者は、貧困についても詳しく、同時に、かなり冷静な視点が特徴だとも感じてきたので、「パパ活」についても、善悪を超えて、事実を伝えてくれるのではないか、という期待もあった。
その期待通りに、著者は、おそらくはまだ決まってもいないし、それほど明文化されるわけでもなさそうな「パパ活」の定義も、明確に書いている。
パパ活の定義① デートして、その見返りに金銭的な援助をしてくれる男性を探す
こと
パパ活の定義② 第三者がかかわることなく、自己決定する
パパ活の定義③ (高校生ではない)18歳以上
確かに「援助交際」の時代は、未成年の高校生が主役だったことが、衰退の理由になったのは有名な話だったらしいのだけど、「パパ活」はそのリスクを意識的に避けていること自体を、こうして「定義」してくれないと知らないくらい自分が無知だった。
さらに、援助交際への自分の印象は、「ラブ&ポップ」が大きく影響していたけれど、それ以外に、ほとんど知らないことに、気づかされる。
(この映像作品↓は、庵野秀明が監督して、話題になった)。
(※このあと、性的表現についても引用し、触れていくことになります。読み進める方は、ご注意くだされば、幸いです)。
援助交際
元々、こうした現象には、ある種の「根拠」があったようだ。
日本人男性には、女性は若いほどいいという伝統的な性癖がある。筆者は、マーケティングしながら男性に販売するアダルトメディアをつぶさに見てきたのでわかるが、少女趣味の変態は著しく多く、彼らの欲望は底なしである。ブルセラショップは大当たりとなり、男性客が殺到した。当時の男性客は新人類と呼ばれた世代の男性たちだった。
ブルセラショップが話題になったのは1990年代はじめの頃で、そのあとに「援助交際」という単語もよく聞くようになった記憶がある。その頃から詳細を知っている著者であるから、こうした言葉の説得力も増すのだけど、自分自身にとって遠い出来事だったのは、ずっと経済的に恵まれていないせいもあるだろうし、1990年代後半からは介護に専念する生活になったせいもあるかもしれない。
ただ、経済的な強者で、時間的にも余裕があったとしたら、こうした流れに、自分も参加していたのだろうか、などと思うけれど、(偽善的かもしれないが)現時点では、考えにくい。だけど考えたら、その時に関与していた「大人の男性側」の話を詳細に聞いた記憶もあまりない。
1993〜1995年の第一世代の時期は、援助交際の価格は高水準で推移していた。一度に10万円以上を支払う男性もたくさん存在した。筆者は当時援助交際を経験した女性に何人も話を聞いたことがある。ほぼ全員、男性客のことは軽蔑しながら取引し、もらったお金はカラオケやブランド物の購入で「すぐに使ってしまった」と答えている。
そして、その衰退の大きな理由の一つははっきりとしている。
援助交際は、主役が未成年だったことがまずかった。
ここには、今につながるようなさまざまな問題もあるはずなのに、それは、解決されないまま、「パパ活」へとつながっているようだった。
「パパ活」の誕生
実は、コロナ禍によって、「パパ活」は、より盛んになったという。
緊急事態宣言下の夕方の老舗喫茶店は、パパ活カップルだらけだったのだ。
いまは過熱状態ともいえるパパ活ブームの最中だ。
この著書は2021年11月に出版されているが、感染に怯え、できる限り外出をしなかった人間にとっては知らないことだった。そして、どうやって「パパ活」といわれる活動が生まれてきたのかも、繰り返しになり恥ずかしいが、知らなかった。
特に都市部の20代女性においては、パパ活はもはや常識で、経済的な問題を解決するための選択の一つとして、同年代の女性間では十分に認められている。たとえば友だちがパパ活をしているなら、否定することなく、受け止めるほうが普通だ。
理由の一つは、女性の貧困が広がる社会のなかで、都心の一部に生息し、キラキラした華やかな生活をする「港区女子」と呼ばれる女性の存在が注目されたことが大きいだろう。
日本全体で女性の貧困や雇用の非正規化による低賃金が深刻な問題となる一方、かわいく、オシャレに着飾った拝金主義の20代前半の女性たちがおじさんやハイスペック男性から奢られ、悪意ある言い方をすると、彼らにたかっていた。そんななか、2016年にパパ活という言葉が生まれ、さまざまな人がパパ活という言葉を使うようになり、2017年以降に一般社会に浸透している。
だから、「パパ活」という言葉が広まってからでも、5年以上が経つことになる。
「パパ活」と貧困
女性の貧困がギリギリの状態のなかで新型コロナウイルスが蔓延した。(中略)
いくつかの要因が重なったことで、若い女性たちが濁流のようにパパ活になだれ込んだ。
貧困が、その隆盛に関係しているとすれば、情けないけれど、それについて何かを言える資格も力もないように思えてくる。それでも、当然ながら、この社会に生きている以上、他人事のようには語れないとしても、気持ちは重くなる。
類似した現象として戦後混乱期のパンパン、社会保障が行き渡っていなかった時代の物乞いなどを連想した。これが、格差が広がり続ける衰退国家の一つの姿なのだ。
こうした大きな社会構造が根本に関わっているとは思わなかった。
パパ活は一過性の流行ではなく、今後も現状のピークが横這いでずっと続いていくだろう。パパ活の発生源は学生の貧困と女性の低賃金、それと若い女性と恋愛がしたい中年男性の欲望である。当然、中年男性の欲望はいつまでも消えることなく、学生の貧困の原因となる日本の高等教育支援が欧州並みに拡大することも考えられない。これからも経済的に厳しい女性たちの自助として機能していくはずだ。
このことを証明するように、高等教育に十分な支援をしない国々でも「パパ活」のようなことが問題になっているようだ。(それぞれの国には、特有の事情があるかもしれないが、この著書では、そこまでは分析されていない。ただ、他の国でも、似たような状況があると指摘するだけでも十分だと思う)。
アメリカ、カナダ、イギリス、オーストラリア、韓国などでも深刻な問題になっており、それらの国でもパパ活に類似したシュガーベイビーという現象が起こっている。
当事者の言葉
他にも、「パパ活」における独特の内情や、「茶飯女子」や「大人」など、内部の専門用語や状況も豊富に挙げられているから、取材量が膨大なのだろうし、情報量も多い。
さらには、当事者の言葉も紹介されていて、「パパ活」が、当然なのかもしれないが、幸福な関係とは遠いことをうかがわせる。
本橋さんは56歳。オファーを出す女性会員は20代前半〜30代前半なので、20〜30歳という年齢差がある。ひとまわり下の40代の会員もいるが目もくれない。「一切、興味ないです。40代はクリックした経験すらないかも」といっている。
「40代だったら交際クラブに頼らなくても見つけられる。でも、女とちゃんと付き合うのは、もう嫌なんですよ。結婚で懲り懲りしました。恋愛関係までいくと、こっちも面倒くさい。パパ活での擬似恋愛くらいがちょうどいい。たとえば28歳の女の子だと、年齢差は28歳じゃないですか。そんな差があって恋愛が成り立つとは思えない」
「パパ活」をしている女性の言葉。
「その人は、彼氏とは全然違います。え、なんだろう。恋愛感情はまったくないです。相談係、相談おじさんです。お金くれるからありがたいけど、好きになる要素がない。嫌悪感は抱かないけど、触れて欲しくないです。好意も抱いてないです。いい人だなってだけ。おじさんと恋愛なんて、ありえないし、聞いたことないですよ。そんな気持ち悪いことは絶対にありえません。おじさんは金融関係で借金の法律とかに詳しいし、相談するいい人が見つかって、よかったなって」
こうした「パパ活」の状況は、1年が経つと変わってしまうかもしれないけれど、良し悪しではなく事実として存在することは間違いないので、知っておくべきことなのだと思った。
(こちら↓は、電子書籍版です)。
(他にも、いろいろと書いています↓。よろしかったら、読んでもらえたら、うれしいです)。
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