21世紀で最も意識の更新が必要なのは、「差別」に関することだと思う。
同時に昭和生まれの自分にとっては、どれだけ意識を変えても、現代に追い付かないのではないか、といった根本的な恐れもある。
だから、この本は、タイトルだけで読もうと思った。
『差別はたいてい悪意のない人がする』 キム・ジヘ
始まりは、著者が、無意識で悪意なく使った言葉からだった。
それは、でも、差別的な意味合いを持ってしまうこともある、と指摘を受けてからだった。
現在の肩書きが「韓国・江陵原州大学校多文化学科教授(マイノリティ、人権、差別論)」である著者にとっては、おそらくは恥ずかしく、どこか思い出したくないような過去なのかもしれないが、この体験を無駄にしなかった。
その成果をまずは分かりやすく示してくれている。
前者の表現は、日本でいえば、海外からの移住者に対して「もうすっかり日本人ですね」という表現に置き換える必要があるが、この二つの表現が、「差別」になるのは、一見、分かりにくい。
こういうことを知っているか、知らないかで、たぶん、随分と違ってくるはずだ、と思う。
「マジョリティ差別論」
「差別」ということを本当に少しでも減らそうと思うと、とても多くのさまざまな視点が必要になってくるのが、読み進めると、より分かってくる。
例えば、「マジョリティ差別論」をどう考えるのか。
この引用部分の中で「思い込み」という表現があるが、その「差別は解消されている」という「思い込み」も、まったくの無根拠なわけではないのが、事情を複雑にしていると思う。
例えば、マイノリティでも「抜擢」によって、社会的な地位を得ている場合もある。これは、お飾り=トークンという意味合いでの、「トークニズム」の場合もあると、著者は表現しているが、私は恥ずかしながら知らなかった。
「特権」について
そして、「マジョリティ差別論」を主張する人に対して、日本でも特に男性に対して、「これまでゲタをはかされてきたことに気づいていない」という批判がされることがあり、それは「特権」という言葉で表現されることもあるが、その「特権」という表現が立場によって、おそらくは全く違って思えるはずだ。
この引用部分の「韓国人」を「日本人」に置き換えれば、最近、よく聞く話題でもある。
女性も大変だけど、男性だって大変なんだ。自分に「特権」があるなんて、とんでもない。そんな叫びのような言葉も、心からのものなのは間違いない。
だけど、その「特権」は、例えば、こんな時に意識することができる。
こうした話になると、一瞬、どうしたらいいのか分からなくなる。
自分は何も見えていなかったのではないか。これから先、どうすればいいのか。特に、日本で男性の場合、差別の「加害」に知らないうちに立っている可能性も高いから、気持ちの身動きも取れなくなる。
だが、著者は、自身も無意識に差別をする側に立ってしまった怖さから始めているので、だから、ただ誰かを批判するだけではなく、その「どうしたらいいのか」という戸惑いや恐れに対しても、応えてくれるような文章までがある。
差別と笑い
引用が多くなってしまったけれど、それでも本書の一部に過ぎないが、今、その「差別の構造の維持」で巧妙に使われていることが、ユーモアとトーン・ポリシングだと思う。それに対抗するのは、意外と難しい。
例えば、ユーモア。
だけど、勇気は必要だとしても、対抗できないことはない。
差別と抗議の声
例えば、トーン・ポリシング……その言葉の内容よりも、その言い方自体を責め立てて、内容そのものを無効にするようなことは、意外と多いのではないか。ただ、それは、世の中はフェアにできていると思い込みたい「公正世界仮説」をベースにした感覚だと、自分自身が「トーン・ポリシング」をしている意識を持つことは難しい。マイノリティや被害者の方を責めることになりがちだ。
おすすめしたい人
今、差別される側にいる人。
差別されることで苦しんでいたり、悩んでいる人。
読むだけで、それが解決されるわけもないとは思うのですが、知ることで、変わるきっかけにつながるかもしれません。
差別と無関係だと思っている人。
差別に関して、少しでも興味がある人。
これからの世の中が、できれば少しでも生きやすくなれば、と思っている人。
私も、知らないことがとても多い書籍でした。だから、できれば、より多くの人に読んでもらえたら、と思っています。
(他にも、いろいろと書いています↓。よろしかったら、読んでもらえたら、うれしいです)。
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