「ドン・キホーテ」の「多幸感」。
いったん足を踏み入れると、すぐに出ることができなくて、うろうろしている間に、目の前に現れた商品を買ってしまう。
それが「ドン・キホーテ」の力だと思っていたのだけど、何度か、同じ店に行くと、ちょっと冷静になれて、そうすると、全部が安いわけではないことに気づき、なんだか警戒心が芽生えて、そ急に楽しさが薄れ、足が遠のく。
「ド」
どのくらい前か分からないけれど、「ドン・キホーテ」のオリジナル商品が開発されて、しかも「ド」という文字が大きく入っていて、見つけやすい上に、どうやら、値段的にも安いらしいことを知って、今度、行くときには、買ってみたいと、特に妻が思っていたようだ。
久しぶりに、「ドンキ」に行った。
外のペンギンも久しぶりに見たし、本も読んでいたので、ちょっと見え方が違っていたのかもしれない。
そして、1階の内部には「ド」の文字が入っている商品があちこちにあって、その中で、パッケージをなくすことで価格を抑えた、という情報を知っていた「ツナ缶」のパックをカゴに入れて、さらには、スナックなども、値段を見たら、明らかに安かったので、気がついたら、たくさん買ってしまった。
音楽
さらに、「ドン・キホーテ」にいる間には、ずっと「あの音楽」が流れ続けていた。
久しぶりに長い時間、その曲を浴びるように聞き続けたことになったのだけど、やっぱり、気持ちが強制的に上げられていたように思った。それもあって、いろいろと買ってしまったと思う。
それは、多幸感、といっていいものだった。
古くはパチンコ屋もそうだし、「ドン・キホーテ」だけではなく、他のスーパーなどでも、販売意欲を上げる音楽環境については、おそらくかなり考え抜かれているはずだと思うのだけど、「ドン・キホーテ」の音楽に関しては、失礼な言い方になってしまうが、そこまでマーケティングや心理学を利用していたわけではなく、ごく自然に、あの多幸感のある曲ができた感じがするところが、すごいと思う。
元々は、「ドン・キホーテ」という文学からとられているはずだけど、その曲の中では、「ドンキ」と区切られてしまっているし、日常会話でも、同じように呼ばれているから、元の意味合いは遠くなっているのだろう。
それも、なんだか、すごい。
マツケンサンバ
個人的には「多幸感」の音楽と言われると、「マツケンサンバ」を思い出す(正確には、Ⅱなのだけど、通常、付けられることは少ない印象がある)。
あれは、サンバではない。ボンゴは、サンバには使われない。
そんなことを、突っ込まれるような音楽でもあるのだけど、特に映像こみで、あの曲が流れてくると、いろいろなことを考えるのが難しくなってくる。
金色の和服。集団で踊る女性。何よりも、ずっと流れ続ける「マツケンサンバⅡ」の歌詞は、意味づけを拒否するような言葉が並び、考えるのがバカバカしくなってくる。
でも、そうしたことも含めて、どうでもよくなってくるし、この曲が好きとか嫌いとかではなく、強制的に多幸感が生まれ続ける音楽ではないだろうか。
映像で見るたびに、なんだかわからないけれど、すごい、と思う。
(この番組での検証と、結果への評価自体が、この「マツケンサンバⅡ」の多幸感力を表しているようだ)。
君といつまでも
多幸感で、昔の曲で思い出すのは、ある年齢以上の方達にしか伝わらないかもしれないのだけど、加山雄三の「君といつまでも」だった。
発売されたのが、1965年。高度経済成長の最中だった。加山雄三という存在は、育ちが良くて、ハンサム(当時の表現)で、歌をうたえるだけではなくて、楽器もできて、自分で曲も作れる。それで、「若大将シリーズ」という映画に出演し続けた。
今は、こうした能力は、以前ほど価値を見出されない要素になっているのかもしれないが、当時は、そうしたイメージやスペックを含めて、芸能界では、神様のような存在で、とても人気があった印象がある。
その加山雄三が歌ったのが「君といつまでも」。
恋愛ソングで、セリフまであって、加山の甘さのある歌声と共に、その歌詞もメロディーも、おそらくは、“明日は今日よりも良くなる”と信じられるような、「高度経済成長期」の多幸感を形にしたようなものだった、と思う。
だから、もしかしたら、今、その頃を知らない人が聞くと、この感覚は、全く通じないかもしれないけれど、だからこそ、そういう人たちに、この「君といつまでも」がどう響くかは、教えて欲しかったりします。
音楽は、心を動かす。
それは、時代が変わっても、おそらくは変わらないことだと思うのだけど、多幸感にあふれる音楽は、狙って制作しても、そのまま実現しないように感じるし、かなり限られた数しか存在しないように思い、それも不思議な気持ちがする。
それを、現代だと、商業施設である「ドン・キホーテ」が実現しているのは、小さな奇跡かもしれない。
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