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症例報告

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医療的なトピックスをまとめています。 (お話のモデルになっている人の年齢や性別や設定は個人情報に配慮してあえて創作を加え、実際の情報とは変えてあります。)
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記事一覧

緘黙

緘黙という症状がある。 選択性緘黙と言ったり場面緘黙と言ったりもする。 本来話す事ができるのに、特定の場面で話す事ができなくなる。 家では喋るのに、保育園では喋っていたのに、小学生になったら急に喋らなくなったりする。 で、高校卒業後に急に喋り出したりもする。 今年中学生になる彼女も喋らない。 何かあったら手を引っ張って教えてくれる。 前髪を切ったことや、柔軟体操で足に手が届くようになった事を身振りで教えてくれるが、僕の名前を呼んでくれることはない。 どうしても伝わらない時

妖怪について医学的に解説してみた。

昔から日本には多くの妖怪の類型が伝わっており、その数だけ共通点や違いを見出され、アーカイブされてきた歴史がある。 その情報源は目撃情報だったり、噂話だったりと様々だったと思うが、仮に今全く同じ噂話を聞いた時に、同じように、ただただ不思議な話となるかというと疑わしい。 もちろん日本古来の八百万のアニミズムに由来している物があったり、偉い人を祭り上げるための誇張表現や、失敗を隠すための方便も多々含まれると思うが、現在まで伝わっている妖怪の類型、特に人型の妖怪の中には、今でいう

魔王になってしまった男の子の話

気がつくと、男の子は魔王になっていた。 もちろん初めから魔王だったわけではない。 正義感が強く、優しく、友達もいた。 ちょっと人より体が大きかったり、嫌なことは嫌だとはっきり言えたりする以外は、普通の男の子だった。 でも、格段わがままというわけではないのに、男の子の要求はみんなに聞いてもらえた。 体が大きいからか、ハッキリしたものいいからか、周りのみんなは男の子に優しくしてくれた。 男の子はそれが当たり前なんだと思った。 でもある時から、急に周りの皆が男の子を露骨に避け

ボンバーマンの憂鬱

ボンバーマンは壁を壊す。 普段はおどけて「なーなー。」と話しかけてきては、ゾンビやゲームのキャラクターのモノマネをしたり、ネットで流行っているものの話をしたりしているが、急に些細なことに腹を立てて壁を叩く。 しばらくするとケロッとして、可愛らしい声を出したり、手を触りに来たりしするが、些細なことで、それこそ「きー!」と言わんばかりに急に怒る。 しかし、人に対して直接危害は加えない。 壊さないでと言われている物は壊さない。 タッチはあくまでソフトで、ちょっとかすっただけでも

転校初日をループする病(高次脳機能障害と発達障害)

若年性認知症 自分が出会った若年性認知症の患者さんは元々大手の商社で働いていたそうだ。 一見すると優しいお父さんのような風貌ではあったが、この時すでに彼の記憶は少しずつ抜け落ち、ほとんどの生活行為が自立できていない状態だった。 一緒に活動すると不安が高く、こちらが言う全てのことに、小さい男の子のような口調で何度も確認をしていた。 料理をすると、手の使い方などは覚えており、何も言わなくても利き手で包丁を持ち、押さえる手は猫の手になり、魚の鱗を削ったり、捌いたりする手つきは、

中学卒業後、3年間続けた仕事を辞めて、かれこれ20年間、彼は何もせずに過ごし、ついに貝になった。 そんな彼にコロナは船だった。 自粛の空気は彼らの動かないことを後押しした。 もしかしたらこれは壮大なボイコットだったのかも知れない。 薬や疾患教育によるところも大きいのかも知れない。 しかし、真相はどうであれ、何もしない事を決め、そのまま無意に時間が流れた結果、彼の働くための力強い足や、器用な手は退化し、全く役に立たなくなった。 いや、正確には手足は今でも満足に動くが、何かをす