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鑑賞ログ「猫はにげた」

220329@新宿武蔵野館

推しの俳優が出ている。それ一択で鑑賞決定。映画を観るなんて、そんなものだ。いいのだ、それで。いや、今泉×城定の組み合わせも多少プラスされたかも。
とはいえ、「愛なのに」はタイミングが合わずに観れなかった。2作セットで売り出されているけれど、個々に楽しんでも問題はないはず。

離婚しそうな夫婦。原因は浮気。離婚届にも判を押したし、あとは二人で飼ってきた猫をどっちが引き取るかを解決すれば、晴れて離婚。
週刊誌記者の夫・広重は同僚の真実子と不倫中。ちょっと軽いところがあるヒロさんは、わがままさといじらしさを使い分ける真実子に翻弄されつつ、離婚をなんとか進めたいと思っているけれど、カンタの親権が決まらないことには離婚できないとのらりくらり。
漫画家の妻・亜子の相手はレディコミ雑誌の若手編集者の松山クン。彼女もまた、なんとなく離婚を先延ばし中だ。
そんな二人の下から、ある日カンタが居なくなって…という物語。

役者がそれぞれ良い。
妻・亜子役の山本奈衣留さん、初めましてだったけれど、よかったなぁ。若い時とちょっとくたびれた現在の亜子を同一人物だと一見分からない感じで演じ分けている。
夫・広重akaヒロさんを演じる毎熊克哉氏もよい。今回は軽薄さと情けなさをそこはかとなく感じさせる男の役。こういう漂った感じの人っているなぁ。海苔のような濃さのハの字眉が今回もいい味出してます。
ヒロさんの愛人・真実子役の手島美優さんも初めまして。強かさと可愛さが同居したよくいる女子っぽさがありながら、ちょっとしたところでのぞく純粋さ?純情さ?一途さ?が良かったなぁ。ハリボーのゴールデンベアは軽いトラウマになりそうだけど。
井之脇海氏が亜子の愛人・松山くん。普通の男の役というか、今まで見てきた役どころとちょっと違う味を感じた。アクがない役というか。その代わり、自分の足で立ってる役という感じがしたな。
でも本作の一番の演技派はやっぱり逃げる「猫」であるカンタを演じたオセロ!なんというか…ビジュアル的には決して美しくはないと思うんだけれど、そんなカンタが可愛いんだなぁ。出演シーンもどうやって演出つけたんだ!?というシーンばかり。

アメリカのアカデミー賞はパルム・ドッグ賞を設けているし、そろそろ日本でもパルム・キャット賞的な賞を設けてもいいと思うんだが。

作品の展開的には、井上荒野原作でヒョンビン出演の「愛してる、愛してない」と同じような構図に感じた(これまたニッチな話だ)。向こうの方は、別れを決意した夫婦を引き留めるように雨が降る。こっちは猫が逃げる。向こうは2人芝居で、こっちは閉じ込められているわけではないから、出演者は多いけれど、構図は似ている気がした。ま、もっと近しい作品もあるとは思うけれど(少ない映画経験で語るとこうなる)。

足がつりやすい亜子の2つのリカバーシーンで物語はすとんと落ちる。同じ今泉監督の主人公の恋模様を描いた「愛がなんだ」は、かさぶたを剥がすような痛みを感じる作品だったけれど、この作品には同じような痛さはない。けれど、恋愛をめぐるモゾモゾとした居心地の悪さはある。結局みんなカッコ悪いよね、みたいな情けなさというか。
個人的には最後がちょっとなー…。
いろんな人の意見が聞きたい作品。

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