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エッセイ『希死念慮』

希死念慮という言葉はサウンドが非常によくて、四文字熟語の中でも結構冴えている。その意味は自殺したいな、とわやわや考えることである。

今回の希死念慮は原因が分かっているから本当に死にはしない。クエチアピン(英語: Quetiapine)という薬を増やしたことが原因だ。クエチアピンを飲み始めたのは二十年以上前で、その時は身動きが全くできなくて話もできないくらいだった。それくらい強い薬。

それでもって、今回初めて量が増えた。もともと量が多くないと効かない体質で、寝る前に300mg飲んでいる。身体に慣れると副作用としては眠くなるくらいだ。しかし今回は倍の量に増やしたのでやたらと寝ている。夕べは12時間、死んだ様に寝た。

クエチアピンがなにに効くかと言えば私の場合に限ってだけど、強迫思考に効く。高校生の時から強迫思考があるのに気付いていて、相当辛い思いをした。一日中同じことを考えてそれが何年も続く。

ここ数か月また強迫思考と不安障害の症状が出て、めでたく増量となった。今のところは効いているような気がする。まだ同じことは考えているけれども、かなり弱くなってきた。ある出来事が原因だけど、その出来事については考えてなくて、当事者の顔が薄く浮ぶくらいだ。

その代り希死念慮が出て、まあ、鬱の状態だ。強迫思考より鬱の方が遥かにいい。鬱にはある意味、安心感や慰めがある。

問題は食べられないこと。食べられないというより食べたくない。自分がものを食べることに値しないと思っている。

小説はちゃんと書いている。主人公は15才になっても中二病が終わらず、困惑している状態。好きな男のことを一日中考えてしまう。強迫思考のことを書いた小説。経験があるからいくらでも書けるね。かなり長い間、休みなく色んな小説を書いている。前にも言ったけど、小説を書くのは9割が苦しみで、楽しいことは殆ど無い。

私は年齢的に言って、もう直ぐ孤独死するけど、大量に書いた、300くらい書いた、小説が読まれないのはしょうがないけど面白くない。今まで私の小説を読んで感動したと言ってくれた人はたった一人だ。後の人達はなんとか少しでもいいところを探して褒めてくれる。

以前、大学生の友達と一緒に住んでいた時があって、歩いて行ける距離に大学病院があった。どうしても死にたいんですけど、と言ったらその時は夜中過ぎで、薄暗い部屋に入れられて、ドアの向こうには凄く格好いい警備員がいて、なんだか守られているみたいで嬉しかった。

朝になったらなんと朝ご飯が出て来て、精神科のナースが話をしに来てくれた。それが朝4時頃で、ドクターはまだ来ていないということで、あなたは入院したいか家に帰りたいか聞かれて、分からないと答えると、分からないのなら入院していくように、と言われた。

希死念慮がある人達が自殺未遂自慢をよくするけど、私の場合は自分でなにをしているのか全く知らないで行動する。完璧に無意識で、それでもってハイの時にやる。普通は鬱の時にやるから私みたいなのは珍しと思う。

ハイでどうしようもなく幸福で、人生はなんて素晴らしいのだろう、ああ私は死ななくてはならない、と思う。思うどころか、思ってもいない。ただ行動する。私の診断名は統合失調感情障害で、統合失調症と双極性障害がお洒落にブレンドされた病気だ。

初めての自殺未遂は馬鹿みたいに空港でやったから、空港のポリスが飛んで来た。

薬が効いてきているのは確かだからあと数日で希死念慮も無くなるだろうと思う。

今思い出したけど、友達にフィンランド人の画家がいて、その人の描いた絵の内の一つが恐怖で観られなかった。そうしたらその人はなんだか日本のことに詳しい人で、それはあなたに樹海を思い出させるからだよ、と言っていて、確かに絵はグリーンで抽象画だった。樹海でもまじで死にに来た人は、ロープを持って森に入って一瞬の内に首を吊るらしい。がたがたそこらを歩いている人はまだ本気ではなく、迷っている人だと聞いた。

私の姉は私と一つしか違わないのに、肺癌の末期で10年生きたらいい方らしい。10年も生きられないなんて、本人はどんなに苦しいだろう。いつも犬を飼いたいと言っていたのに、多分それも夢のまま終わる。

2カ月程前に父が亡くなったんだけど、意外と平気で、日本で病院で寝たきりでいるよりは、霊魂になって、ここら辺をふらふら飛んでいてくれた方がいい。


私のYouTube、本日の第一位。
233、三島由紀夫『仮面の告白』誰も言わない感想と文章の分析。


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