千本松 由季/小説家/YouTuber
YouTube「百年経っても読まれる小説の書き方」のテキスト版です。YouTubeで放映できない本音もたくさん。
誰も言わない感想と文章の分析。 かなり本気の小説創作論。チャンネル登録をしよう! https://www.youtube.com/channel/UCRPUTEZPFUEvKSI2IAaHBjw
YouTube『百年経っても読まれる小説の書き方』 https://www.youtube.com/channel/UCRPUTEZPFUEvKSI2IAaHBjw
東京を舞台にした恋愛小説を、英語で書く試み。 https://www.inkitt.com/yukisembommatsu
この店には入ったことがある。店員さんの顔も覚えている。 「メンズってどの辺ですか?」 指差された硝子ケースを覗く。……やっぱりメンズは詰まらない。ネックレスならチェーンにチャームが一つぶら下がっているだけとか。ブレスレットなら丸い石が数珠みたいに連なっているのとか。 店員さんは男性たった一人だった。ドアが開いてショップに新鮮な空気が流れた。若いカップルの客が入って来て、店員さんはそちらに行ってしまう。 携帯の時間を見る。まだ大丈夫。……送られて来た住所は確かにこのショ
「会話文」というのは、小説にしかできない特権だ。あらゆる分野の芸術を見ても「会話文」らしきものは無い。 それだけに、洗練した会話文を書くには長い努力が必要になる。私が誰かの作品を読む時、まず会話文を拾っていく。どのくらい書いてきた人なのか、会話文を読めば直ぐに分かる。 会話とはなんだろう? それはまず「音」である。小説に必要な五感の一つだ。視覚、聴覚、触覚、味覚、嗅覚……。会話とは「聴覚」のこと。 しかし、やってはいけないのは、ずらずら会話を長く続けること。会話文で小説
ハロウィンの次の日から飾り付けを始めた私のピンクのクリスマスツリー。 去年のクリスマス前に、なにを血迷ったのか突然ピンクのクリスマスツリーが欲しくなり、色々調べて一番気に入ったのがもう売り切れだったので、じゃあ来年は絶対買う、と思って今回買いました。 なにをとち狂ってこれが欲しくなったのかは全く覚えていないけど、まあなにかで見たのだろうと思う。 高さが約91㎝。卓上クリスマスツリーと書いてある割には思ったよりでかい。大きなホームセンターみたいなところで、行ったらまだ店頭
エッセイの構造とはこんなものである。 一番大事なのは、3の「解決に向けて自分がどう実行してくか」、という部分だ。よくあるエッセイの末尾はこうだ。 3の「解決に向けて自分がどう実行していくかを書く」が完全に抜けている。新聞のコラムが代表的で、なんの意味も無い文章がずらずら並んでいる。新聞のコラムは、まずテーマに全く関係ない最近観た映画などについて語る。それからそのことがなにかを思い出させるということを語る。それからよくあるなんの解決にもならない御託で終わる。 エッセイで問
希死念慮という言葉はサウンドが非常によくて、四文字熟語の中でも結構冴えている。その意味は自殺したいな、とわやわや考えることである。 今回の希死念慮は原因が分かっているから本当に死にはしない。クエチアピン(英語: Quetiapine)という薬を増やしたことが原因だ。クエチアピンを飲み始めたのは二十年以上前で、その時は身動きが全くできなくて話もできないくらいだった。それくらい強い薬。 それでもって、今回初めて量が増えた。もともと量が多くないと効かない体質で、寝る前に300m
まともな女より性欲が強いんだ。だからいつまでも止められない。 相手が来ない。こんなことなかった。風が出て、私の長い髪をくすぐる。開いたドアから、焼き鳥の煙が逃げる。髪に煙の匂いがつくのが嫌だなって思ったけど、そんなのもう遅いし。男達は決まって言う。写真より実物がいいって。こんな可愛い子、会ったことないって。……出会い系で。 なんで来ない? ずっと隅で、カウンターの隅で、一人で飲んでる男がいて、私より先にいて、でも写真とは大分違う。横顔しか見えない。レトロなアロハシャツを
動画を観てチャンネル登録もしよう。 この動画の台本をご紹介。 この書評は読む人の為ではなく、小説を書く人の為のものなので、 当然ネタバレしています。 初出 1997年 令和5年発行 幻冬舎文庫で読みました。 1月に6年振りに日本へ行った時に買った貴重品。 なぜ村上龍は小説の中で自分の思想を語ろうとするのか? 小説のプロットではない。小説と言うには無理がある。 しかし、小説としての普遍性は持っている。 思想的プロット。登場人物に思想を語らせる。 アメリカ人と日本人の
全部読めますが、100円ください。よろしくお願いします。 この間みんなに、サイバー攻撃で巨大な損失を被ったKADOKAWAの為に文学賞に出そうという話をして、 そう言ったからには自分自身も出さなくてはいけなくなって、書きました。大変だった。そもそも小説を書くのなんて、苦しみが9割で、楽しみなんて1割くらいだと私は感じる。 それで、毎年言っているんだけど、この文学賞は、はっきりは忘れたけど、四つのファイルの書式をダウンロードして、それは多分「表紙ファイル(タイトルとペンネ
新作です。ぜひ観てください。感想も貰えたらいいな。 253、『トパーズ』村上龍。誰も言わない感想と文章の分析。 00:00 純粋な心、村上龍の文学を代表する作品 01:50 トパーズの文体について 04:25 村上龍の狂気 05:05 小説世界の分析 12:10 トパーズの映画、三島由紀夫の『憂国』 18:40 梶井基次郎『檸檬』との比較 21:20 村上龍の天才的な技 この作品の台本を公開。 トパーズ 著作憲法をよく理解した上で教育目的で引用しています。
最後まで読めるようにしておきますが、100円ください。よろしくお願いします。 その宇宙人のバックパックには、取り外しのできる可愛い宇宙人のランチボックスが付いている。皆は、私が誰かにあげるつもりで買ったと思ったらしく、私がこれを背負っているところを見て笑われた。 会社がぶっ潰れて、世間を知っている私とか店長とかは、多分給料を貰えないだろう、という予測をしているけども、若い子達は危機感を持っていない。店長によると、給料が出るにしても半年や一年は掛かるだろう、と。 それで、
「純文学を手っ取り早くでっち上げる方法」という、私のYouTube動画が、このところ、大体毎日誰かに観られている。需要があるのだろうと思って、これからそのことを書いてみる。 私のYouTubeチャンネル名は「百年経っても読まれる小説の書き方」だけども、百年前というと、おおよそ夏目漱石の『こころ』になる。1914年に朝日新聞で連載された。 純文学、というより、文学、は漱石が『こころ』に書いた、その通りの書式で書くもの。私はその通り書いてきたし、それ以外の書き方は私は絶対、許
小説を書き終わったけど、どうもしっくりすっきりしない箇所がある。思い切って変えてみよう。 私の最新作『十字架とカモノハシ』がどう推敲されたか、その全てお見せします。 場面1、書き直す前の文章。 場面1、推敲した結果。 ポイント:車内に人がたくさんいる、という情景を付け足す。「辺りを見回す」=主人公の視線が180度回る。小説世界の空間を広げる。 場面2、書き直す前の文章。 場面2、推敲した結果。 ポイント:情景に深さを出している。小説世界をしっかり構築する。180
三島由紀夫ファンが泣いて喜ぶ『憂国』(1961年)です。「切腹」を美しく、美しく描いた小説。五年後に映画も創られ、三島由紀夫の、プロデュース、監督、主演。わー、と驚くヌードシーンあり。 熱く語っているので、ぜひ観てください。 253、『憂国』三島由紀夫。誰も言わない感想と文章の分析。 YouTube書評『憂国』の台本を公開。 *著作憲法を良く理解した上で教育目的に引用しています 三島由紀夫 1925年―1970年 三島由紀夫ファンが嬉しくて涙を流す掌編 三島由紀夫の「
こないだ、進路が決まらないのは世情に疎いからだ、と担任に指摘されて悔しかったから、朝の電車通学ではニュースを観ることにしていた。 急ブレーキで電車が止まる。いきなりだったから、車内いっぱいの乗客達の身体は、がくんと前にのめり、悲鳴まで聞こえた。聖華は座っていたから影響はさほどなかった。もし、何らかの事故があったら、ここにいる人達とは運命共同体なんだな。どんな人がいるんだろう、と聖華は辺りを見回す。車内アナウンスが流れる。「只今、停車位置の修正をしております……」。 ほん
読者が、おかしいな、と思う文を書くと、作品に説得力が無くなる。作者は一気に読者からの信頼を失う。 実際に誰かがここ数日に投稿していた文です。内容は変えてあります。 実際にこれを書いた人がいるんだから、この文章をおかしいと思わない人もいる筈だけど。私は何回も読んだけど、やっぱりおかしいと思う。 どう考えても、「毛布に包まる」のが先で、「壁に寄り掛かる」のが後でないと変だ。壁に寄り掛かってから毛布に包まれることはできない。 小説のこの先も読んだけど、第三者がいて、男を毛布
252、『午後の曳航』三島由紀夫。誰も言わない感想と文章の分析。 三島由紀夫の小説を読んでいると、必ず感じる彼の気配。彼の顔や手や身体の存在。でも、例えば夏目漱石の小説を読んでいても、絶対漱石の顔は思い浮かばない。三島由紀夫の自意識は非常に強力。 『午後の曳航』では、他の作品と比べて彼の自意識が少し薄らいでいる。何故ならば、小説は三人称だけど、視点が頻繁に変わっていくから。 『午後の曳航』 三人の登場人物の視点の変化を書き出してみた。 ページ数は新潮文庫、令和三年十一月