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YouTube書評『午後の曳航』三島由紀夫

252、『午後の曳航』三島由紀夫。誰も言わない感想と文章の分析。

三島由紀夫の小説を読んでいると、必ず感じる彼の気配。彼の顔や手や身体の存在。でも、例えば夏目漱石の小説を読んでいても、絶対漱石の顔は思い浮かばない。三島由紀夫の自意識は非常に強力。

『午後の曳航』では、他の作品と比べて彼の自意識が少し薄らいでいる。何故ならば、小説は三人称だけど、視点が頻繁に変わっていくから。

三島由紀夫が出演している私の小説
『天使ってなんでデパートが好きなの?』
創作大賞ミステリー小説部門。応援のスキをしよう!


『午後の曳航』
三人の登場人物の視点の変化を書き出してみた。
ページ数は新潮文庫、令和三年十一月二十五日板
 
第一部 夏
P.6第一章 
P.18第二章 竜二
P.25房子
P.29第三章 房子
P.41第四章 竜二
P.53第五章 
P.77竜二
P.78第七章 房子
P.80竜二?
P.87
P.91房子
P.93
P.95竜二
P.98?

第二部 冬
P.104第一章 房子
P.110
P.115第二章 房子
P.117竜二と房子
P.123
P.125第三章 房子
P.139第四章  長い登の視点
P.160竜二と房子
P.162 長い登の視点
P.180第七章 竜二
 
ラストシーンが竜二で終わるところが素晴らしい。一番存在感の薄い竜二の視点で終わる。三島由紀夫の得意などんでん返し。

三島由紀夫イコール、十三才の登なのだが、登の視点が半分くらいなので、三島の自意識は強烈ではない。他の作品にはもっと三島の自意識が強く表れている。

三島由紀夫の自意識について深く言及してみた。


東大法科を出て、日本最高の頭脳、プラス文才があって、十六才の時に書いた本が出版される。自分には上がいない。自分と戦うしかない。自分が誰だか分からない。辛い辛い人生だったと思う。

なぜ女性を単に美しいものとしか書かなかったのか、書けなかったのか。男性の身体は非常に単純にしっかり書けている。この人はやっぱりゲイだったのだろうと思った。

三島の美辞麗句、レトリック(比喩)の陰にストーリーの本当のところが隠れてしまう。得意の御託を読み飛ばすと、長編でもかなり速く読める。だからやっぱり無駄は多い。

レトリックに頼り過ぎた文体だと思う。もっとストーリーの展開を読みたい。

御託はいらないから、もっともっと本当のことを言って欲しかった。


『午後の曳航』ストーリーの流れ
著作憲法を理解した上で、教育目的に引用しています
ページ数は新潮文庫、令和三年十一月二十五日板
 
P.6「首領」の存在
P.6覗き穴の存在に気付く
P.6母イコール女性
P.10母を異性として意識
P.12登は自分を強いと思っていた
P.14母と竜二の情事を見る
P.16登の人生を変える出来事
P.19竜二の自分史
P.32三人の出会い
P.35~39房子が竜二に惹かれていく
P.42竜二が房子に惹かれていく
P.47房子との情事
P.52竜二と登達との偶然の出会い
P.55首領達と登、母親の情事について話す
P.55~77少年達の残酷さ
P.81~P.86房子と竜二の恋愛
P.87房子の外泊
P.101船尾の日章旗 船出
P.105房子と竜二の再会
P.110竜二と登の再会
P.113登が竜二に次の出航はいつ? と聞く
P.115「感情のないこと」の訓練
P.118竜二 陸の生活に憧れる
P.119一方で海に惹かれる心
P.121求婚
P.129劣等感という言葉が出て来る
P.137探偵の報告書 竜二の潔白
P.151母が優しくなる
P.154結婚のことを登に知らせる
P.156登は結婚をよく思っていない
P.161竜二が覗き穴を見付ける
P.162母の折檻
P.170首領と少年達 


226、誰も言わない、三島由紀夫。三島由紀夫論。

250、『金閣寺』三島由紀夫。誰も言わない感想と文章の分析。

235、三島由紀夫『禁色』誰も言わない感想と文章の分析。

233、三島由紀夫『仮面の告白』誰も言わない感想と文章の分析。

116、三島由紀夫『金閣寺』のイメージで映像制作をしました。


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