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君と作るボロネーゼ

「さて、やりますか」

おもむろに立ち上がりキッチンへと向かう。これから今夜の夕食の準備に取り掛かる。メニューはボロネーゼ。午前中に材料も買い揃えた。

「手伝うよ」

後ろから声が聞こえた。さっきまで座っていた彼女も立ち上がり二人でキッチンに立つ。

「じゃあ野菜切ってもらっていい?玉ねぎとニンジンを半分ずつ粗みじん切りに。それとニンニクを二粒みじん切りに」

「了解」

セロリを入れたりするレシピもあるが二人とも苦手なので今回は入れないでおく。自分はフライパンを棚から出し、粗挽き肉と挽肉を混ぜてフライパンに入れた。挽肉だけでもいいのだが粗挽き肉を入れたほうが肉肉しくて僕も彼女も好きなのだ。それとベーコンを細かく刻んだものも少し。フライパンを中火にかけ中で肉が一つに固まるようにまとめる。ここがミートソースとの1番の違いだと僕は思う。ミートソースは挽肉を使ったトマトソースのイメージ。ボロネーゼは肉が主体のソース。なのでより肉を感じられた方がいいのだ。

「野菜切り終わったよ」

目に少し涙を浮かべた彼女の姿が玉ねぎとの死闘を物語っている。感謝を込めて頭を少し撫でると嬉しそうに彼女は笑った。料理中に髪を触るのはあまりよろしくないが二人だけなのだから構わないだろう。

二口のガスコンロの空いてる方に今度は深めのフライパンを用意しそこにバターを溶かしみじん切りした野菜を入れ炒める。弱火でじっくり火を入れると野菜の旨味が出てより美味しくなると思う。彼女は何も言わなくてもそれをわかっていた。流石だなぁと感心してしまう。

キッチンはそれほど広くないが二人で並んで料理しても大丈夫くらいのスペースはある。もちろんそれが決めてでここを選んだのだ。

「熱いの通るよ」

お肉にある程度火が入ったら一旦ソレを取り出す。この時肉汁はフライパンに残しておく。

「赤ワインってどこにある?」

「冷蔵庫の上の段にあるよ」

肉汁に赤ワインを加えて煮立たせることでコクを出す。ついでに一杯だけいただく。

「あ!また料理中に飲んでる」

見つかってしまった。まるで子供のつまみ食いを見つけた母親のように彼女は呆れたようなそれでいて優しい声をあげた。

「ウチでは料理しながらお酒を飲むのをキッチンドリンカーって言うんだよ」

「知ってる。お義母さんから聞いたよ」

彼女とウチの母は仲が良い。二人が団結すると僕には勝ち目がなくなるので少し厄介だ。

「野菜も火が通ったよ」

彼女の合図で野菜のフライパンにさっき取り出したお肉を加える。少しほぐして小さな肉の塊ができるようにするのがポイントだ。肉と野菜をある程度混ぜ合わせたら先ほどの赤ワインを加えた肉汁も余すことなく入れる

「あとは味付けだけだからやっとくよ」

「じゃあ、任せちゃうね」

味付けはホールトマト缶を2分の1缶と顆粒コンソメを小さじ一杯、塩胡椒少々。なるべく調味料は少なくシンプルにする。その方が野菜の旨味や肉の味が際立つ、と思う。

全部入れたらあとは弱火で20分ほど煮込む。

「味付けは終わった?」

「バッチリだよ」

彼女は使ったまな板などを洗ってくれていた。それも含めてやっておくと言ったつもりなのだがこういった細やかな部分が彼女の魅力な一つだろう。

「洗い物ありがとう」

「どういたしまして」

二人でテーブルにつくと今度のデートはどこに行こうかと話し合う。話し合いと言っても彼女が行きたいところをピックアップしていくのだが大半はあそこの料理が美味しそうだ、とかこの料理が食べたい、とかご飯の話題ばかりになる。たとえ最初がご飯のことじゃなくても行った先で何を食べるかということは必ずついて回ることなので結果オーライなのだ。

僕自身あまりどこかに行きたいとも思わないので彼女が行きたいところ、やりたいこと、食べたいものを言ってくれるのはとても助かるし美味しそうなものがあれば彼女と一緒に食べたい。なんだかんだでうまくバランスが取れているのだから二人の相性はいいと思う。

二人で話していれば20分などすぐに過ぎる。あとは火を止めて少し冷まして味を馴染ませれば完成だ。パスタを茹で始め食事の準備を始める。

「さて、食べようか」

テーブルにフォークとスプーン、赤ワイン。中央には二人で作ったボロネーゼと可愛らしい一口チーズのおまけを一緒に。胸の前で二人で手を合わせ

「「いただきます」」

ソースと麺を混ぜ合わせたら一口目。

「「美味しい!」」

思わず同時に声を上げにっこりと微笑みあう。

いつか、どこかの二人の夕食。



材料

粗挽き肉、1パック

挽肉、2分の1パック

ベーコン、お好みで

玉ねぎニンジン、2分の1個

ニンニク、2粒

赤ワイン、250cc

ホールトマト缶、2分の1缶

顆粒コンソメ、小さじ一杯

塩胡椒、少々

バター、適量


僕が作る時のレシピです。量に関してはあまり計って作らないのでアバウトなのでご自身で微調整してください。あくまで大体の目安だと思ってください。余ったソースは小分けして冷凍しておくとアレンジしたりするのに便利です(ドリアとかオススメです)


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