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がん治療後の体力回復〜ストレッチとウォーキングから始める無理しない運動習慣〜
前回の記事で、がん治療によって持久力が20-30年分も低下するという衝撃的な事実をお伝えしました。今回は、がん治療で失われた持久力を回復させるための具体的な運動方法についてお話します。
このnoteはこんな方におすすめ!
・運動に興味があるが何からしたら良いかわからない方
・ストレッチやウォーキングがどのように健康に良いか知りたい方
・どのぐらいウォーキングしたら効果があるのか知りたい方
このnoteで得られる知識を1枚で!
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運動は楽しむもの、無理なく始めることが大切
運動は、いきなり高強度で行っても長続きしませんし、何より楽しくありません。まずは、少しずつ体を動かすことに慣れ、
「運動って気持ちいいな」「汗をかくとスッキリするな」
と感じられるようになることが大切です。
ストレッチで可動域を改善
ストレッチには、関節の可動域を広げる効果があります。
特に乳がんの手術を受けた方は、腕の可動域が制限されることがあるため、ストレッチは非常に重要です。
乳がん術後のリハビリテーションに関しては多くの研究報告があります。 Boxらの研究では、術後の理学療法に関するランダム化化比較試験の結果、2年に渡って術後のリハビリが肩の動きを改善することが示されました。
Box RC. Breast Cancer Res Treat. 2002;75(1):35-50.
ただし、手術の方法や乳房再建の有無によってリハビリの内容は異なります。乳がん術後は皮弁の創部離開や腋窩ウェブ症候群のリスクもあり専門性が高いため、入院中に主治医や理学療法士に退院後のリハビリテーションについて確認することが重要です。
今後解説する有酸素運動や筋トレの強度が上がっていくにつれてストレッチの重要性は増してきます。怪我をしないように、全ての運動とセットで行っていきましょう。
ストレッチだけでは持久力は改善しない
ストレッチで可動域が改善したとしても、それだけでは心肺機能は向上しません。 Scottらの研究では、肺がん患者を対象としたランダム化比較試験において、ストレッチだけでは心肺機能の改善は見られなかったと報告されています。
Scott JM. J Cachexia Sarcopenia Muscle. 2021;12(6):1456-1465.
がん治療で低下した体力を回復させるためには、有酸素運動と筋力トレーニングが不可欠です。ストレッチで体がほぐれてきたら、まずは手軽に始められる有酸素運動であるウォーキングに挑戦してみましょう。
まずは6000歩のウォーキングから始めよう
Rossらの研究では、運動強度と運動量が心肺機能の改善に及ぼす影響を検討しています。 その結果、低強度・低量の運動(週5回、女性180kcal/回、男性300kcal/回、最大心拍数の50%で実施)を24週間続けた場合でも、約6割の人に持久力の向上が見られました。
180kcalの消費は、体重50kgの女性であれば、約1時間の普通の速度のウォーキング(約6000歩)に相当します。
Ross R. Mayo Clin Proc. 2015;90(11):1506-14.
週5回は難しいかもしれませんが、頻度を少し減らせば、6000歩のウォーキングなら「意外とできるかも!」と思っていただけのではないでしょうか。
この研究では、運動の時間や強度を増やすことで、さらに持久力が向上することも示されています。まずは6000歩のウォーキングから始め、慣れてきたら、より長い距離を歩いたり、早歩きを取り入れたりすることで、さらなる持久力向上が期待できます。
運動は疲労回復にも有効
がん患者さんの抗がん剤治療後の疲労感に対して、ウォーキングが効果的な可能性を示唆する研究があります。
この研究では、乳がん患者さんを対象に、12週間のウォーキングプログラムの効果を検証しました。プログラム内容は、週3~5回、15~40分間の早歩きで、化学療法の3サイクル目から開始されました。
その結果、運動グループは、コントロールグループよりも12週間後の疲労度が低く、その差は36週間にわたって維持されました。
Huang HP. Int J Nurs Stud. 2019;99:103376.
「抗がん剤をしてからなんとなくだるい」という症状をウォーキングが改善してくれる可能性があります。
まとめ
がん治療後の体力回復には、無理のない範囲で運動を始めることが大切です。まずはストレッチで可動域を改善し、ウォーキングから有酸素運動を始めてみましょう。
まずは小さな一歩を続けることが大事です。たまにはサボっても大丈夫です。みんなで頑張っていきましょう、応援しています!
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