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加湿器のしくみを知ると、お手入れに納得できるかも
去年が乾燥の年だとしたら、今年は湿気の年でした。
とにかく去年はカラカラで、秋頃の調律ではすでに例年に無いようなピッチの低下、ネジの緩み、部品同士の隙間が開いてしまうなど、過乾燥の影響が色濃く出ていました。「乾燥する時期とは言えさすがに」と言う感じ。
それが今年2024年の同じ時期、同じピアノを診ると軒並み真逆の状態。ピッチは少し上がり、湿気による動きが悪い箇所などが出やすくなっています。「夏からの湿気を引きずったまま」の印象です。
毎年の気候の違いが、同じピアノで比べるとよくわかります。
今年のように乾燥が少ないのはピアノにとっては良いことではあります。少なくとも夏の暑さを除けば、昨年より総合的にピアノには負担の少ない気候と言えます。
さすがに12月に入ると加湿器が必要な乾燥具合になりました。それでも例年よりは湿度は高めな傾向ではありますが。でもむしろ湿度が高かった分、ピアノは少しの湿度低下でも乾燥の影響を受けやすくなっています。ここからガクッと乾燥すると急激に壊れることもあるので注意が必要です。
加湿器が効かなくなった
最近あるお客さまから「加湿器をつけても湿度が上がらなくなってきて、買い換えた方が良いでしょうか?」と連絡が。
そのお宅の加湿器は購入して数年で、まだまだ寿命には早いはず。
「1回加湿器を開けてフィルターの写真、送ってもらって良いですか?」
そして届いたこちらの写真。
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「これはフィルターの寿命なので、こちらのフィルターを買って取り替えてみてください」
数日後、そこには元気に運転をする加湿器の姿が。無事、湿度50%を保てるように戻ったとのことです。
これ意外と盲点で、同様のご相談を受けることは結構あります。
加湿器もお手入れは大事
気化式の加湿器は単純な構造です。
紙や布でできたフィルターは、一部がトレーに張られた水に浸るようになっています。フィルターは水を吸いやすい素材や形をしていて、すぐに全体が濡れた状態になります。そこに内部の扇風機が風を当てることによって、フィルターから水分が蒸発していき湿度が上がると言う仕組みです。
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とうぜんフィルターは乾いていくはずですが、同時にトレーから水分を吸っているので常に濡れた状態になっています。トレーの水がフィルターに吸われて減ってくると、自動的にタンクから足されます。
この循環により、濡れたフィルターに風を当て続け、加湿をし続けられるのが加湿器です。
ところが加湿器を使い続けていると、フィルターが少しづつ白く、固くなってきます。これが写真のようにカルキが付いた状態で、フィルターの水を吸う力はカルキによってどんどん低下していきます。
そうするとただ乾いたフィルターに風を当てているだけとなり、加湿がされなくなります。
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これを防ぐためにフィルターは定期的にクエン酸に浸けてカルキを取り除き、それでも落ちなくなってきたらフィルターの交換です。
ちなみに裏ワザとして、固くなったフィルターをひっくり返してセットすると水に浸っていた柔らかい面が表に出るので、一瞬だけ加湿力が復活します。すぐに水を吸わなくなるので応急処置ですが、どうしてもの時には...
マニュアルは決して大袈裟ではなく
こういった消耗品の交換やメンテナンスってどうしてもおろそかにしてしまいがちです。取扱説明書に書いてあるような頻度でのお手入れは正直めんどうだし、本当はそこまでやらなくていいんじゃない?となりがち。
でもこのしくみを知っていると、そのお手入れにも納得感が生まれるかもしれません。24時間稼働したいピアノ用途ではむしろフィルター交換のタイミングは説明書通りだと遅すぎるくらい。フィルターの価格を考えると、思い切って2ヶ月ごとくらいの交換がコスパが良いです。
ちょうど大掃除のタイミングなので…お使いの加湿器のフィルター、ぜひチェックしてみてください。
加湿器選びで迷っている方は
ピアノ用の加湿器は、僕はずっとダイニチのRXシリーズをおすすめしています。
部屋の広さやお手入れのしやすさでいくつかモデルがあります。
デザインがシンプル。湿度設定ができて加湿力も十分でお手入れもしやすい。なにより日本のメーカーで長く販売されているモデルなので、フィルターなどの消耗部品が安価で手に入りやすく長期間使えることは重要です。
加湿器もいろいろと使ってきましたが、ピアノ用にはこれを選ばない理由が無いと言えるくらいにはおすすめです。
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