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上映会 夢見る小学校
オオダヴィン監督のエンターテイメントドキュメンタリーというジャンルの映画がある。
「夢見る給食」「夢見る校長先生」そして今日上映された「夢見る小学校」とシリーズ化されている。
オオダヴィン監督自らカメラ撮りし編集、デザインまで全てを手がけている。
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今回は映画マイブロークンマリコの上映会ワークショップのメンバーが主催した映画上映会だ。
応援にかけつけた。(観るだけだけど)
この映画は一般公開はされておらず今回のような上映会を介さないと観れない。監督がなぜこのような映画を撮るようになったのか、
監督は大病をきっかけに”食”をあらため30年間「食養生」を実践。植物と発酵に夢中になり、子供達にも”食”の大切さを学んで欲しい、と味噌づくりを通して子供たちと触れ合った。
そうしていくうちに、学校給食の問題、増加する不登校、そして教育のあり方へとオオダヴィン監督は、映画を撮るたびにスケールが大きくなり社会性問題から人間の根源たる本質を見抜く映画へとも受けとれる作品をつくることになったそう。
食とは?
教育とは?
学校とは?
こどもとは?
大人とは?
そして人間とは?何?
「夢見る小学校」を観て、不登校や教育環境を問題視するような内容と思いきや、この映画は僕達大人への映画でもあることに気付かされる。
他人が集まるコミニティー環境は学校だけに在らず会社、文化スポーツ、家庭にもある。そして同じような問題がある。
”くつろげる環境”
”自分がのびのびと個性をだせる環境”
なかなかそんな居場所はない。
世の中はまだまだ人に合わせる社会性を重視する。個性を重んじる主体性はまだまだ薄い。( 主体性 〈 社会性 )
社会性とのバランスを下げ、どうやったら主体性を引き上げていくか?が早急な課題となる。
南アルプス子供の村小・中学校はそんな理想を目指す夢のような学校だ。こうして映画を観て、現に存在する事を知る。
ちょっと待て。もしや、存在するという事は”目指せる”かも知れない。そんな期待感を持ち映画は進む。
南アルプス小・中学校は子供に対して教えない。とにかく”考えさせる”ことを優先する学校方針だ。先生がいないが、代わりに子供を見守るアドバイザーと呼ばれる先生代わりがいる。アドバイザーはあだ名で呼ばれ、授業のほとんどは自分で考えるプロジェクト教科になっている。
料理は畑に種を植え作物を育てる所からはじめ、レシピも自分で調べて作る。味は失敗しながら学んでいく。
手を動かす事も重要だ。廃材を切って加工し、古屋や自分の勉強机を作る。
演劇や漫画の創作、6年性になれば修学旅行を自分たちで計画。行く場所やプラン、予算を計算する。事前に行く場所の予約だって電話でする。
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2023年度の青森県内の小中学校不登校児童の数を調べてみる。2,811名で過去最高値。そして2024年度は更に580名の増。(これを全国で調べてみると34万人!)
トークセッションの時に三戸教授が言うように2,811名といったら高等学校に換算すれば6校分の割合にもなる。
これを問題と言わずなんと言おう。
トークセッション質疑応答時に元教員の方が先生の数が少ない教育現場の悲鳴を伝えた。
理想の教育を論じる前に先ずは教育体制さえも不安を抱えている。
不登校はネガティヴなことを意識する感覚が引き起こす。悪口を言われている。学校内に居場所がないなどが多い。
いじめはなぜ起きる?それは一列に並べと言われて少しでもはみ出したことを指摘されるような風潮にある。個性を個性と認められず個性は逸脱したものだと除外される。悪口の発端。
それは組織全般に言える。
組織に歪みが生じるとき、それは自由(環境・居場所)を失った時。人は自由を失うといじめや不登校が起こると言う。
南アルプス小中学校には整列も通信簿もない。
職員室の出入りだって自由だ。
学校経営者:堀真一郎はイギリス人のA.Sニイル(教育家)に影響され1921年に設立された「世界で1番自由な学校」をモデルとした学校をつくりたいと一念発起
1992年に小学校。1994年には中学校。そして1998年には高等学校を開校した。
・きのくに子供の村 小中学校(和歌山県)
・勝山子供の村 小学校(福井県)
・南アルプス子どもの村 小中学校(山梨県)
・北九州子どもの村 小中学校(福岡県)
・ながさき東そのぎ子どもの村 小中学校(長崎県)
堀真一郎氏はこの五つの学校を1日単位で巡回。車(パジェロ)で駆け回る。
かつやま子供の村小学校にはここ青森から通っている子供もいる。
堀真一郎氏がこの学校を始めようと発起したA.Sニイルの教育方針がこれらの学校に反映されている。
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【校則はスクールミーティングの場で決める】
・トースターの中には食パン以外のものを入れてはならない
・雨の日には木には登ってはいけない etc‥
この校則は以前に大事故になりかね無い事例を取り上げたものだった。
誰でも内容を変えたり廃止できる。
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【芸術的思考のトレーニング】
芸術=インスピレーション。発想、物の見方は様々だという訓練を探る作業。
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【縦も横も無い平等な価値観】
イベントを通して上下関係をなくし年下のものは年上を頼りにし、年上のものは年下をいたわる上下差の無い組織全体での支え合いの価値観。
”子供時代は遊びたいだけ遊ぶことが大事”というニールの信念どおり特に何もせずフラフラとしている子供が沢山います。授業の出席は義務ではなく、1日を木の上で本を読むことに費やしても美術室や木工室での工作に費やしても、森で遊ぶことに費やしても咎められる事はありません。
自分の時間の使い方は誰からも強制される事なく自ら決めていくものであり、その毎日の繰り返しの中で彼らは自発的に物事を起こす必要性を学びます。
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施設内での場所の強制は無い。皆思い思いの場で活動する。
校長ですら愛称で呼ばれコミニティに絶対的な権力をもつ人は存在しないため、いじめっこを叱ってくれる大人はおらず、どんなトラブルも自分たちで解決しなきゃなりません。
それがミーティングという場の持つもう一つの大きな役割なのです。
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もちろんこれら全てを取り入れてはいないがほとんどそのまま忠実に”堀”節として教育におりこんでいる。
堀真一郎氏はA.Sニイルの著書を日本ではじめて翻訳した。堀真一郎の訳を発端に日本に現在も学校の教育者や経営者を中心に教育書として読まれるようになった。
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大きな視野で人生を見つめた時、何を持って学びと言えるのでしょうか。
ニールは「人生の目標は幸せになることで、それは興味を見つけるということである」と言いました。好きなこと夢中になれることをとことんやってみるには、自分を信じる勇気が必要です。
南アルプス子供の村はひとりの人間としてどう生きるかを学ぶ時間と、愛情あふれた幸せな時間を与えてくれるでしょう。
最後に”かとちゃん”こと校長先生が卒業生に送辞として言います。
「悪いことをしても、戻ってきていいから」
と。人間はいい事も悪い事もします。それが人間です。
悪い事をしても阻害することも嫌うこともせず、しっかりと受け止めてくれる。それを言える信頼感がやはりこの学校の素晴らしさなのでしょう。
悩みはひとりで抱えるものではない。
今日の映画を観て同じ境遇の者同士悩みを打ち明けられた。
それだけで心が少しは楽になったのではなかろうか。
映画上映会の本質はきっかけづくり。
このきっかけを発端に何かしらオーディエンスに心の余白を与えられたら。と思う。
《ひとりよりふたり。心の言葉をだれかに》
※トーキョーコーヒー五戸yanehoihoi369@yahoo.ne.jp
※ASSORT〜アソート〜不登校の情報・声・居場所 kameko.no.soudan@gmail.com
※もう一つの小さな学校 静子先生の教室
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