仙台23:37女子
23:37
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「ああ、またこんな時間か」
せっかくの休日なのに、また無駄に過ごしてしまった。
昨日食べかけてやめたサワークリームオニオン味のポテトチップスに手をのばし
「なんでここにいるんだろう」
ぼんやり考える。
稀有、24歳
よく芸名?って聞かれるけど、本名。
仙台。
縁もゆかりもないこの土地に、ちょうど1年前にやってきた。
なぜ横浜出身の自分が、誰もいないこの土地にいるのか、
何をしにやってきたのか、考えれば考える程わからない。
「誰もいない地でひとりなんてすごい」
「キャリアウーマンだよ」
そんな言葉が嬉しくて、
ここにいるのだろうか。
入社動機は、「自分を試したい」ただそれだけだった。
この会社なら、自分が成長できる気がする、
よくあるセリフだ。
無意識に開く会社携帯。
ずらっと入っている予定表
やる気に満ち溢れる名言画像
120通の未読メール。。
「なにに対してもワクワクしない。。てかそもそもワクワクってなんだよ。」
あ~~~テンション上がんない。
そんな時プライベート携帯が光る。
LINE_今度いつ東京くるの
就活の時お世話になっていた先輩。
嬉しさ半面、
酔って会いたくなるやつか。
どうせ、飲んでる時に私の話でも出たんだろう。
そうか、寂しいんだな。
素直に喜べない自分。
テキトーに
「まだわからないんです。。」という文字と困った顔のうさぎスタンプを送る。
ああそういえば。。
うさぎスタンプで思い出した。
徹さん、元気かな。
この自粛で、きっとウーバーイーツばっか食べてんだろうな。
また意味わかんない資格の勉強とかしてんだろうな。。
徹さんとは、就活真っ最中に出会った。
友達に誘われたBBQにいた。
28歳。私の7個上。
背はそんなに高くないのに、存在感が大きくて、
なぜかいつも話題の中心にいる徹さんを、
気づくと目で追っていた。
「財布、かわいいね」
徹さんとの初めての会話。
なぜかそこから飲みに行くようになって、
最初は憧れのおじさんだったけど、
どんどん距離が近くなっていった。
「お前ほんと変わってんな~~天才だわ。」
徹さんは、いつもそう言う。
昔から、人と同じ発想ができなくて、
国語や道徳の自由に考えていい問題、その発表はいつも苦手だった。
いつしか、自分の想う自由な発想、周りの人が出す正解
それを使い分けているうちに、どんどん平均(=正解)的な
回答になっている自分がいた。
徹さんに思わず突飛な発言をしてしまった時
「・・・はっはっは(爆笑)い~や、天才かよ!」
って言われた時は「・・・?」馬鹿にされてる?
っていう気持ちと、
ありのままの自分を認めてもらえた。
そんな気持ちだったなって思い出す。
久しぶりに、連絡したくなる。
「久しぶりです。今なにしてるの」
打ちかけたLINEに着信。