眠れない夜はアイスを買いに行こう。目が覚めた朝は二人で勉強をしていよう。
一カ月前には当たり前ではなかったことが、いつの間にか当たり前になっている。いや、一カ月前にはもう当たり前になっていたのか。そうやって時間の過ぎ方に愕然としたりする。
当たり前のような流れで突然彼氏ができて、当たり前のように一カ月以上お互いの家を行き来して過ごしている。
生活というものはいつも気付いた頃に変わっているものだ。物凄く悲しいことがあっても私たちは生活していくし、何事も起こらなくても生活は進んでいく。そして、ふと振り返ったときに寂しくなってしまったり幸せを感じてみたりするのだ。手放したくなくなってしまうことだってある。
それはまるでバイト終わりに食べるコンビニのアイスのように体に溶けて見えなくなってしまう。見えなくなってしまうから忘れてしまう。見えなくなってしまって同じにはもう戻れなくなってしまうから、大切にしたくなってしまう。
ずっとこうしていたい。
貴方といると本当にそう思う。今のことだけを考えて、今日あったことだけをお喋りして、明日のことだけを見て、そうやってずっと生きていきたい。
それはそんなに難しいことなのだろうか。今私はこんなに幸せなのに。
先のことを考えるといつも、「人生って難しい」と思う。私たちは生きていくし、いつか大人になってしまう。選ばないといけないことが数えきれないほどあって。何を選んでも正解ではないような気がして。何を選んでも納得できない気がして。
いつの間にか、未来の話を楽しそうに話せなくなっている自分がいて、それに気付いていつも悲しくなってしまう。もっと夢とか希望とかそんなものが溢れていたはずなのに。着実に目指していた未来に近づいてはいるはずなのに。蜃気楼のように遠ざかっていく未来を捕まえたくて、なかなか捕まえられなくて。私は今藻搔いている。
今、私はとても幸せだ。
だからこそ、明日も幸せでいたいと思ってしまう。明日も、来月も、季節が変わっても、来年になっても。大人になってしまっても。ずっと幸せでいたい。
欲しがりで、我儘な女だから。ないものねだりな女だから。ついついそんなことを望んでしまう。
だから未来が怖いのかもしれない。
未来は怖いから、今の話だけしていよう。
今日楽しかったことの話をして二人で笑っていよう。
今日きつかったことの話をするから「頑張ったね」と言って抱きしめてほしい。
今日悔しかったことがあったらちゃんと教えてほしい。きつく抱きしめてあげるから。私の前で泣けばいいよ。
今の一つ一つを大切にして生きてみよう。
深夜のコンビニで買ったアイスをはしゃぎながら食べていよう。
美味しいご飯をお腹いっぱい食べて幸せになろう。
未来が怖くなったら、勉強していればいいよ。きっと未来のためになると信じていればいい。
選ばなくちゃいけない未来は、少し後回しにしてしまおう。まだ大人になんてなりたくないから。
ねぇ、一緒にずっと幸せでいよう。
こんな馬鹿みたいに子供っぽいお誘いをしてみよう。
貴方はきっと不思議そうな顔をしながら「うん」と言ってくれるだろうから。